南のまな板、東のテーブル 沖縄風味のスパイスソースと、ロワールの自然派ワイン。

Gourmet 2021.09.30

沖縄で創作料理のレストラン「胃袋」を営む関根麻子さんと、自然派ワインを愛し、ワインショップ「bulbul」を始めたアタッシェ・ドゥ・プレスの鈴木純子さん。おふたりのコロナ禍での手紙のやり取りを、こっそりのぞき見しました。ワインに合わせた、旬の料理のレシピをご紹介!

南のまな板から東のテーブルへ

こんばんは。
わお、美味しいなぁと、ひとりごち。届いたワインを飲みつつ、料理しようかなと台所へ。ワインにまつわる物語を少しづつ知っていきたいな。ありがとう、じゅんこさん。

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先日お世話になっている畑へ久しぶりに伺いました。ファンファンファーンと、畑や森に反響する合唱、オオシマゼミがまずはお出迎え。南部ではなぜか耳にせず、北部のやんばるでしか聴こえてこない蝉の声。秋の足音、少しセンチメンタルにもなる。毎年恒例、夏の終わりを感じる、おんがく。

この季節のグラデーションのなか、畑はいま端境期にあたります。耕された土がダダダーっと広がっていて、一面茶色。夏の収穫もほぼ終わり、作付け、種撒きの準備時期でした。これから数ヶ月、地中から芽を出し、空に伸び、自らを育んでゆく、その光景を想像するとうれしくなります。いま何もないよーと笑って生産者さんは言ってましたが、それでもキョロキョロとその時しかない恵みを少しづつ畑や周りの森から摘みます。

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収穫が終わったうりずんの蔓芽、自生のツルムラサキの花芽、ジンジャーリリーと呼ばれる生姜の花、色づいてきた月桃の実、はたまた足元にある野草など。お店に並ぶような作物が少ししかない中でも、過程にある宝ものがそこかしこに。まだまだ残暑は厳しく、汗が滴り首元はこんがり焼き色に。

今夏も全国的に天候被害は多く、こちらも豪雨や長期滞在の台風の影響で、生産者さんたちも大変苦労なさってました。自然を相手にしてる皆さんの逞しさには頭が下がります。そして何より土地、野菜や植物本来が持つ生命力、共存力にも毎回感動しています。
畑や山に通うようになり、何年経ったのでしょうか。
自然の中に身を置くことは私にとって何より気持ちが穏やかになる時間です。

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そうそう、去年大量のジーマミー(落花生)を1人で黙々と殻剥きし、手が動かなくなった経緯があったので、今年は気になりながらも怯んでいたのです。が、なんと生産者さんがそれを知ってか、ご自分でジーマミペーストを作ってくれました。これが素晴らしい。ひとくち食べた途端、目がまんまるになりました。そうだ。このペーストを使い、沖縄のスパイスと合わせてワインに合うソースを作ってみます。そちらでも気軽に手に入るもので実験してみてください。
料理は想像力!
ワイン片手に、喜んでもらえると嬉しいな。

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夏、秋の隙間蒸し焼き ジーマミーのスパイスソース

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【蒸し焼き】
⚪︎肉厚のしいたけ(一種類だけでなく、何種類かのお好みキノコでも)
⚪︎あらかじめローストしておいた焼き芋
⚪︎プルーン、イチヂクなど秋の果物(ブドウや柿などでも)
⚪︎長ネギ(または玉ネギ)
⚪︎カレーリーフの生葉(手に入らない場合は、コリアンダーの束など)
⚪︎オリーブオイル、塩

【ソース】
⚪︎無糖、無添加のピーナッツバター
⚪︎シークワーサー(またはライム)
⚪︎コリアンダーの茎
⚪︎スパイス
コリアンダーシード、カラシナシード(マスタード)、フェネグリーク、フェンネルシード、ニゲラ、ナスタチウムの青実、フレッシュなグリーンペッパー
※今回のスパイスはすべて沖縄で収穫したものを使用しましたが、たとえばクミンなど、ご自宅にあるそれぞれのお好きなスパイスを少しづつ実験のように足していってくださいね。
⚪︎ししとう少々(または辛味の少ない唐辛子)
⚪︎水
⚪︎しょっつる(またはナンプラー)ほんの少々

1  耐熱皿にオリーブオイルをだだだっと滴らし、ごろごろっと切ったキノコや果物などをランダムに並べ、カレーリーフをいちばん上にバサバサのせる。ワインを少し多めに、オリーブオイルを少々まわしかける(昨日の残りのワインなどがあれば最高、いま飲んでるワインでも。なければお水で大丈夫です)

2  ホイルなどで蓋をして170度で30〜40分、蓋を外し、出た水分をスプーンで再度まわしかけ、蓋をせずに180度で15〜20分ほど、オーブンで焼く。
カレーリーフがカリカリになり、キノコ、果物などがしっとりなまま焼き色がついてたら出来上がり。

3  焼いている間にソースを作る。ピーナッツバターにシークワーサーの絞り汁を入れてよくかき混ぜる。分離して固まるがお気にせず。
しょっつる(またはナンプラー)を少々たらし、水を少しだけ足してソース状にする。この時に一度味見して酸っぱいごまだれのようになり、美味しいと感じればOK! 甘味が欲しい場合にはハチミツをちょろり。

4  ソースにお好みのスパイスを何種類か足していく。細かく刻んだコリアンダーの茎、少々のししとうを入れ、混ぜ合わせる。味見して自分好み(大事!)になっていれば出来上がり。

5  焼き上がったアツアツを取り分けて、ソースをつけながら召し上がれ!

色々書いてますが、キノコと果物を蒸し焼きにしてベースのピーナッツバターに好きなスパイスを入れていくだけ。最初に酸味、その後塩気。続くスパイスの味や香りの順で仕上げます。焼き上がるまで、ワインをちびちびする愉しみも。

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東のテーブルで、ワインとフランスのお話を

あさこさん、沖縄の畑のお話とレシピ、ありがとう。
じりじりこげそうな沖縄の太陽の強さと暑さ、ジンジャーリリーの艶やかな香り、日差しを吸い込んでえぐみすら感じるほど強い沖縄の食材を、懐かしく思い出しました。送ったワインも、気に入ってもらって嬉しい! 7月の渡仏で久しぶりに再会した造り手のワインです。

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約1年半ぶりの渡仏でした。日常って、当たり前の積み重ねではなかったんだな、と。久しぶりのフランスの造り手たちは、ヴァカンス前ということもあり前年のワイン出荷やら畑仕事やらに大わらわ。日の出前の早朝から晩まで働いている彼らを、少しずつお手伝いしながら、数日ずつ滞在してきました。

ワインサロンも開催されず、世界中からの訪問がひっきりなしだった彼らの生活も一変し、畑とカーヴの往復がメインのシンプルな生活に。考える時間がたくさんできた彼らの方向性が変化したことを感じました。

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オーヴェルニュで訪問した中堅どころの造り手たちの、印象に残った言葉が「glouglou(ぐびぐび、の意)ワインは自分たちのスタイルではない。時には熟成に10年かかるかもしれないけれど、本質的なワインを造りたい」。そのためにワインを熟成させる新たなカーヴも造ってて。1年半前にはそんなこと、言っていなかったのに。笑

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リスクを取っても、より本質的なものづくりを追求したい。春に小さなワインショップをはじめたばかりの私は、そんな造り手のワインをどう受け止めていくべきか、考えさせられました。

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そう、送ったワインの説明を! 「レ・ヴィーニュ・ド・ババス」グロルン・ロール 2020です。ロワール地方アンジュの地ブドウであるグロローを、できるだけ「そのままに」造っている、若手にとって兄貴分な存在のセバスチャン。1958年に植えられた、古木のグロローから生まれるワインは、あさこさんのお料理と合わせるとブドウをそのまま齧ったような味わいと土っぽさを感じ、ババスの畑の光景が浮かんできました。

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ワイン名:グロルン・ロール 2020 / Groll'n Roll
造り手:セバスチャン・”ババス”・デルビュー / Sebastien "Babass" Dervieux
ドメーヌ名:レ・ヴィーニュ・ド・ババス / Les Vignes de Babass
品種:グロロー (樹齢 63年)
淡い赤紫色。スミレや赤・黒い果実の香り。樹齢やテロワール由来の美しいストラクチャーがありつつも、染み込むような飲み心地。「2020年は素晴らしい葡萄ができたよ」とババスからの便りのとおり、彼のある意味理想的な味わいなのだと思うヴィンテージ。

関根麻子 Asako Sekine
2000年に沖縄に移住、2014年南城市にレストラン「胃袋」をオープン。移住20年以上となるが、沖縄の土地や自然に未だ新鮮な瞬きを日々もらっている。残りものには福があると、日記のような瓶詰めをこしらえる毎日。
Instagram: @ibukuro_okinawa

鈴木純子 Junko Suzuki
フリーのアタッシェ・ドゥ・プレスとして、食やワイン、プロダクト、商業施設などライフスタイル全般で、作り手の意思を感じられるブランドのブランディングやコミュニケーションを手がけている。自然派ワインを取り巻くヒト・コトに魅せられ、フランスを中心に生産者訪問をライフワークとして行ういっぽうで、ワイン講座やポップアップワインバー、2021年3月末よりワインショップ「bulbul」をスタートし、自然派ワインの魅力を伝えている。
Instagram: @bulbul_du_vin

 

text and photos: Asako Sekine, Junko Suzuki

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