本当においしいインゲンの茹で方、知っていますか?
Gourmet 2021.10.27
食卓をおいしく彩ってくれるインゲン。シンプルな食材だが、新鮮な状態で楽しむためには、適切な調理法を知らなければならない。この点で多くの人が間違いを犯している。化学者のラファエル・オーモンとともにポイントを紹介しよう。
インゲンの味や栄養を損なわないためには、正しい調理法を知ることが大切である。photo:Istock
ドワーフ・ビーン・ファン・ドゥ・バニョル、トリオンフ・ドゥ・ファルシー、コンテス・ドゥ・シャンボール、ヴィニュロンヌなど、フランスにはさまざまな種類のインゲンが存在する。しかし、素材そのものが素晴らしいだけでは十分ではない。インゲン豆の味と栄養を保つためには、正しい調理法を知っておかなければならない。
分子料理を専門とする化学者で、『キッチンでのイノベーション』(1)の著者でありパリ=サクレー大学(パリ南区)の教授でもあるラファエル・オーモンは、私たちの常識を覆す。先祖代々受け継がれてきた調理法や魚料理にありがちな間違いを指摘した上で、正しいインゲンの調理法を教えてくれた。無害だと思っていた行為は実はそうではない。
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1. 料理本を忘れよう
「大きな鍋に塩水を入れ、7分ほど茹でてからインゲンを氷水に浸ける」と、ほとんどの料理本に書かれている。「9割のシェフはこう教わっています。しかしながら、水はあまり必要ないし、塩を加える必要もないし、氷水では色も整いません」と、ラファエル・オーモンは無意味な料理の伝統に対し、化学に基づいた反対意見を述べる。
●水の量
「水の量は多くなくても良いですし、量があっても調理には影響しません」と化学者は説明する。インゲンが入る大きさの鍋やシチューポットがあれば十分だ。「また、大量の水を使うことは、地球環境にとっても悪いことです」
●塩を加える
「同様に、塩は調理の過程にも味にも何の役にも立ちません」。オーモンは、緑の野菜インゲンのファンが本来の味を再発見できるよう、必要に応じて味見の際に塩をひとつまみ加えることを提案する。
●温度
豆は食物繊維のセルロースでできているので80℃で調理する。最適な温度は? 「85~90℃の間で」とラファエル・オーモンはアドバイスする。温度計を持っていない人は、水の状態に気を配る必要がある。泡が出てきたら、冷水を少しずつ加えて温度を下げよう。
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2. 重曹に切り替える
●重曹の量は「水5リットルに対し、小さじ半分」(ラファエル・オーモン)
化学者のラファエル・オーモンによると、インゲンを氷水に入れて「葉緑素を安定」させるのは意味がない。「アルデンテで食べたい人のために火が通り過ぎるのを止めることはできますが、色には影響しません」
色を保つ秘密は「重曹」にある。「セルロースの分解が促進されるため、豆が早く調理され、色やビタミンが保たれるのです」。野菜を半分の時間で調理できるようにする重曹は、化学者による突飛な発見ではない。「19世紀末にはすでに、オーギュスト・エスコフィエ(現代フランス料理の祖)が重曹を使っていました」とラファエル・オーモンは言う。薬局で売られていたヴィシー(天然の炭酸水)で調理された有名なヴィシー・キャロット(人参のグラッセ)のレシピにヒントを得たのだろう。当時のシェフたちは、人参に火が通りやすく、栄養分が保たれることに気づいたのだ。「これはすべての野菜に当てはまります。さらに言えば、重曹は素材の風味を引き出すので、水に塩を加える必要がないのです」と続ける。
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3. 蒸し焼きやフライパンで調理する時の注意点
インゲン豆の風味を楽しむためのベストな方法は? プレーン(必要に応じて少量のバターを添えて)で食べる。photo: Istock
どちらの調理法も当然NGではないが、上手に行う必要がある。
●蒸す場合
「蒸す調理法は理想的です。ブイヨンやローリエを入れて風味付けするのも良いでしょう」と、専門家は熱く語る。しかし、野菜の風味が増して保存性が高まる一方で、火を通し過ぎてしまうことがある。「蒸し器の中では、インゲンを水面からずっと上に置くこと。水面から2cmのところにあると、ひどい味になってしまいます」。蒸すのに理想的な調理器は? クスクス鍋だ。
●フライパンで調理する場合
「インゲンをフライパンで炒める場合、先に水で煮るか蒸すかしますが、炒めた後に柔らかくなりすぎないように、アルデンテにしておきましょう。そして、とても重要なのは、バターが黒くならないように、バターと油を混ぜたもので炒めることです。インゲン自体にダメージを与えないためにも、私はフライパンを使わず、風味付けに新鮮なバターを少し加えるだけにしています」とラファエル・オーモンは結論づける。
あなたのお気に入りの調理法を見つけてみては?
(1) Raphaël Haumont 、Thierry Marx著、『L'Innovation aux fourneaux』Dunod刊
texte : La rédaction (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi