パクチーが苦手なのは遺伝子のせい?

Gourmet 2021.11.03

パクチーとも呼ばれるコリアンダーを大量に使う人もいれば、名前を聞くだけでしかめっ面をする人もいる。そこまで嫌悪する理由は実は意外なものだった。

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パクチー、シャンツァイとも呼ばれるコリアンダー。その味を説明する形容詞は色々ある。photo:istock

蓼食う虫も好き好き。コリアンダーもまた然り。コリアンダーは好みが極端に分かれるハーブの一つだ。タイ、ベトナム、メキシコ料理が流行り、近年はコリアンダーも身近なものになりつつある。大嫌いな人には迷惑な話だが、最近は避けるのは難しいほどだ。なぜそこまで嫌う人がいるのだろう。フランス国立衛生医学研究所と国立科学研究センターで研究員を勤め、現在はボーヴェ理工科学校で料理と健康を専門とする免疫薬理学医、フィリップ・プイヤールに話を聞いた。

石けんの味

えぐい、汚れたキッチンタオルの味、げろ、カビ、そしてよく言われるのはカメムシの匂い、または石けんや食器洗剤の味。コリアンダーを嫌悪する人はこのようにこの香草の香りを説明する。あなたも同じように思っている? そう感じている人は一定数いるそうだ。2012年に「Flavour」誌で発表された調査によると、アジア系の21%、ヨーロッパ系の17%、アフリカ系の14%がこのハーブを嫌いだと明言している。

しかしやはり普段料理に利用している地域では嫌いな人は少ないようで、南アジアではわずか7%、ヒスパニック系は4%、中東では3%のみがパクチー嫌いだそうだ。しかし、コリアンダーにもさまざまな味があることを知っておこう。「一般的に見かけるコリアンダー、ノコギリコリアンダー、ディル。種類や栽培法によって味や香りは異なります」とプイヤールは言う。

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味なのか、香りなのか?

偶然?

「コリアンダー」はラテン語のcoriandrumに由来し、この言葉も古代ギリシャ語のkoriandronから来ている。「カメムシ(kori) の雄 (andros)」という意味で、新鮮な種の匂いがカメムシの雄が放つ悪臭と似ているからだ。

 

「15%から25%の人がその味か香りが苦手と言います。それは、コリアンダーはアルデヒドという揮発性の高い有機化合物を含んでいることに由来します」と『Cuisiner comme au Moyen-Âge(中世のように料理をする)』(1)の著者でもあるプイヤールは説明する。

芳香性の高いアルデヒドはかみ砕いた時はもちろん、指で擦るだけでも揮発する。「ただし、免疫の問題ではないので、“コリアンダーに対する不耐性”というものは存在しません。ただ匂いが苦手というだけです」

しかし、驚くなかれ、アルデヒドはコリアンダーだけでなく、石けんにも含まれる成分なのだ。シカゴのノースウェスタン大学の神経科学者ジェイ・ゴットフリードは「The Guardian」の記事でこう推測している。コリアンダーに対する嫌悪は、まさに石けんと同化してしまうことで起きているのではないかと。脳は食べものの匂いをすでに知っているカテゴリーに分類する。コリアンダーにおいては、“石けん”という食品ではないものと関連づけられるからだと彼は説明する。

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遺伝子のせい

しかし、大半の科学者は原因は遺伝子にあると考えている。特別にアルデヒドを感知する嗅覚受容体を司るDNAが存在するというのだ。「OR6A2という遺伝子は、アルデヒドに対する反応をコントロールしています。接触した化学物質を検出できる嗅覚・味覚受容体を構成する遺伝子です。これらの受容体が脳に信号を送り、香りや味を区別することにつながります」とプイヤールは説明する。

アメリカの遺伝子分析サービス23andmeの研究者がカリフォルニアで3万人の被験者に行った調査もこれを裏付けしている。一定の人口がこの遺伝子を持っていると主張する科学者もいるが、プイヤールの意見はもう少し複雑だ。「この遺伝子を持っていても発現しない人がいて、その場合はあまり敏感でないこともあります。逆に過剰に発現する人もいます」

遺伝的な説明はこれ以外にもある。ペンシルベニア州の行動神経科学者チャールズ・ウィッソキが双子に対して行った調査では、一卵性双生児の80%はコリアンダーの味に対して同じ意見を持っていることが証明された。遺伝はある食べものに対する好き嫌いを左右するということが結論として言える。チーズに対してもほぼ同じことが起きているそうだ。

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味を隠すことはできるのか

この香草の強い香りを和らげることはできるとプイヤールは言う。「ポルトガルではカルネ・デ・ポルコ・ア・アレンテジャーナという二枚貝と豚ヒレ肉を合わせた郷土料理にコリアンダーを使います。この組み合わせだとコリアンダーの味をはっきりと感じることはありません。また、イタリアンパセリで代用することも可能です」

でもこのハーブに対する憎しみは、永遠のものではないかもしれない。「一つの食べ物が嫌いと断言するには、最低5回は食べてみる必要があるからです」とこの免疫薬理学医は締めくくった。

(1)Mylène, Philippe Pouillart著『Cuisiner comme au Moyen-Âge : 150 recettes médiévales adaptées aux cuisines d'aujourd'hui』、Privat社刊

text:Clémence Vastine (madame.lefigaro.fr)

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