ペリエ ジュエの最高醸造責任者が語る、シャンパーニュの奥深い魅力。
Gourmet 2022.07.07
この6月、シャンパーニュ「ペリエ ジュエ」の最高醸造責任者であるセヴリーヌ・フレルソンが来日。メゾン初の女性のセラー・マスターである彼女にペリエ ジュエの深い魅力と、自身のシャンパーニュの楽しみ方を聞いた。
数あるシャンパーニュの中でも、透明感に満ちた酸味と豊かな果実味で「際立って優美」と称されるのがペリエ ジュエだ。1811年の創業以来、芸術的センスにあふれたシャンパーニュとして、世界のシャンパーニュファンを魅了してきた。象徴的なのがメゾンのトップキュヴェでもある「ペリエ ジュエ ベル エポック」で、アール・ヌーヴォーの巨匠エミール・ガレによって描かれたアネモネの絵が施されたボトルは、"アートを纏ったシャンパーニュ"として高い人気を誇る。
この6月には「ペリエ ジュエ」第8代最高醸造責任者であるセヴリーヌ・フレルソンが来日、箱根の「ニコライ バーグマン 箱根 アトリエ」においてメディアイベント「バンケット・オブ・ネイチャー BY ペリエ ジュエ」が行われた。これは2020年10月に最高醸造責任者に就任し、満を持して来日したフレルソンのお披露目と彼女が考案した「自然のサイクル」をテーマにしたペリエ ジュエの新しいテイスティングアプローチを紹介するためのもの。メゾンのシンボルカラーである緑をテーマにしたニコライ・バーグマンのフラワーアレンジメントと、表参道「エラン」の洗練されたフレンチとともに、フレルソンのセミナーが執り行われた。
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このイベントはシャンパーニュの世界にとって、実に大きな意味を持つ。ワイン業界において要職にあるのはまだまだ男性が多く、それがグランメゾンならなおさらのこと。だがフレルソンはメゾン初の女性の最高醸造責任者となり、このニュースはワインの世界でも大きな話題となった。しかし当の彼女からは、気負いはいっさい感じられない。
「ペリエ ジュエは、ピエール・ニコラ・ペリエとローズ・アデル・ジュエの夫妻によって設立されました。妻のローズ・アデルはとてもアーティスティックで、ホスピタリティに富んだ人物だったそうです。彼女は、私にとってはお手本とでもいうべき人。女性の最高醸造責任者としては私が初めてですが、私自身はローズ・アデルにシンパシーを感じているだけに、"二代目"のような感覚ですね」と微笑む。
フレルソンが醸造家になろうと決意したのは15歳の時のこと。シャンパーニュ出身の彼女は、ブドウ農家の生まれではなかったが、両親の友人が所有するブドウ園で過ごすことが多かったという。「ブドウ畑で過ごすのが大好きな子どもでした。実が育つ様子やブドウの香りなどに夢中になっていました」醸造家としての嗅覚は、自然に親しんで育った時代に培われたもの。いまもロゼの香りの中に、子ども時代、祖母が作ってくれたイチゴジャムの香りを見出すことがあると語る。ペリエ ジュエは、なにより"自然の美しさ"を大切にするメゾンだ。フレルソンが第8代の最高醸造責任者に就任したのは、きっと必然だったに違いない。
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では、彼女自身はどのように日々シャンパーニュに親しんでいるのだろう。
「季節ごと、時間ごとに合うシャンパーニュを選びます。ゲストを迎える時は、『今日はちょっと疲れているのかしら?』と感じた時は、心がやわらぐロゼを選んだり。料理は、夏なら庭でバーベキュー、冬にはココット料理が好きなので、ブランケット・ド・ヴォー(仔牛のクリーム煮)などを。ブリュットやブラン・ド・ブランなど、どんなシャンパーニュにも合いますよ。チーズやフルーツなどを合わせて、気軽に楽しむのもいいと思います」
品格がありながら、どんな料理にもさりげなく寄り添ってくれるのが「ペリエ ジュエ」の魅力。歴史によって育まれたこの寛容性に加えて、あらたな価値観を生み出していくのが自分の役割だと、フレルソンは語る。「私なりの新しいキュヴェも構想中です。いつか、皆さまにお披露目できる日を楽しみにしています」。
text: Kimiko Anzai