モッツァレラチーズを食べる時におかしがちな間違いとは?

Gourmet 2022.12.31

冷やしすぎ、ナイフで切る、調味料の使いすぎ……。イタリア名物、モッツァレラチーズを食べる時におかしがちな間違いとは? モッツァレラの美味しさを最大限に活かす秘訣を、マダム・フィガロが専門家にきいた。

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photo: Getty Images

もはや紹介する必要もないだろう。誰もが大好きな手作りの逸品、モッツァレラは、ここ30年の間にフランスでも大ヒットし、原産国イタリア以外でも生産されるようになった。誰もがよく知っていると思いがちなモッツァレラだが、実は間違った食べ方をしている人も多いという。パリ9区のチャーミングなイタリア食材専門店RAP(1)創業者のアレッサンドラ・ピエリーニはモッツァレラの専門家だ。『モッツァレラ:10通りの調理法』の著書のある彼女に、世界中で愛されるこのチーズの本来の味を楽しむために避けるべき間違いをリストアップしてもらった。

1. 水牛のモッツァレラと乳牛のモッツァレラを混同してしまう

購入するとき、モッツァレラ・フィオール・ディ・ラッテとモッツァレラ・ディ・ブッファラを混同してはいけない。このふたつは同じチーズではなく、それぞれ原料も違えば、質感も違う。「イタリア南部特産のモッツァレラ・ディ・ブッファラは水牛の乳から作られます」。水牛はカンパーニア地方原産の頑丈な牛だ。水牛の乳は牛の乳に比べて、脂肪が多く、栄養価も高い。

「水牛のモッツァレラは、表面は固めですが、中は滑らかでクリーミー。見た目には、生地はやや不均一です。切ると、まるで皮が裂ける音が聞こえるようです」と専門家は描写する。水牛のモッツァレラは原産地名称保護の対象となっており、「モッツァレラ・ディ・ブッファラ・カンパーナ」と表記される。一方、フィオール・ディ・ラッテの原材料は牛乳。脂肪分が少なめで「よりしまっていて、弾力があります」
 

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2. 保存水を捨ててしまう

イタリアではリキド・ディ・ゴヴェルノと呼ばれる。これはチーズを保護するための液体だ。「単なる水道水ではありません。チーズ製造所ごとに違います。製造されたチーズのpH(酸性濃度を表す単位)によるからです。この保存水はモッツァレラを製造する際に得られる水分から作られるもので、乳成分や酵素も含まれています」。それを捨てるのは、つまり食品の浪費!

「リゾットなど、ほかの料理に使えます。ブイヨンにこの保存水を加えるだけ。あるいは、栄養がたっぷり含まれているので、花壇や菜園にまけば、植物の成長が促進されます」

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3. ナイフで切ってしまう

ナイフを使うとモッツァレラの自然な質感が損なわれてしまう。「モッツァレラは生地が繊維状なので、手で引きちぎるべき」とピエリーニは言う。ひとつのモッツァレラをふたりで食べるときは「指でふたつに割る」といい、と専門家はアドバイスする。「サラダに使うときは、食べる直前にチーズをちぎること。そうしないと水分が流れ出てしまいます」

一方、乳牛のモッツァレラはスライスしてもかまわない。「生地がしっかりしているのでで、カットしても風味はそれほど損なわれません」
 

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4. 冷たいまま食べてしまう

「生地が繊維状なので、冷やすとチーズの質感が変わります。繊維が凝固して、脂肪分の構造が変化します」と専門家は強調する。さらに「フレッシュチーズですから風味はとても繊細です。冷やすと香りが感じられにくくなってしまいます」。具体的には、味わう30分前に冷蔵庫から出しておくこと。袋ごとぬるま湯につけて温めてもいい。

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5. 調味料を使いすぎる

ペスト、オリーブオイル、塩、胡椒……。モッツァレラにはどんな調味料でも合うと専門家は言う。ただし分量には気をつけること。「手作りのモッツァレラを購入したら、乳やクリームの風味だけでなく、農場、家畜、家畜の飼料となる植物、そのすべてを味わってほしい」とピエリーニ。

理想としては、塩も使わないとイタリア人のピエリーニは言う。「モッツァレラにすでに塩が含まれていますし、塩には脱水作用があります。食卓に出す30分前に塩をふりかけてしまったら、モッツァレラが水っぽくなってしまって台無しです」
 

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6. 水牛のモッツァレラに火を通してしまう

「腕のいいピッツァイオーロ(ピザ職人)なら、これからかまどに入れるピザにモッツァレラ・ディ・ブッファラを使うことは絶対にありません」。ピエリーニだけでなく、すべてのイタリア人にとって、このモッツァレラを焼くのは冒涜に等しい。「ピッツァイオーロは焼き上がった直後、ピザをサーブするときにモッツァレラをちぎって散らす。モッツァレラがピザに触れ、わずかに溶けている状態です。水分が出切ってしまったらいけません」

温かい料理には、比較的加熱に適している乳牛のモッツァレラを選ぶべき。ただそれでも理想的というわけではない。「脂肪分が少ないので、加熱調理に耐えられません。すぐに茶色くなってしまいます」

それでも、イタリア南部生まれのチーズのフライ、モッツァレラ・イン・カロッツァのように、チーズに火を通すレシピもある。水分を少し出すために調理の前にチーズを押すといいと言う人もいるが、ピエリーニはこれには賛成しない。「旨味が失われる可能性があります。私ならザルにおいて休ませます。空気に触れて、表面が微妙に固くなりつつ、内側にはしっかりと水分が保たれます」

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7. 夏にしか食べない

意外かもしれないが、モッツァレラは冬のチーズだ。「みんなが季節に応じた暮らしをし、農家の人たちと同じ製造方法を取り入れたら、夏にこのチーズは食べられないでしょう。夏の間、水牛の乳は復活祭の頃に生まれた子牛が飲むものでしたから」

現在は輪番で搾乳牛を管理して代用乳が使われるようになり、1年を通してモッツァレラを味わうことができるようになった。つまり、寒い季節にモッツァレラを食べないのは本末転倒なのだ。「モッツァレラを蒸した冬野菜に添えると、とても美味しい」とピエリーニは提案する。「ロマネスコやにんじんに合わせてもいい」。おなじみの「トマト・モッツァレラ」とは一味違った味を楽しもう。

ナポリ風カプレーゼサラダの本場のレシピ
トマトは厚めに切り、少量の塩、胡椒、オリーブオイルで味付けする。
モッツァレラ・フィオール・ディ・ラッテを使う。同様にスライスするが、味付けはしない。
トマトとモッツァレラを皿に盛る。
ナポリの大振りのバジルの葉をそのままサラダの上に散らす。

 

(1)イタリア高級食材専門店 RAP、4 rue Flechier, パリ9区。9時~19時30分営業。日、月曜休み
(2)Alessandra Pierini著『La Mozzarella, dix façons de la préparer』Les Editions de L’Epure刊。

text: Alexandra Marchand (madame.lefigaro.fr)

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