イタリアが誇る美しい泡、フランチャコルタの秘密とは?
Gourmet 2024.04.15
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フランスのシャンパーニュ、スペインのカヴァと並び称されるスパークリングワインが、イタリアの「フランチャコルタ」。2024年にはフランチャコルタのロゴも刷新され、同地の名を冠したスパークリングワインのさらなる魅力を伝えるディナーがブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティンにて開催された。
フランチャコルタが瓶内二次発酵(=シャンパーニュと同じ製法)スパークリングワインの産地として確立したのは1961年。300年以上の歴史を誇るシャンパーニュと比べるといかに後発の産地であるかが際立つが、その味わいは瞬く間にワインラバーを魅了。高級スパークリングとして世界のレストランやホテルにオンリストされた90年代には「フランチャコルタの奇跡」というフレーズが囁かれるようになった。イタリアでワインの取材を続けて40年のジャーナリスト・宮嶋勲はその秘密をこう話す。
「後発の産地であることが非常に有利に働いた、ということがあります。フランチャコルタはファッションや工業デザインの盛んなミラノから車で40分ほど。マーケティングの手法に優れた人々が集まりやすい地域で、シャンパーニュや世界の高級ワインがどのように売れているかを徹底研究し、当初から"少数精鋭"で高品質なワイン造りを目指したのです」
「もちろん商業的な華やかさや見た目の格好良さは、中身が高品質であることが大前提です。フランチャコルタのブドウは北にアルプス山脈とイゼオ湖を望む、風光明媚な土地で育ちます。ブドウの生育期、昼間はTシャツにハーフパンツで歩きたくなるような暑い気候になりますが、夜には山から吹きおろす冷風でジャケットが欠かせないほどまで気温が下がります。この昼の暖かさによってブドウは完熟まで糖度を上げ、シャンパーニュにはないトロピカルフルーツの香りが"ほんの少しだけ"香る、という美徳を得るのです。そして夜の涼しさによってキリッとした酸味が与えられ、太古の氷河の名残である石灰質の土壌からはミネラル感が加わります。こうして生まれるフルーティで、誰が飲んでも陽気になるような喜ばしい味わいがフランチャコルタの魅力と言えるでしょう」
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アペリティーヴォや食中にピッタリの"穏やかな泡"、サテン。
フランチャコルタは山間に位置するというのに、そのミネラル感とフレッシュな酸味は海鮮系の魚介とも好相性だ。コースの最初には透き通るようなアオリイカにグリーンピースを添えたひと皿が供された。それに合わせてサービスされたのが、名門ワイナリーであるリッチ・クルバストロのサテンブリュットだ。
サテンとは通常のスパークリングワインよりもガス圧を抑えた、白ブドウのみで造ることが許されるフランチャコルタ独自の生産基準のこと。二次発酵の際に加える糖分を抑えたり、通常よりも長期にわたって熟成することで、5気圧以下の穏やかでクリーミーな口当たりな泡立ちを実現。フレッシュなイカの歯触りが少し残るうちに、サテンを口に含んでみる。しっかりとしたミネラル感が食材の繊細な甘さを引き立て、スムーズに入り込んでくる"優しい泡立ち"が実感できる。フルーティながらも引き締まった構成は、野菜のちょっとした苦味や甘さをより心地よいものにしてくれる。
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完熟するからこそブドウ本来の味わいが楽しめる、ドサッジョゼロという選択肢。
イタリアの暖かな日差しと昼の気温によって、フランチャコルタのブドウはしっかりとした糖度を得る。これによってフランチャコルタでは瓶内二次発酵後に糖分を補填、調整するドサッジョ(フランス語ではドサージュ)という工程をなくし、超辛口ながらも果実味豊かなワインに仕上げるドサッジョゼロ(ノンドサッジョ、パドセ、パスオペレ、ブリュットナチュレとも呼ばれる)という、高度な技術を得意とする生産者が多数いる。
マイオリーニのパドセは、リンゴや洋梨、一瞬パイナップルを思わせる香りと味わいがブワッと駆け巡り、その果実味の豊かさにグラスを繁々と眺めてしまう。自社農園の完熟ブドウを手摘みで収穫し、翌年の春までゆっくりと発酵。さらに瓶内で最低30ヶ月以上も熟成させるのだから、辛口とはいえ角の取れたまろやかな味わいが加わり、軽やかな酸味が加わってどこまでも伸びそうな余韻をしっかりと引き締めてくれる。ボタンエビをタマネギと和えた甘やかな料理をともに味わったが、エビの甘さと香りが泡に乗ってふわりと浮かび上がるような感覚が続いた。
フランチャコルタの魅力とは、果実味が豊かであることにより、温度帯を上げることで表情が幾重にも変わるというボトル1本でも楽しめる変化のおもしろさと、多彩な生産者によるそれぞれの思想が現れた、華やかな味わいを飲み比べたくなることの両軸があるように思う。ワインジャーナリストの宮嶋は次のようにも語った。
「シャンパーニュの生産本数は年間約3億本、比べてフランチャコルタは2000万本。そもそも数の上ではまったく勝負にはなりません。けれどもフランチャコルタの生産者たちは、シャンパーニュやカヴァといった他のスパークリングにはない魅力を、自分たちのワインが持っていると確信しているのです。それはまさに、『この味を愛せる人だけ、味わいがわかる人だけフランチャコルタのファンになってください』と言わんばかり。本当の美しさ、格好よさ、楽しさを知っている人だけが楽しめばいい......。なんとも洒落たスパークリングワインなのです」
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気候変動に備えた、"古代品種の復活"という決断。
さて、昨今ワイン業界は「地球温暖化」という、世界的な気候変動に悩まされている。世界各地で気温の上昇によって、元からあった畑で同じ品種のブドウが採れなくなったり、標高がより高く気温の低い畑を探さざるを得なくなったりと、各国のワイン生産者が頭を抱える課題だ。フランチャコルタでもそれは例外ではなく、気温上昇でブドウの成熟が早まり、収穫のスケジュールを前倒しにすることが増えている。それによって将来的には十分な酸度のあるブドウが実らない可能性があるのだという。
それを解決すべく、フランチャコルタの土着品種だった「エルバマット」の栽培が2017年から許可された。エルバマットは、フランチャコルタに使用が許されているシャルドネやピノ・ネロ(フランスではピノ・ノワールと呼ばれる)、ピノ・ビアンコよりも晩熟で、酸味が非常に高いブドウ品種。このブドウをサテン以外のカテゴリのワインには10%使用してよい、という規定が生まれ、現在では数軒の生産者によってその改良が進められている。その中でも最も先進的にエルバマットの使用に取り組んできたのがバローネ・ピッツィーニだ。オーナーのシルヴァーノ・ブレッシャニーニはフランチャコルタ協会の会長も務めている。先日、バローネ・ピッツィーニによるセミナーで、現地でも珍しいエルバマット100%のワインを特別に試飲することができた。
香りはどこまでもフルーティで甘やかなのに、飲んでみるとまるで若い柑橘を絞ったような、思わず口がすぼまるほどの酸味があって驚く。この酸味を活かすのが難しく、また栽培が難しいこともあってエルバマットは長らく忘れられた品種となっていた、とブレッシャニーニは語る。60年以上もシャルドネ、ピノ・ネロ、ピノ・ビアンコのみを使用することをよしとしてきたフランチャコルタでは、エルバマットを使うことの是非がいまも話題になり、使わないことを決めている生産者もいるという。
「2017年に植えたエルバマットのブドウの木が完全に成長しきるまで15年はかかるでしょうし、できたワインをさらに15年熟成させてみて初めてその真価がわかる、と私自身が思っているほどです。しかし、エルバマットは500年以上もこの土地に根ざしてきたブドウ品種。そんな長く自生してきたブドウ品種は、世界的にもあまり例がないものなのです。エルバマットという選択の是非は時間が経過して初めてわかることだと思いますが、私は『この土地の歴史を受け継ぐ』という喜びを感じています」
そんなバローネ・ピッツィーニがエルバマットを使用した意欲的なシリーズが「アニマンテ」だが、2024年リリースのものからドサッジョゼロに切り替えていくことを発表! 追加の糖分を補完しない分、ブドウの果実味がとても重要視される造り方に舵を切ったのだから、自分達の技術力と、オーガニック栽培にこだわるブドウのポテンシャルにどれだけの自信を持っているかがわかるというもの。華やかさの中に、ピノ・ビアンコから湧き立つようなフルーティさがあり、キリッとした酸味と力強いミネラル感で余韻が引き締まる。トロやサーモン、ホタテといった味わい深い寿司と合わせてみたくなるような味わいだ。
イタリアの風光明媚な山岳と湖が育む、唯一無二の泡、フランチャコルタ。週末のひと時、食卓を華やかに、陽気に飾る間違いない一本を選んでみてはいかがだろう?
https://franciacorta.wine/ja
text: madame FIGARO japon