『神の雫』原作者も驚いた、高山村のシャルドネが描く「日本ワインの静かな成熟」。
Gourmet 2026.04.07
最高標高900mという高度を誇る、長野県・高山村のブドウ畑。「日本で最も美しい村」連合にも加盟するこの村で生産されるシャルドネが、日本ワインの静かな成熟を物語っているーー。この日、テーブルを囲んだのは、『神の雫』の作者・亜樹直こと樹林ゆう子、樹林伸姉弟、そして西麻布で日本ワインを扱うワインショップ「遅桜」を手がけるソムリエ・大山圭太郎。村内に「マザーバインズ長野醸造所」を持つ醸造元、マザーバインズから代表の陳裕達、丹羽駿介も交え、「ナガノ タカヤマ ヴィレッジ シャルドネ 2022(NAGANO TAKAYAMA-VILLAGE CHARDONNAY 2022)」の試飲を起点に高山村という産地、日本ワインの現在地、そしてこれからの可能性について語り合った。
標高による冷涼さと大手不在の環境が、土地の個性をそのままワインに映し出す。
標高500〜600mに位置する長野県、高山村。夜は山からの冷涼な風が吹き降りる寒暖差の激しい気候が、華やかで香り豊かなワインを生み出す。近年では世界的なワインコンクールで金賞を受賞するシャルドネが数多く誕生するなど 、ワイン愛好家の間でも「シャルドネの銘醸地」として注目を集め出している。
樹林ゆう子(以下ゆう子) 高山村のシャルドネは、以前飲んだ時からとても印象に残っていました。『マリアージュ 〜神の雫 最終章〜』でも紹介しましたが、やはりテロワール的にシャルドネが向いているのでしょうか?
丹羽 そうですね。ピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランもありますが、高山村ではシャルドネがいちばん特徴を表現しやすい品種だと思います。酸がしっかり残るんです。
ゆう子 標高が高いこともその理由のひとつですか?
丹羽 はい。畑は標高450mから900mまであり、場所によって気温差はおよそ2度あります。冬は雪も積もりますし、冷涼な気候はかなりはっきりしています。
大山 長野県にはさまざまな産地がありますが、高山村には大手ワイナリーが入っていない分、土地の個性がそのままワインに表れやすい地域ですよね。
ゆう子 確かに。大手がいないのは、ある意味とても個性を全面に出しやすいのかもしれないですね。土地のキャラクターを、無理なくワインに映し出せる環境だと思います。
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軽やかさの先にある骨格と旨味、そして静かなミネラリティ。
樹林伸(以下伸) このワイン、しっかりしていますよね。グリップがあって、それでいて綺麗。特に余韻が途切れずに続く感じがいい。日本ワインで、ここまで余韻が伸びるものは多くないと思います。佇まいもいいし、デザインもどこかフランスワインのような雰囲気があります。
ゆう子 高級感がありますよね。日本ワインって、どうしても軽い印象を持たれがちですが、これは重心が下にある。その違いは、飲むとすぐにわかります。
大山 飲み手の立場からすると、日本ワインで「しっかりしている」と言えるものは、まだ多くありません。軽やかで飲みやすい一方、骨格が弱めのものも多い。ただ、重くしすぎると今度はカリフォルニアやオーストラリアのシャルドネのようになってしまう。その中間に位置しているからこそ、このワインにはどこか"わびさび"のような感覚があるんですよね。
伸 たしかに。このシャルドネには少し新世界的なニュアンスもあるけれど、押しの強さがないのがいい。トロピカルフルーツ、パイナップルのようなふわっとした香りがあって、酵母由来の個性を感じます。日本は湿度があるから、酵母が生きやすい環境でもある。造り手の意図も大切だけれど、土地の味わいが自然に出てくると、ワインはさらに立体的になる。
ゆう子 これなら、和食店にも自然に置けますよね。フランス料理にも合うけれど、和食との相性がすごく想像できます。
陳 高山のワインで強く感じるのは、"旨味"です。シュール・リー(※)由来のニュアンスもあり、和食との相性がとてもいい。こうした味わいは、日本の食文化に自然に寄り添いますし、海外ワインにはなかなか真似できない部分だと思います。
※醸造したワインをある期間、澱とともに熟成させること。酵母由来の香りや旨味、まろやかさをワインに与える作用がある。
大山 日本では白ワインというと、どうしても甲州が中心になります。北海道だとケルナーやバッカス。日本ワイン=土着品種、という意識がまだ強く、日本のシャルドネは少ないのが現状ですね。
伸 でも、シャルドネは長野という土地に合っている。もっと増えてもいい品種だと思います。このワインは完成度が高く、きちんとミネラリティも感じられる。これからさらに、高山村の土壌やテロワールの個性が前に出てくるとおもしろい。次のヴィンテージも楽しみですね。
ゆう子 たしかに。高山村のテロワールをどう景色とワインに映し出すか、そこに踏み込んでいくと良さそうですね。
大山 最近は長野県内でも、リージョン(※)ごとにワインのイメージが形づくられてきています。高山村のリージョン、高山村のシャルドネの輪郭を、これから作っていけるといいですね。
※リージョン(Region):ブドウが栽培され、ワインが造られた特定の生産地域のこと。気候や土壌(テロワール)に由来するワインの個性を決定づける重要な区分を指す。
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ツーリズムがひらく、「土地とワイン」の楽しみ。
ゆう子 ナガノ タカヤマ ヴィレッジ シャルドネ 2022や高山村のワインをより深く愉しむという意味では、ぜひワインツーリズムを展開してほしいですね。ワイナリーは行ってみないとわからない空気がありますし、ワインと一緒に土地の空気を味わうことで、見えてくるものがある。地域の魅力とワインが一体になって感じられるので、私は個人的にもワイナリー訪問が好きなんです。
伸 ワインは、やっぱり現地で飲むのがいいよね。
大山 そうですね。生産者の言葉や風景が、グラスの中に重なっていくことで、ワインの理解が一段深まりますね。是非、開催して欲しいです。
➀JR北陸新幹線 東京駅(約1時間20分)→ 長野駅 [長野電鉄(約30分)] → 須坂駅 → タクシーで15分 →高山村
➁JR北陸新幹線 東京駅(約1時間20分)→ 長野駅 タクシーで40分 →高山村
日本ワインショップ遅桜にて販売中
〒106-0031 東京都港区西麻布4丁目4−4 12 Sビル 1F
03-6427-5090
また、さとふる「長野県高山村」にても購入可能。
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1677696
text: Shunsuke Niwa (mothervines and groceries)






