いま注目は「泊まれるワイナリー」!? 気になる日本ワイン生産者3選。

Travel 2025.04.15

海外に負けない品質になったと話題の日本ワイン。その歴史と発展とは? ブドウが育つ地でワイナリーに泊まる体験をすれば、神髄がわかるはず。全国各地の注目の造り手とワインもチェックして、"推し"を探すのも楽しい!


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山梨県富士河口湖町のブドウ畑から富士山を望む。日本でもすっかり当たり前になった西欧風の垣根の風景。

1970年代から日本ワインの生産現場と市場を見てきた石井もと子に、その変遷と現状、そして展望を尋ねた。

「この数十年で日本で造られるワインの質は上がり、注目すべき生産者も増えたと言えます」

「日本ワイン」とは日本のブドウのみを原料として日本で醸造したワインを指すが、この表示ルールは2018年以降のこと。それ以前は輸入原料を用いて国内醸造されたものも日本のワインとして流通し、地ワインやワイナリーのお土産ワインとして売られていた。

「ヨーロッパの伝統産地にはワイン生産に適したテロワールがありますが、湿潤でブドウ栽培適地とはいえない日本では、それを人の知恵と力で補い、少しずつ前に進んできました」

輸入原料や生食用ブドウから造られた安価なワインが主流だった1970年代から80年代にかけて、海外の銘醸地へ学びに出た志のある造り手がいた。研鑽を積んだ彼らがその技術と信念を持ち帰り、ワイン造りに新風をもたらし始めたのが90年代。明治期に、適品種を求めて研究を重ねマスカット・ベーリーAを開発した川上善兵衛や、技術を共有するとともにワイン造りの哲学を説いて次世代に影響を与えた昭和期の醸造家でメルシャンの浅井昭吾らの功績もあり、造り手たちが高品質なワインを目指して切磋琢磨するようになる。

ワイン特区の制定も手伝って、2010年前後から日本各地に個性的な小規模ワイナリーが次々と開業し、"ブーム"と呼ばれる時代が訪れる。国際コンクールで輝かしい成績を挙げながら、栽培や醸造の技術を惜しみなく公開し、日本ワインの発展に寄与してきた大手ワイナリーの貢献も大きかった。国内のワイナリー数が500超にまで増えたいま、「玉石混淆ともいえるけれど、魅力的な生産者や特筆に値するワインを知ってほしい」

泊まれるワイナリーで、テロワール=気候風土を体感。

日本なら、畑やワイナリーに足を運びやすいというのも魅力。訪れて空気を感じてみると、その風土と人の想いがボトルの中に込められていることがわかる。

「山形の内陸部にある上山地区のワインはふくよかな丸みがあり、夏の暑さがその味わいに出る。北海道のワインが持つ独特の清涼感はやはりブドウ生育期の涼しさが表れたもの」

ならばその場所に泊まってしまおう! 宿泊設備を備えたワイナリーが国内にも増えつつある。造り手の話に耳を傾け、その地で育った食材とともにワインを味わい、ブドウを育む大地に抱かれて眠る。ワインが生まれる場所に身を委ねることで、その全貌が見えてくるはずだ。

日本ワインを牽引してきた大手ワイナリー

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シャトー・メルシャン 日本ワインのルーツともいえるワイナリーで、研究開発による情報を開示し業界の発展に貢献。工場長だった浅井昭吾が取り組んだ桔梗ヶ原圃場のメルロは国内外で評価され、日本で廃れていた欧州系品種によるワイン生産の道筋となった。浅井から薫陶を受けた当時の若手がその後活躍し、ブームに起因している。「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原 メルロー シグナチャー 2019」750ml ¥22,803/メルシャン

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サントリー 登美の丘ワイナリー1909年の登美農園の開園から、日本のワイン造りにおいて100年以上の歴史を持つ。業界全体の底上げも視野に入れ、国内の生産者との技術共有を積極的に実施。持続可能な生産に向け自園の栽培品種を見直し、白品種では甲州に注力。フラッグシップの登美としてリリースした甲州が英国の有名なアワードで最高賞受賞の快挙を成し遂げ、2024年度の大きなニュースとなった。「登美 甲州 2022」750ml ¥13,200(完売)/サントリー

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マンズワイン 1962年設立。多雨対策として垣根仕立ての畑に雨よけを組み合わせた「マンズ・レインカット」(特許取得)は現在も国内の多くの畑で活用される。73年に開設された長野県の小諸ワイナリーで造られる上級レンジ「ソラリス」シリーズは国際的にも高い評価を得ており、フランスのワインコンクールで最高得点賞を受賞したものも。直近では「ソラリス マニフィカ 2017」(完売)が日本の赤ワインとして初の大賞に輝き、その実力を示した。「ソラリス ラ・クロワ 2020」750ml ¥7,150/マンズワイン

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山梨・塩山「ステイ366/98ワインズ」で、ワインとビールと蕎麦を堪能。

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「日常の先にある特別な一日を」、そんな意味を込めた山里の宿。長く日本のワイン産業に携わってきた醸造家・平山繁之が開いた98ワインズは"ワインは場所が造る"という理念のもと、山梨に根づいたブドウ品種である甲州とマスカット・ベーリーAのみを生産するマイクロワイナリーだ。>>>Read more

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河口湖「セブンシダーズワイナリー」で、
ソムリエと畑を歩く宿泊者限定ツアーへ!

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行き慣れた別荘にいるかのように寛ぎながらワイン三昧できる、洗練のワイナリーヴィラが富士山の北麓にお目見え。2024年夏にオープンしたセブンシーヴィラ&ワイナリーは、敏腕醸造家の鷹野ひろ子が手がけるセブンシダーズワイナリーのワインを心ゆくまで堪能するための宿だ。>>>Read more

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耕作放棄地を整備、ワインツーリズムを堪能する
北海道「ニキヒルズワイナリー」へ!

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仁木の軟水と粘土質混じりの土壌から生まれるワインは、味わい深く滋味あふれ、バランスに優れる。主席醸造家の太田麻美子は「注いだ瞬間の香りでまず想像を膨らませてもらい、飲み進めるうちに味わいがどんどんと開いていく、そんなストーリーのある一本を目指しています」と語る。>>>Read more

石井 もと子|Motoko Ishii
ワインジャーナリスト。ワイン輸入商社勤務後、米国で栽培と醸造を学ぶ。1996年、ワインコンサルティング業務などを行う株式会社ベイシスを設立。日本ワイナリー協会顧問として生産者をサポートする日本ワインのスペシャリスト。
問い合わせ先:
サントリー お客様センター
0120-139-380(フリーダイヤル)

マンズワイン
https://mannswines.com/

メルシャン お客様相談室
0120-676757(フリーダイヤル)

*ワイン製造免許取得の条件である年間生産量6klを2klに引き下げて、小規模生産による免許取得を可能にした特例措置。

*「フィガロジャポン」2025年2月号より抜粋

photography: Bungo Kimura, Mirei Sakaki text: Hiromi Tani

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