Kawakyun 廃棄されがちな"床革"に光を当てた、新発想のプロダクト。

Interiors 2022.10.26

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床革を使い、縫製せずに仕上げた「case LEFT.」。従来の価値基準を覆すプロダクトから、革製品の新たな未来が広がる。

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革は、銀面と呼ばれる表面がある銀付き革と、革を漉いた際に出る銀面のない「床革(とこがわ)」()と呼ばれる2層に分けることができる。しかし、1〜2ミリほどの薄さに漉いた床革は柔らかくて扱いやすい反面、強度に乏しく、縫製しようとすると針穴から裂けてしまうため、これまではほとんどが廃棄されていた。そんな床革を有効活用する革製品が「case LEFT.」だ。東京のデザインスタジオ「DRILL DESIGN(ドリルデザイン)」と、革製品用の抜き型製造を得意とする「日本スエーデン」が共同開発したもので、縫製ではなく成形によって床革そのものに構造をもたせている。

「『case LEFT.』は、日本スエーデンの代表取締役、山本健二さんと一緒になにか作りたいね、と雑談していたことから生まれたプロジェクトです。プロダクトデザイナーの仕事とは、メーカーの技術力や特徴を最も生かすプロダクトデザインを考えること。日本スエーデンはもともと靴やカバンに使用する革の抜き型を得意とするメーカーであることから、“縫製しない革製品”の可能性を考えるようになりました」(DRILL DESIGN・安西葉子さん)

*: 本記事においては革製品をつくるために革を薄く漉いた残りの革のことを指します。

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右は多くの用途で使われる銀面が付いた革、いわゆる銀付き革。左が床革。厚い革を上下2枚にスライスした(=漉いた)残りの部分である床革は銀付き革に比べて薄く、毛羽立ちのある質感であることがわかる。「case LEFT.」のプロダクトに使われるのは、国内で鞣したタンロー(タンニン鞣しのろうけつ染め用に仕上げた革)の床革。「質がよく、品質が一定しているからです。DRILL DESIGNのふたりも素朴な質感を気に入っていましたが、床革はコストパフォーマスの点でもメリットがありますね」(日本スエーデン・山本さん)

山本さんに尋ねると、日本スエーデンでは過去に型を使って革の成形を行ったことがあるという。これを発展させて革の成形方法を確立したら、独自のスタイルが打ち出せるのでは。そんな2社の思いが共通して、2013年に商品開発をスタート。初めにデザインしたのは、現行品の原型となるシンプルな蓋付きケース。どんな素材がこれに適しているのか、立ち上がりの角度はどこまで付けられるのか、どこまで複雑な形状を作れるのか、すべてが手探り状態だった。

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スエーデン鋼の抜き型を使い、革の深絞り成形という抜きと絞りの独自技術を駆使して成形される。サイズが大きくなって立ち上がりが高くなると、革の強度が足りず形を保ちづらくなることから、デザインによって張り合わせる床革の枚数や厚みを変えているそう。 Photography: Satoshi Yamaguchi

「当初は銀付き革を使っていましたが、プラスチックのような見た目になってしまい、おもしろみに欠けるんです。そこで山本さんから提案されたのが、毛羽立ちのあるラフな質感の床革。床革って、これまではなかなか表に出てこなかったけれど、非常に魅力のある素材なんです。デンマークの有名な生活用品ブランドもこの質感をとても気に入って、何とか量産できないかと世界中の工場に当たったのですが、成形できるところが見つからなかったそうです」(DRILL DESIGN・林裕輔さん)

素材に床革を採用することは決まったけれど、ケースの深さを出すために必要な、厚さ1ミリ以上の床革が手に入らない。入ったとしても安定供給は見込めず量産には適さない。
「薄い床革の強度が足りないなら、いっそのこと木の成形合板のように貼り合わせてしまおう、ということで2枚を合わせてみたところ、これがうまくいきました。薄く、柔らかい素材なので、貼り合わせても扱いやすく、深く絞ることが可能です。さらに供給量が多く価格も安いので、量産にも適している。やっているうちに、中に補強材を入れたり3枚を貼り合わせたり、デザインによって素材の厚みを調整できるようになりました。そこで、深く絞ってもシワが入らない形状を探っていったんです」(林さん)

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DRILL DESIGNの安西葉子さん(左)と林裕輔さん(右)。プロダクトデザインを中心に、グラフィックデザインからマテリアルデザインまで、さまざまなジャンルのデザインおよびディレクションを手がける。

その間、山本さんは自社工場で成形の技術を完成させつつ、非現実的な大きさの革を絞るなど、さらに試行錯誤していたようだ。山本さんが代表取締役を務める日本スエーデンは、サンダルの産地である静岡でサンダルの抜き型を作製していた。現在は静岡と東京・浅草を拠点に靴のCAD事業などを展開しているが、山本さんたちが大切にしているのは、革を使ったものづくりとデザイン。OEMを手がける傍ら、オリジナルプロダクトの開発にも積極的に取り組んでいる。今回は革の深絞り成形という加工技術を独自に開発して「case LEFT.」に落とし込んだが、難しかったのは、「深く、大きく絞る」というデザイナーの要望を実現すること。

「デザイナーは世の中にないものを作りたいから、深く、大きく絞りたい。でも深く絞るとどうしても、革の立ち上がりの四隅にシワが寄るんです。この両立が難しかったですね」(山本さん)
それから山本さんが製品としての完成度を高め、量産体制を整えるまでにさらに2、3年を要した。

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大学時代にデザインを学んだという日本スエーデンの山本健二さん。

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従来の価値基準にとらわれない、新しい価値。

2020年に「case LEFT.」のお披露目をフィンランドのインテリアブランド「Artek Store Tokyo」で行った。廃棄されることの多かった素材を活用した点や発想の新しさがArtekの世界観と合致するということで、アルヴァ・アアルトがデザインした名作椅子、「スツール60」とのコラボレーションも実現。このスツール用に「case LEFT.」の革製クッションをデザイン・製作した。

「革製品は縫製ありきと思われており、実際、革製品のプロダクトとしての価値は、傷のある・なしといった革の質と、縫製技術で決められています。『case LEFT.』は床革を使い、縫製もしない。これまでの価値基準を排したものづくりから、既存の価値観にとらわれない自由なプロダクトが完成しました」(林さん)

「絞りの技術って、昔はもっと幅広いジャンルで活用されていたようなんです。けれどプラスチック製品が出てきたことで次第に廃れてしまった。今回のプロジェクトではそういう技術を甦らせることができたという点でも、これまでとはひと味違ったプロダクトになったと思っています」(安西さん)

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Artekの「スツール60」のために製作した、座面を覆うデザインのオリジナルクッション。床革の間にウレタンを挟み込み、柔らかく快適な座り心地を叶えた。現在もArtekのストアで展開中。

一方の山本さんは、自社工場でさらにサステナブルなものづくりに挑戦したいと考えている。
「廃棄されがちな床革を使っているとはいえ、製造工程ではどうしても使えない部分が出てしまいます。これをなにかに活用できないかと模索中ですが、実現できるのはもう少し先になりそうです」(山本さん)

初回発表の商品は製作コンセプトの打ち出しが強いものになったので、「次作はもう少し幅広い層に手に取ってもらえるようなものを発表予定」と3人。「case LEFT.」の新作は来春ごろお披露目予定だ。

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床革の風合いがユニークな「case LEFT.」。丸型「TAB_round」、角形(小)「TAB_business card」、角形(大)「TAB_post card」/日本スエーデン Photography: Satoshi Yamaguchi

DRILL DESIGN
東京都世田谷区三宿2-18-5
www.drill-design.com

 

日本スエーデン
静岡県静岡市葵区牧ヶ谷2450
tel: 054-278-2761
https://nihon-sweden.com

* 日本タンナーズ協会公式ウェブサイト「革きゅん」より転載

天然皮革の魅力を発信する「革きゅん」サイトをチェック!

photography: Midori Yamashita, editing & text: Ryoko Kuraishi

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