フランスの美意識を現代に伝える、ベルナルドの磁器。
Interiors 2024.09.18
王侯貴族たちから広まったフランスのテーブルウェアには長い歴史を誇るブランドがあり、現在も当時のモチーフが残る。その源泉を辿り、製法やデザイン、魅力を解き明かしてみよう。フランス磁器の一大生産地、リモージュで長い歴史を誇るベルナルドは、伝統を守りつつ革新的な作品を発表し、テーブルウェアに新風を吹き込む。
Bernardaud
ベルナルド
白く硬質な磁器に欠かせない原料、カオリンが発見されたことにより磁器の街となったリモージュ。1863年、この地で創業したベルナルドは磁器の新たな可能性を研究するかたわら、フランス王政時代に磁器の生産が行われていた旧王立製陶所を統合したことにより、ルイ15世やマリー・アントワネットといった当時の王室が発注した数々の製品の復刻を行ってきた。
歴史へのオマージュは現在にも引き継がれており、メゾンを代表する「ルーヴル」コレクションは館が王宮だった時代、歴代の君主が増築を重ねるたびに取り入れた意匠をヒントに制作されたもの。プレートやマグカップにあしらわれた天井のレリーフや柱のデザインなど、すべてのアイテムを揃えていくとテーブルにルーヴル宮殿の世界が繰り広げられる。
近年のロングセラーは泡をモチーフにした「エキュム」。磁器の白さと彫刻のような泡の紋様は料理をモダンに引き立て、星付きレストランのシェフにファンが多い。フランスの食卓において、テーブルコーディネートは家庭の雰囲気を表す最大のおもてなし。連綿と受け継がれてきたフランスの美意識を現代に伝えるベルナルドの製品は、食卓を盛り上げる名脇役なのだ。クラシックなものからモダンなものまで幅広いデザインがあるので、さまざまな食事やライフスタイルにもマッチするはず。
LOUIS XV
1757年、磁器の一大生産所であったロワイヤル・セーブル・マニュファクトリーからルイ15世(下)に納められたセット。王のお気に入りだったフォンテーヌブロー宮殿では、絢爛たる食器の数々が食卓を彩った。繊細なスカラップ型を細いゴールドとバラの輪で縁取り、ルイ15世様式の特徴である渦巻き模様がアクセントになっている。カメオカーマインと呼ばれる深みのある赤紫色は当時非常に珍しく、この絵柄は王家以外には使用できなかった。皿の中央に星型に配置されたモノグラムが王家の品であることを示す。オリジナルピースは現在もフォンテーヌブロー宮殿に残されている。
MARIE - ANTOINETTE
ヴェルサイユのプティトリアノンで花の中に身を置きたいと願ったマリー・アントワネット(下)。1781年、彼女は大好きなパールとブルーエ(野生の矢車菊)の食器をセーブル王室製陶所へ依頼。
LOUVRE
ルーヴル美術館の建物に施されたレリーフを食器に表現。回廊のアーチを飾る花々や月桂樹の葉、ギリシャの波模様などが真っ白な磁器に美しく浮かび上がる。
LE GOBLET DU ROY
1783年、ルイ16世がヴェルサイユ宮殿(下左)のためにバルボー(矢車菊)をあしらったテーブルウェアを発注。「ゴブレ」とは王と王室に仕え、テーブルサービスを取り仕切る役職のひとつ。中央に描かれたローズを青紫色のバルボーの螺旋が美しく彩り、テーブルを華やかに演出する。
*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋
text: Junko Kubodera