オブジェとしても美しい、ラリックのクリスタルガラス。
Interiors 2024.09.23
王侯貴族たちから広まったフランスのテーブルウェアには長い歴史を誇るブランドがあり、現在も当時のモチーフが残る。その源泉を辿り、製法やデザイン、魅力を解き明かしてみよう。19世紀から20世紀にかけてパリで活躍したルネ・ラリックが創業。芸術家のエスプリを受け継いだクリスタル製品は、オブジェとして飾っても美しいアート作品のような存在感だ。
LALIQUE
ラリック
1860年、シャンパーニュ地方に生まれたルネ・ラリックは宝飾職人としてキャリアをスタート。1900年のパリ万博では、エナメルやガラスを取り入れた斬新なジュエリーが好評を博す。その後、香水瓶のデザインをしたことをきっかけに07年以降はガラス工芸作家として歩み始める。さらに花器や壁面装飾パネル、シャンデリアなどインテリア装飾も手がけ、ウィンジャン・シュル・モデにガラス工房を創設。
27年に発表したフラワーベース「バコントゥ」は神話をモチーフにした象徴的なデザインで、現在でもロングセラーとなっている。35年にはパリのロワイヤル通りにブティックをオープン。ルネが死去した後は息子のマルクがラリック社を引き継ぎ、クリスタルガラスの時代を切り開く。実用的なアイテムに美を取り入れたラリックの製品は、アールドゥヴィーヴルそのものといえるだろう。
LOTUS
水辺で密かに花を開く神秘的な睡蓮にインスピレーションを得て、蓮の花と水滴をモチーフにしたグラスコレクション。グットゥ(雫)、ロゼー(露)、フルール(睡蓮の花)、ブルジョン(睡蓮のつぼみ)の4つのモチーフで展開。クリスタルの硬質な美しさとポエティックな植物の世界が融合した名品。デイリーに活躍するサイズなので、柄違いで揃えるのも楽しく、食卓に清涼感を運んでくれる。
MERLOT
オリエンタル急行にデザインした「メルル エ レザン」のモチーフがワイングラスの脚に。
VERSAILLES
1939年制作のフラワーベースを再解釈。端正に彫られたレリーフがテーブルに華やぎをもたらす。
*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋
text: Junko Kubodera