シンプルで開放的、建築家夫妻が暮らす60年代のアパルトマン。|アーティストのパリの家(3)
Interiors 2024.10.12
自宅を気ままに飾ったり、改装したり。花を生ける、お茶を飲む、デザインに優れた椅子や美しい食器、センスのいい日用品を選ぶ......そんなフランス流の"暮らしの美学"、アールドゥヴィーヴルを取り入れるヒントを、パリのアーティストに学ぼう。建築家夫妻は、バスティーユの古いアパルトマンを改装し、空間を広く見せる工夫を凝らした。
ミニマルな心地よさが響く、陽の光に寄り添った設計。
建築家カップル、キム・ハドゥとフローレント・デュフルクが暮らすのは、バスティーユにある1960年代後半のアパルトマン。隠れ家のような立地とイタリア風の独特の建築にひと目惚れしたという。
「2年前にこの建物に惹かれて引っ越してきました。中心地で便利だけれど、この通りは静かで暮らしやすいんです」と、キム。
Living Room
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6カ月かけて改装し、シンプルで開放的な空間に仕上げた。こだわりは、太陽の位置に合わせて光が入る間取りにしたこと。
「常に光が入ってくる明るい部屋にしたかったので、東側にリビング、西側に寝室という間取りで設計しました。キッチンで朝食をとる時から、夏の夜の寝室まで美しい光を浴びることができます」
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Bedroom
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東側と西側は階段で繋がるユニークな2階建て構造。また、細部まで計算し尽くされた家具のセレクトや配置にも、彼らの手腕が発揮されている。
「インテリアデザインも私たちの仕事なので、空間を広く見せられるように時間をかけて家具を選びました。建築様式に合わせて、イタリア製を多く取り入れています」
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Kitchen&Dining Area
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ダイニングキッチンはイタリアの大理石の板を壁に張り、オーダーメイドで美しく光るオールステンレスのキッチンを設置し、ナチュラルかつミニマルな雰囲気に。ヴィンテージのデザイナーズテーブルと、蚤の市で見つけたイタリア製のアノニマスなチェアが温もりを添えている。
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Workspace
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リビングは、壁に大きな鏡を張ることでスペースを広く見せ、コーナーに沿うようにソファをオリジナルで制作。ミニマルな空間だからこそ、装飾は印象的なものに絞って、アクセントを効かせた。イタリアの建築家ヴィコ・マジストレッティが手がけたヴィンテージチェアがモダンな佇まい。ひと際目を惹くフランス彫刻のオブジェもエレガントな存在感を放っている。
「仕事では要望に応じたスタイルに挑戦するからこそ、自分たちが暮らす場所はあえて装飾を削ぎ落とした余白のある空間に。シンプルなミニマリズムに辿り着きました」
引き算が鍵だからこそ、ディテールまで行き届いた美意識が必要とされる。シンプルな空間の細部に、彼らの審美眼と技が貫かれている。
キム・ハドゥ & フローレント・デュフルク
スタジオハドゥ/デュフルクとして活躍。2018年、トゥーロンのデザインパレードにて、ヴァン クリーフ&アーペル審査員大賞を受賞。サントロペのエルメスのブティックや南仏のホテルなど、今後にも注目。
*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋
photography: Mari Shimmura text: Momoko Suzuki