【パリのインテリア】パリジェンヌの美意識が宿る、植物の飾り方9選。
Interiors 2025.06.29
自分の感性をもとに、知恵と工夫を凝らして日常を楽しく過ごす、フランス流の暮らしの美学「アールドゥヴィーヴル」(Art de Vivre)は、パリジェンヌの住まいのあちこちに息づいている。インテリアに情熱を傾けるのと同じくらい、パリジェンヌが大事にしているのは暮らしに自然のエッセンスを取り込むこと。季節の花を生け、植木鉢を飾り、ベランダガーニングに精を出す......。そんな彼女たちのグリーンライフから、植物と付き合うヒントを見つけよう。
色にあふれた陽気な部屋には、花器も遊び心たっぷりに。
ソフィア・モーザ・レイタン(陶芸家)
棚に置かれた大きな花器は、パリのデザインウィークのために自ら制作したもの。グラフィカルなモチーフでも手描きのラインだから、ナチュラルな印象に。photography: Mari Shimura
陶芸を中心にアーティスト活動やファッションプロデュースにも携わる、リスボン生まれのソフィア。彼女のセラミック作品と同様、明るい色や柄をミックスしたスタイルが自宅にもふんだんに取り込まれている。リビングルームでは観葉植物オーガスタを自作の花器に入れて飾るが、柄違いの作品も並べて配置。ポップで大らかな表情の花器はオブジェの役割を果たし、空間に軽快な躍動感を生み出している。
テラスで、植物と一緒にアペロやカフェを楽しむのが日課。丸い葉っぱが可愛らしいペペロミオイデスは、ポップなウェーブ状の鉢にセット。隣の青いマグカップも自作のもの。
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観葉植物と花は、ミニマルな空間に彩りを添える装飾品。
セリア・ブリュノー(刺繍アーティスト)
「作品作りでは繊細な色の調和が要だから、私生活で目や頭がクリアになるよう、インテリアではほとんど色を使わない」というセリアだが、花だけは別物。photography: Sophie Arancio
猫と暮らすセリアにとって、「生きることは創造であり、創造することは生活そのもの」。だからアトリエと自宅を分けず、家の中も創造性を育む環境に整えている。インテリアは白を基調とした壁とファブリックに、アンティークの木の素材感を加えただけと、シンプルそのもの。代わりにあちこちに観葉植物を置いて、空間に彩りを添えている。暮らしに欠かせないという花は、「同じ種類の花の異なる表情を楽しみたい」から、ブーケではなく、あえて1種類だけで生けるのが彼女のこだわりだ。
存在感ある観葉植物は、あえて床に置かず、高さを出して目に触れやすいように。アンティークのチェアは、劣化した布部分をコーデュロイ生地に張り替えて愛用する。
花は食卓に欠かせない存在。蚤の市で見つけたダイニングテーブルの中央に、季節の花を飾って華やかに。白い花瓶は友人が作ったもの。
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室内もテラスも、色とりどりの花とともにある暮らし。
カミーユ・ウィット(イラストレーター)
花以外に、オリーブやレモン、イチゴを栽培する自宅のテラスから、モンマルトルの町並みを眺めるカミーユ。photography: Mana Kikuta
自身が描くイラストのように、家具や小物にたくさんの色を使うカミーユのアパルトマン。季節や気分によってリネンやオブジェを替えて楽しんでいるが、花とのスタイリングも絶対に欠かさない。「なかでも色のグラデーションが美しいチューリップやカーネーション、ケシの花が大好き」な彼女は、室内だけでなく、テラスも花で飾る。ここで景色や花を愛でながら、アペロや夕食を楽しむ穏やかな時間が、日々の暮らしに彩りを添える。
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葉の形の異なる植物を並べることで、空間にリズムを生み出す。
エレナ・パヤレス(アーティスト)
50年代のチェストの中央にあるのは、エレナをモデルに描いた絵で義母からの贈り物。その周りに鉢物や石膏オブジェを飾る。photography: Mana Kikuta
グラフィックデザインの広告を多数手がけるエレナは、自宅のいたるところにアートと観葉植物を一緒に飾り、アーティスティックな空間を生み出している。植木鉢は、多肉植物から針葉樹まで、グリーンの色合いも葉の形もさまざま。それらをひとつの場所にランダムに並べることで生まれる、溌剌としたリズムが心地いい。
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モダンな空間に、静謐な佇まいのグリーンを加える。
コンスタンス・レイ(デザイナー)
ベランダにはレモンの木、室内には花の植木鉢を置いて、世話をするのを楽しみにしている。photography: Mariko Omura
機能的でありながらマニアック、それでいてすべて清潔であることをインテリアに求めるコンスタンス。家具やオブジェ類は蚤の市やリサイクルショップで見つけたものを愛用するが、家の中が古臭くなってしまわないよう、要所に植物を取り入れている。リビングには盆栽、キッチンの窓の内と外にもグリーンを置くが、たとえ花だろうと、控えめな色味のものを選ぶのが彼女らしい。周囲と調和し、和やかな印象を添えている。
大小の盆栽が置かれたリビングは、穏やかな空気を纏う。コンスタンスはこちらのソファで読書を楽しむ。photography: Mariko Omura
書棚に置かれたアート作品と一緒に、紫陽花のドライフラワーを一輪挿しで飾る。photography: Mariko Omura
試作品がたくさん置かれたアトリエには、主張し過ぎない白い花を。photography: Mariko Omura
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田舎の一軒家のように、緑に囲まれた暮らしを実現。
オードレー・ガリエ(コンセプトストア「Sept Cinq」共同創立者)
壁の下に隠れていたレンガをそのまま生かした一角が、内装のアクセントに。その周辺に、さまざまな鉢植えを集める。photography: Mariko Omura
理想は、子どもの頃に住んでいたような庭のある一軒家。だからアパルトマンに庭がない分、「家中に植木鉢を置き、ドライフラワーを飾り、花を買って、自然を室内に持ち込むことで、快適な雰囲気を作るようにしているの」とオードレー。観葉植物からブドウのような果実が成る木まで、緑のコレクションを徐々に増やしていき、ほんの少しのスペースにも植物を飾るようにした。おかげで、パリにいながらにして、緑豊かな田舎暮らし気分を味わえるように。
花柄の鉢は、アンソロポロジーのロンドン店で入手。鉢は大好きなブルー系のものが多い。photography: Mariko Omura
エマウスで見つけた鳥の額は、ブドウの植木鉢と並べて世界観を統一。旅先から持ち帰った花は、ドライフラワーにして、そのまま思い出に。photography: Mariko Omura
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穏やかな空気が流れるモノクロームの空間に、白い花を飾る。
マリ・キャロリーヌ・セルメール(バッグブランド「Claritone」デザイナー)
白い花が、モノクロームのインテリアに溶け込むかのよう。photography: Mariko Omura
白壁の空間に、モノクロームの家具とソフトな色合いのインテリアを集めた、落ち着きがありつつも温かみのあるマリ・キャロリーヌのアパルトマン。ヴィンテージが好きだけど、ダメージのある物よりは新品を好むだけあって、凛としつつクリーンな佇まいが印象的だ。そんな部屋には、白い花がよく似合う。さまざまな種類の花を飾れど、色を白に統一することで、エレガントなニュアンスが加わっている。
リビング脇のガラステーブルは、カフェブレイクする場。あえて背の高い胡蝶蘭を、テーブル中央に置いてアクセントに。photography: Mariko Omura
廊下に置かれた50年代の書き物机にも、季節の草花を飾ってほっとひと息をつけるように。photography: Mariko Omura
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リビングの壁に小さな棚を取り付けて、グリーンを飾る。
エルザ・プー(「Mapoésie」創立者・クリエイター)
鉢を置いている壁の小さな丸い棚はMoustache Parisで入手。両親が使っていた70年代の大きなソファは、濃いボルドーのカバーに取り替えた。photography: Mariko Omura
自身のブランドMapoésie(マポエジー)のクッションによる色彩のミキシングが魅力のエルザのリビングスペース。壁のグリーンの並べ方も、彼女独特のアレンジが利いている。「私、オーヴェルニュの自然に囲まれて育ったせいで、暮らしに植物が必要なの。この小さな鉢置き棚には、とても満足してるわ。というのも、この壁、いささか空っぽすぎたの。でも、飾りすぎにはしたくないので、この棚のおかげで良いバランスで埋めることができたわ」
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枯れることを受け入れた、花々の優美さにときめく。
マリオン・グロー(陶工)
"しおれた花"の詩的で普遍的な美しさに、マリオンは心惹かれる。photography: Julie Ansiau
「家をきれいに飾ろうとは意識していないの」と断言するマリオンが好むのは、自然がもたらすありのままの姿。さらに過ぎゆく時間への礼賛から、古いものが放つ魅力にも惹かれるという。だから家に飾るのはフレッシュな花ではない。「枯れることを受け入れた花の放つポエジーや優美さは満開のバラ以上」と讃えて、"しおれた花"を室内のあちこちに飾るが、そこには時を超越したものならではの美が宿る。
フレッシュな花を化学薬品で加工するドライフラワーとは差別化するべく、自然乾燥したものをあえて"しおれた花"と呼んでいる。
ダイニングテーブルにも素朴な花を直置きして装飾する。それだけで幸せな気持ちに。
*この記事は、madame FIGARO.jpの2016年9月~2024年10月の記事を再編集し、制作したものです。
editing: ERI ARIMOTO