グラン・トリアノン宮殿で、
18世紀にタイムトリップ。

　大村真理子の今週のPARIS

ヴェルサイユ宮殿がルイ14世によって建てられ、革命が起きるまでの18世紀。ルイ15世の寵姫だったポンパドール侯爵夫人、デュ・バリー伯爵夫人、ルイ16世妃マリー・アントワネット・・・彼女たちの豪奢を極めたドレスの数々が宮殿の床に衣擦れの音をたてた。堅苦しい宮廷に開花したファンタジー。ヨーロッパの宮廷から"エレガンスと洗練の極み！"と憧れの目で眺められ、真似されていたフランス宮廷のモードの魅力はすたれることなく。19世紀はもちろんのこと、現在に至るまでファッション界のすばらしいインスピレーション源となっている。　

左のドレスは19世紀半ば街着。他はすべて18世紀半ば。
©EPV/J-M Manaï, C Milet

男性の衣装、女性用小物はいずれも18世紀半ばの品。すべてガリエラ美術館所蔵の品。
©EPV/J-M Manaï, C Milet

10月9日まで、ヴェルサイユのグラン・トリアノン宮殿で開催中の『当世風の18世紀』展にでかけてみよう。鏡の間、后妃の間、礼拝堂の間など日頃はかつての王家の暮らしをしのぶ見学しかできない宮殿内の13部屋に、18世紀の服と20、21世紀のクリエイションをまるで合わせ鏡のように配置した展示をしている。キュレーターを務めたのは、パリ市ガリエラ美術館長オリヴィエ・サイヤールである。建築家になりたかったというクチュリエによる服を彫刻が並ぶブールデル美術館内に融合させ、すばらしい『グレ』展を春に手掛けた彼。ミュージアム・ピースに生命を吹き込む展示場所を選ぶ才能に脱帽だ。

上奥：展覧会のポスター。マリー・アントワネットのドレスのスカート部分はヴィヴィアン・ウエストウッドのドレスだ。上中、上：展示風景。現代のドレスか当時の衣装か、一瞬の判別が難しい。
©Versailles C Milet

クリスチャン・ディオールやピエール・バルマンによる18世紀の典型的装飾を施したクチュールドレス、18世紀の男性の衣装からインスパイアされたメゾン・マルタン・マルジェラ、ニコラ・ゲスキエールによるバレンシアガやコム デ ギャルソンのプレタ・ポルテ。小物もランバンのネックレスやナタリア・ブリリのバッグなどを含めた新旧ピースが展示されている。18・19世紀の家具調度品で飾られた会場内の展示を眺めるうち、いつしか当時の宮廷に紛れ込んだような気に・・・。

左上奥：ピエール・バルマン、1954年。©EPV/J-M Manaï, C Milet　上奥：ジャンポール・ゴルチエ、1998年。©Marcio MADEIRA - Zeppelin　右上奥：ヴィヴィアン・ウエストウッド、1991年。©EPV/J-M Manaï, C Milet　左上：ニコラ・ゲスキエールによるバレンシアガ、2006年。©Marcio MADEIRA - Zeppelin　上：オリヴィエ・ティスケンスによるロシャス、2006年。©EPV/J-M Manaï, C Milet　右上：クリスチャン・ディオール2007～8年。©Marcio MADEIRA - Zeppelin