ものづくりに触れる金沢の旅。#01 作り手と言葉を交わせる、情緒あふれる金沢の町家。
Travel 2018.10.18
北陸新幹線の開通以降、伝統と革新が共存する場所として国内外からますます熱い視線を集める金沢。なかでも工芸をはじめとする“ものづくり”は、ほかの都市にない成熟と発展がパワフルに進みつつある。この短期連載では、周辺のエリアを含めて独自の進化を遂げる“ものづくりの街”金沢の魅力を、4つの切り口から紹介したい。
第1回は、リノベーションした町家にアトリエ兼ショップを構える作り手たちにフォーカス。藩政時代から1950年までに建築された町家は、まさに金沢の財産。近年ではリノベーションや町家にまつわるイベントも活発だ。歴史ある風情が楽しめて、作り手本人から話を聞くことができる町家のアトリエ。今回は単なるショップ巡りに留まらない、金沢ならではの旅体験がかなう3軒を紹介する。
sayuu(サユウ)
店内に入って手前がショップ、奥がアトリエスペース。
彫金師の竹俣勇壱さんが営む「sayuu(サユウ)」。金沢屈指の人気スポット、ひがし茶屋街のなかにある町家を改装したアトリエ兼ショップだ。オーダーメイドジュエリーとカトラリーのほか、自身がセレクトしたアンティークやうつわも扱う。
生まれ育った金沢を拠点に活動する竹俣さん。金沢市内にもう1軒、アトリエ兼ショップの「KiKU(キク)」を構え、両店舗を行き来している。
ジュエリーの制作からキャリアをスタートし、カトラリーや茶道具から移動できる「モバイル茶室」までを手がける竹俣さん。「生活全般について、どこまで金工で作ることができるかが今後のテーマ。この近くに来年『tayo(タヨウ)』という新しいショップをオープンする予定です。ここでは、ドアノブなど暮らしにまつわるあらゆる要望に応えたいと思っています」。こうして作り手の最新トピックスを本人から直接聞くことができるのも、アトリエ兼ショップならではの楽しみだ。
手作業から生まれる鍛金のカトラリーは竹俣さんの代表作のひとつ。新潟県・燕三条の田三金属、デザイナーの猿山修さんとの共作による「工業と工芸を融合させた」カトラリーシリーズ「ryo」も人気。
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金澤町家職人工房 東山
1897年以前に建てられたという、切妻屋根と平入格子の町家を改装。
街を挙げて町家を活かす試みを積極的に行っている金沢。この工房もそのひとつで、金沢市のバックアップのもと、使われていなかった町家をアトリエ兼ギャラリーとして若手の工芸作家に貸し出している。
2階の作業場で原綿を糸へと紡ぐ染織作家の弘田朋実さん。1階では弘田さんのブランド「Be clothed blue」のアクセサリーも購入できる。
現在の借り主は染織作家1名、陶芸家2名。1階の半分がショップ兼ギャラリー、1階の半分と2階が作業スペースと事務所。無料で入場・見学できるほか、不定期でワークショップなども開催。“もの”がうまれる過程を間近で体感できるスポットだ。
取材時、1階で作業をしていたのは九谷焼の赤絵細描を軸に活動する陶芸家、吉田純鼓さん。このほか、九谷焼作家の山田裕子さんが工房を借りている。
石川県金沢市東山2-1-21
tel:076-252-5101
営)13時〜18時(月、木) 10時〜13時(金) 11時〜18時(土、日、祝)
休)火、水
http://kanazawacraft.jp/craftsindexmap/shop/detail.php?code=C1000118
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苔と緑 HISOCA(ヒソカ)
以前は酒屋だったという築150年の町家をリノベーション。
苔の専門店「苔と縁 HISOCA(ヒソカ)」はグラフィックデザインを本業とする勘村洋和さんが金曜と土曜だけオープンするショップ兼アトリエ。店内には購入しやすい小さな苔玉から鉢植え、陶芸家とコラボレーションした大きな作品までが揃い、さながらギャラリーのよう。
さまざまなサイズや形状が揃う苔テラリウム。
なかでもユニークなのは、人間や動物のミニチュアを入れ、苔を草原や森に見立てた苔テラリウム。この場所のほか、金沢市内のさまざまな会場で苔テラリウム作りのワークショップを不定期で開催しているので、旅の思い出にトライしてみるのもおすすめ。
“苔”初心者の質問にも気さくに答えてくれる勘村さん。ショップの奥で本業のグラフィックデザインの仕事もされているそう。
●本記事内で紹介した店舗について、掲載時の営業時間や休業日などは掲載後に変更される場合があります。最新情報は各店舗にお問い合わせください。
photos:TOMOKO OSADA, réalisation:NAOKO MONZEN