【ブリュッセル街歩き 3】壁画、ブロカント、モード、ホテル。

Travel 2019.01.20

ぶらぶら歩きが楽しい街。グラン・プラスの見学を終えたら、小便小僧(マヌカン・ピス) に会いにいってみよう。身の丈55センチちょっとながら、しょっちゅうコスチュームを着替える衣装持ちの彼は、おそらくブリュッセルでいちばんの有名人。見る価値があるかと問われる像だけど、ワッフルを食べるのと同じ観光気分で 世界中から集まってくる観光客たちは像の前でセルフィーを取って大満足している。

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ブリュッセルのちびセレブ、小便小僧。

B.D.壁画

途中、Etuve通りでベルギーの20世紀のヒーローであるタンタンの壁画を見上げるのを忘れないように。B.D.(バンド・デシネ)の街、ブリュッセル。市の許可のもと、街のあちこちの壁にタンタンのみならず日本で有名無名のヒーロー、ヒロインたちが描かれている。1990年代から始まった動きで、現在60カ所くらいB.D.壁画があるという。市民から壁の提供があれば、まだまだ増えるようだ。インターネットで事前に情報を入手してB.D.を追いかけることもできるけど、歩いていて偶然に出合うのも悪くない。なお中心からは少し外れた場所になるが、漫画博物館というのもある。ヴィクトール・オルタが設計した建物なので、B.D.だけでなく建築ファンもやってくる名所だ。

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ブリュッセルの街を歩いていると、突然現れるB.D.壁画。滞在中、いくつに出会えるか……。

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蚤の市・ブロカント

ブロカントでの掘り出し物を期待する旅なら、ブリュッセルへは週末に行こう。Place du Grand Sablon(グラン・サブロン広場)のブロカントが有名だ。週末には行けない、という場合……たとえば、Place du Jeu de Balle(ジュ・ドゥ・バル広場)では毎朝、蚤の市が開催されている。誰が買うのだろう?と思うようながらくたが多いけれど、そんな山の中に何か見つけられるかもしれない。あるいはジュ・ドゥ・バル広場へ通じる、ブロカントや骨董店が並ぶ長いBlaes通りを歩いて満足するか……。

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ジュ・ドゥ・バル広場のがらくた市。ある平日の午前9時の様子。

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旅の思い出探し。じっくり時間をかけて選ぶか、ひと目惚れの出会いを期待するか……。

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広場の周囲にはカフェやヴィンテージ・ショップもある。

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長いBlaes通り。114番地で、ちょっとひと息。

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毎日8時から営業しているL’Aubette。サラダやキッシュなど、ランチもとれる。

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Blaes通りに並ぶブロカントや骨董店。まずはウインドウで品定めを。

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デザイン系のショップもいくつか。

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コレクターが喜びそうなアイテムであふれるウインドウは、Blaes通り125番地のブロカント。

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店内の上階。1階にはジュエリーのコーナーもある。

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モードとレース

宗教画からシュールなマグリットまで芸術の傑作が待つ美術館は、街のサイズの割にはとても多い。グラン・プラスやワッフルで有名なダンドワのティールームからも遠くないところには、レースの街らしく衣装とレースの美術館もある。複数フロアには分かれているものの、さほど広い美術館ではないので、ちょっと寄ってみては?

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地上階、エントランスの右奥にレースの部屋がある。17世紀に始まったベルギーレースの歴史を辿りながら、見てうっとりしていただけのレースのテクニックも学べてしまう作りだ。絵画の中に登場するレースを説明するというのも、わかりやすくて良いアイデア。ボビンと針によるベルギーレースはヨーロッパ各国に輸出され、18世紀に最盛期を迎える。19世紀になって手作業ではなく工業生産のレースの時代が到来し、第一次大戦後、手作業によるベルギーレースは完全に姿を消したそうだ。

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拡大鏡で細部までじっくりと見ることができる。

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展示より。ボビンとニードルによる1850年頃の繊細&ゴージャスなレース。

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ミニチュア・ドールやレースのキャビネ・ドゥ・キュリオジテなど、凝った展示で来場者の興味をひく。

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時代ごとに分かれたレースの引き出し。ロマン派時代(1820〜1840年)のレースはやっぱりロマンティック!

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18世紀の終わりまで、男性もレースを身につけていた。

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ガラのスカートと呼ばれた19世紀のレースを重ねたスカートを美術館では複数点所蔵している。

3月31日まで開催されている特別展は、『Back Side, fashion from behind 』。モードな後ろ姿の物語である。美術館の所蔵品だけでなく、展覧会のコラボレーターであるパリのガリエラ・モード美術館の所蔵品から、そして著名メゾンのアーカイブから選ばれた18世紀からいまにいたるまでの80点以上の服で展示は構成されている。自分の目が届かない身体の部分だけど、ファッション界は放っておかない後ろ側。スキャパレリ、クリストバル・バレンシアガ、アズディーン・アライア、マルタン・マルジェラ、リック・オウエンス……17世紀の宮廷着もあるけれど、展覧会の目玉はゴールドのスパンコールで覆われたシャネルの1931年のドレス。女優グロリア・スワンソンがオーダーしたものらしい。

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1939年のマドレーヌ・ヴィオネによるオートクチュールのキュロット・ドレス。ドレスの前と後ろをじっくり鑑賞できるよう、鏡で囲まれている。

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狂乱の20年代。背中が大きく開いたデコラティブなドレスでチャールストン!

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バレンシアガなどのオートクチュールのドレスは、背中まで美しい。

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第一次大戦後、日焼けした肌が美しいとされるようになり、水着で背中を露出するようになった女性たち。1930年代、ベアバックの水着が当たり前になるが、街着のベアバックは1960年代になってからだ。

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ジャン=ポール・ゴルチエの2011〜12年秋冬クチュールコレクションより、トレンチ・コート・ドレスとスカート。

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トム・フォード時代のグッチやマルタン・マルジェラも展示。

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背中にも遊びゴコロいっぱいの、スキャパレリのドレス(2015年春夏クチュールコレクションより)。その左はベルギーのスター・サッカー選手エデン・アザールのユニフォーム。背中のメッセージのコーナーでは、このようにメンズも展示している。

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展覧会を締めくくる逸品は、ベルギー王室の所蔵品から。1926年にベルギーのアストリッド王女(1905〜1935)が結婚式で着たシルク・サテンのコート。なお、トレーンの裾持ちはベルギーでは女性だけに許されているそうだ。

会場ではジャンルー・シーフ(1933〜2000)の写真も「背中への視線」のテーマで展示。ノスタルジーを感じるからと女性の身体の中でもとりわけ後ろ半身を好んだ彼は、1960〜90年代、背中を狙ったモード写真を多く残している。何かのインタビューで、「背中は過去に向いていて、不確かな未来を心配していない」と語った。

なおこの展覧会は2019年7月〜11月にかけて、パリのブールデル美術館での開催が予定されている。場所柄、ブールデルの彫刻の背中との対比という展示がみられるらしい。

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ジャンルー・シーフによる女性の背中、背中……どこかで目にしたことがある写真ばかり。

Musée Mode & Dentelle
Rue de la Violette 12
1000 Bruxelles
開)10:00〜17:00
休)月
料金:8ユーロ(第一日曜は無料)
http://www.fashionandlacemuseum.brussels/en

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ホテル

最後にホテルの話を。ブリュッセルの中央駅から北西方面に歩いて行くと、10分もかからず名所グラン・プラスに着く。駅の南東部には複数の美術館が控えている。駅に近いホテルなら、市内観光にとても便利ということになる。

4つ星のプチ・ホテルをひとつ紹介しよう。Le Dixseptième(ル・ディセッティエム)は、駅にほぼ直結しているマドレーヌ通りにある。駅を出て2分とかからない立地は、まず第一の魅力。1695年建築の建物で、それゆえにホテルに17世紀という名前がつけられているのだ。彫刻をほどこした見事な木の階段を始め、歴史はホテル内のあちこちで感じられるものの、設備はとても近代的でバスルームも機能的で清潔である。シックなロビーも暖炉のあるアットホームなサロンも、ベルギービールを片手にぼんやりとした時間を過ごしたくなる空間だ。慌ただしい滞在では、ホテルの利点を満喫しきれずに口惜しい思いをするかもしれない。

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駅からの坂道の途中にあるル・ディセッティエム。ブリュッセルがルイ14世の指示による爆撃を受けた1695年に、この建物も被害を被ったが同年にすぐに修復されたそうだ。

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通りに面した扉から入ると、長い通路が。その奥に控えめにフロントデスクがある。

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通路に沿って縦長のロビーがある。クラシックで落ち着いた雰囲気の中で、飲み物をとることもできる。

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クラシックな朝食室。

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客室例。ガーデン・スタンダード。部屋にはミニバーも備えられているが、価格がけっこう高めの設定なのが難だ。

Hotel le Dixseptième
25, rue de la Madeleine
1000 Bruxelles
tel:+32 2 517 17 17
http://www.ledixseptieme.be

réalisation:MARIKO OMURA

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