坂茂建築とアートが出合う、体感型ホテルが軽井沢にオープン。
Travel 2019.07.08
ホテルやレストランなどが続々とオープンしてさらに活気づく軽井沢に、新たな隠れ家ホテル「ししいわハウス」が誕生した。
“建築家にとってのノーベル賞”ともいえる、プリツカー賞を受賞したことで知られる建築家の坂茂(バン シゲル)が設計した「ししいわハウス」は、千ヶ滝エリアの美しい自然の中に佇む、全10室のラグジュアリーなスモールリゾート施設。木造2階建ての建物が、もともとあった森の木々に沿うように曲線状に設計され、木々の間から見え隠れする波状の屋根が印象的だ。
到着すると、まず国内最大級の木枠のガラス扉を抜けてライブラリーへ。レセプションエリアでチェックインを済ませて、客室に向かう。
共用部や客室など、館内に飾られたアートは、具体美術のパイオニアである吉原治良をはじめ、ギュンター・フェルク、杉本博司といった錚々たる作家の作品。オーナーのコレクションから、このホテルの建築美に合わせて選んだのだという。
建物の中心にあるのは、広いリビングダイニングを思わせるパブリックスペースのグランドルーム。ここから3つのクラスターへと通じており、それぞれのクラスターには3、4つの客室と共用のリビングダイニング&キッチンがある。これが「ししいわハウス」の最大の特徴だ。
このセミプライベートな空間で、一緒に訪れた家族や友人、あるいは、たまたま居合わせた滞在者と、時間や空間をシェアすることによって、これまでのホテルとはまったく違うリゾート滞在を体験できる。
それぞれの客室は、紙管を使った建築で知られる坂の設計らしく、シンプルながらウッディで温かみあるインテリアで仕上げられている。ベッドや椅子などの家具から浴室のアメニティカート、ライティングデスクの上のペーパーホルダーまで、坂がこのホテルのためにデザインしたものであるというからなんとも贅沢だ。
世界で初めて水を守るために生まれたというドイツ発エココスメ「Stop the Water While Using me」など、アメニティは自然に優しいものを揃える。ペットボトルのミネラルウォーターの代わりに、天然水が入った木村硝子製のカラフとグラスが置かれるなど、細部まで環境配慮に対するこだわりが詰まっている。
建築そのものの魅力もさることながら、滞在することによってこのホテルのこだわりを発見し触発される。「ししいわハウス」は、いま軽井沢で訪れるべき体験型のホテルである。
réalisation:ATSUKO TATSUTA