まだ見ぬ台湾。 碧が美しい、台湾・花蓮(ファリィエン)の絶景に包まれて。

Travel 2019.10.22

3000メートル級の山々が連なる海岸山脈と、どこまでも続く海岸線の対比がダイナミックな花蓮県。台湾を代表する絶景のひとつ、太魯閣国家公園で仙境の趣に浸り、リノベで活気づく麓の街を散策しよう。


花蓮

-Hualian-

台湾東部の中央、太平洋に面するエリアに、「花蓮」という美しい名前を持つ県がある。面積は台湾の県の中で最大だがその9割近くが山間部という、台湾を代表する山岳地帯だ。3000メートル級の高山が連なる中央山脈、コバルトブルーに輝く太平洋と荒波が侵食した大理石の絶壁が織りなす清水断崖、湖面を照らすホタルで知られる鯉魚譚(リーユイタン)など、花蓮では台湾という島の原初ともいえる、自然が育んだドラマティックな風景に出合える。

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台湾八景のひとつに数えられる清水断崖。1億年以上前に起こった地殻変動によって生まれたものだ。

なかでも太魯閣国家公園は、台湾人なら誰しも、人生で一度は行ってみたいと願う聖地。太魯閣は原住民タロコ族の名前に由来し、彼らの言葉で「連なる峰」を意味するという。山岳民族であるタロコ族は長くこの地に暮らし、一部のエリアを部族の聖域として固有の自然や生態系を守ってきた。

生命力に満ちあふれた聖地。

数百万年の大地変動のリズムを刻む、天高くそびえる大理石の絶壁と、立霧渓(リーウーシー)の急流が削った深い渓谷……。これらを間近に見られるのが、公園内に整備されたいくつもの遊歩道。全長4.5キロメートルの砂卡礑(シャカーダン)は、タロコ族が厳しく入山を規制していたこともあり、かつては「神秘谷」と呼ばれていたという。太古の時代に形成された大理石の岩肌を背景に、トルコブルーの渓流や色鮮やかな熱帯雨林の植物、台湾固有種を含むさまざまな野鳥が生き生きと色を添えるさまは、息をのむほど神秘的。原住民が守り抜く台湾の桃源郷では、大地創造をつかさどる生命力とあふれるような大地のエネルギーを感じられるはずだ。

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砂卡礑遊歩道からは一年中、透き通ったブルーの渓流を眺めることができる。野鳥や動物、亜熱帯植物の観察にもうってつけだ。

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砂卡礑渓添いに、整備された遊歩道が続く砂卡礑遊歩道。

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太魯閣国家公園の入口からおよそ19㎞、観光客の折り返し地点、天祥エリアに位置する祥徳寺。

太魯閣国家園公(タロコグォジャーゴンユェン)
Taroko Guojia Gongyuan

花蓮縣秀林鄉富世村富世291號(ビジターセンター) 
tel:03-862-1100
営)8時30分~17時
無休
入園無料
カード不可
www.taroko.gov.tw
アクセス:花蓮駅から車で約40分、新城駅から車で約10分

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新城(シンチェン)
Xincheng

リノベーションで活気づく、国立公園の玄関口。

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街のランドマークはツタに覆われたカトリック教会、新城天主堂。ここにはもともと日本の神社が置かれていた。

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かつて砂金採りに沸いた新城も、いまは長閑な地方都市。

町の歴史を伝える、日本統治時代の写真館。

新城照相館

日本統治時代に建てられた古い写真館を、土産物店として再利用。当時の文化を、太魯閣を訪れる若い世代に伝えたいと、町のボランティアが交代で店番に当たっている。品物として扱っているのは、レッドキヌアや仙草など、新城のプロモーションになりそうな地元農産物の加工品が中心。店内では豆花やローゼルティー、紅烏龍茶もいただける。隣接する写真スタジオも必見。

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写真館というだけあり古い写真が展示されている。神風特攻隊の出撃前日に撮影したという軍服に身を包んだ若者のポートレートも。

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当時の佇まいがそのままに。

新城照相館(シンツェンザオシャングァン)
Xincheng Zhaoxiang Guan

花蓮縣新城郷新城村博愛路18號 
tel:0982-025678
営)9時~16時
休)月~木
※不定休あり 
カード不可
www.facebook.com/hualienstory
アクセス:新城駅から徒歩約15分

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新城いち有名な名物レモンジュース。

佳興冰果店

「新城といえばレモンジュース!」といわれる有名店がこちら。冷蔵庫のない時代、ここには氷屋があったのだが、それを引き継ぐ形で30年前、現在のオーナーがかき氷とレモンジュースの店をスタートした。おいしさの秘訣は、カットしたレモンを皮ごと粉砕してジュースに仕立てていること。甘味と酸味、ほろ苦さのバランスが絶妙で、ついお代わりしたくなる。

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糖度の高い屏東県のレモンだけを使っている。名物の「檸檬汁」(小)55元

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現在は麺や炒飯などの食堂メニューも充実している。焼きそばが人気だとか。

佳興冰果店(ジャーシンビングォディエン)
Jiaxing Bing Guo Dian

花蓮縣新城郷新城村博愛路22號
tel:03-861-1888
営)9時~16時(食事)、8時~17時(ジュース販売)
休)水(食事のみ)
カード不可
www.facebook.com/jiashinglemon
www.lemonjuice.com.tw
アクセス:新城駅から徒歩約15分

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唯一のかき氷店は、甘さ控えめ、大人の味わい。

好好吃食堂

「練習曲書店」のオーナーの妻が手がける、かき氷専門店。祖母が地元で昔ながらのかき氷屋を営んでいたという高雄出身のルルさんは、いつか新城にかき氷店を作るのが夢だったそう。夫婦でセルフリノベしたという店舗では、小豆や緑豆、ローゼルなど4種のフレーバーのかき氷と、オーガニックの米粉で作った焼き菓子を2種、販売している。

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隣にはカフェスペースも。かき氷のメニューは小豆、緑豆、ローゼル、小豆&緑豆の4種のみ。

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ローゼル茶付き80元

好好吃食堂(ハオハオツースータン)
Haohaochi Shitang

花蓮縣新城郷新城村博愛路67號 
tel:0971-201995
営)13時30分~18時 
休)火
カード不可
www.facebook.com/好好吃食堂-1992628027699969
アクセス:新城駅から徒歩約15分

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住民たちが交流する、サロンのようなレンタル書店。

練習曲書店

放課後になると子どもたちがやってきて読書をしたり、大人が井戸端会議に花を咲かせたり。地元の人々が集う貸し本屋は、新城の“サードプレイス”としてサロンの役割を果たしている。絵本から原住民のアートブックや写真集まで、幅広いラインナップを取り揃えた本は、もちろんすべて貸し出し無料。店内ではコーヒーやローゼルのお茶をいただける。

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新城天主堂の横という絶好のロケーション。学校帰りの子どもたちで賑わっている。

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店内では地元で活動する工芸作家の作品やオリジナルのチョコレート(250元)なども販売。

練習曲書店(リェンシーチューシューディエン)
Lianxiqu Shudian

花蓮縣新城郷新城村信義路252號
tel:092-9102286
営)9時~18時
無休
カード不可 
www.facebook.com/練習曲書店-161176664486602
アクセス:新城駅から徒歩約15分

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太魯閣&新城から足を延ばして訪れたい!

時を忘れて水辺に憩う全5棟のプチリゾート。

阿德南斯行館

なだらかな山裾に囲まれた、花蓮県壽豐郷。静かな池のほとりに、全5棟という小さなリゾート民宿が佇んでいる。「四季折々の営みを見せる森と池の風景に和んでほしい」と話すのは、壽豐の自然に導かれ、台北からやってきたというオーナーのピーターとグレース夫妻。豪勢な朝食に使われる野菜やバスタブに浮かべるハーブは、夫婦が敷地内にある菜園で栽培したもの。心づくしのもてなしを堪能して。

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池を取り囲むように立つヴィラタイプの客室。水面の映り込みが幻想的だ。

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畑で摘んだばかりのハーブをバスタブに。

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自家製のヨーグルトや豆乳、自家菜園で収穫した野菜やバナナ、パパイア……。夫婦のこだわりいっぱいの朝食。

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水辺の風景を借景にしたリビング。広々としたバスルームと一続きに。

阿德南斯行館(アデナンスシングァン)
Adenansi Xing Guan

花蓮縣壽豐鄉豐山村魚塘路40號 
tel:0933・121662(10時~21時)
全5棟 全棟バスタブ付き
1棟平日9,900元、土日祝11,900元
朝食付き
カード:Ⓙ、Ⓜ、Ⓥ
www.ardennesvilla.com.tw
アクセス:花蓮駅から車で約40分。壽豐駅より無料送迎あり

●台湾鉄路台北駅から花蓮駅までプユマ号・タロコ号・自強号で約2時間。各種切符は2週間前からインターネットで予約可能。

●1台湾元*=約3円(2019年6月現在) *以下、略称「元」で表記。
●日本から電話をかける場合、台湾の国番号886の後、市外局番の0を取ってダイヤル。台湾内では掲載表記どおりにダイヤルしてください。
●地図内の「站」は鉄道の駅を意味します。
●クレジットカードは略記。Ⓐ=AMEX、Ⓓ=DINERS、Ⓙ=JCB、Ⓜ=MASTER、Ⓥ=VISA
●掲載店の営業時間、定休日、商品や料理の価格などは、取材時から変更になる可能性もあります。特に台湾の祝日や年末年始、2月の旧正月には、営業時間、定休日が変更になる可能性があります。ご了承ください。

※『フィガロジャポン』2019年8月号より抜粋

photos : AKEMI KUROSAKA, coordination : HIROKO FUJIKASHI, réalisation : RYOKO KURAISHI

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