川村明子のコペンハーゲン滞在記。#03 コペンハーゲンの古物屋街とカフェ、パン屋巡り。
Travel 2020.02.29
「パリ街歩き、おいしい寄り道」を連載中のパリ在住フードライター、川村明子がデンマークの首都コペンハーゲンへ。第3回では、旅の目的のひとつでもあった古物屋街と、そのエリアの素敵なカフェやパン屋さんを訪ねて。
DAY3
滞在3日目の早朝、私よりも先にコペンハーゲン入りしていたフードエッセイストの平野紗季子さんが旅立ち、ひとり旅が始まった。
この日は、今回の旅行で楽しみにしていたことのひとつ、古物屋街に行こうと考えていた。
私が持っている情報が古く、グーグルマップで検索しても出てこない店がほとんどだったから、実際どれくらい見て回れるかわからなかったのだが、ともかくその通りに行ってみるつもりだった。
初日にそのことをコペンハーゲン在住のマヤさんに話すと、古物屋街は知らないけれどそのエリアには可愛いカフェがいくつもある、と教えてくれた。
タイミングがあったら一緒に行きましょう、と言ってくれていたので連絡をしてみると、彼女オススメのカフェがあるらしい。そこで待ち合わせをすることになった。
目的のエリアには橋を渡っていく。
幅の広い川だなぁと思っていたら、iPhoneで写真を撮ると「ペブリンゲ湖」と位置情報が出てきた。湖だったらしい……
確かに水面が穏やかかもしれない。
初日に歩いた時に、橋の向こうの可愛らしい街並みを見て、渡るのを楽しみにしていたのだ。
パリでもよく橋の上で立ち止まる。コペンでも立ち止まった。
やっぱり、この街は車よりも自転車のほうがずっと多い。
チェックしていた古物屋街、「Ravnsborggade」は橋を渡ってすぐだった。
おそらく飲食店に取って代わられたところが何軒もあるのだろう、期待していたほどはなかったけれど、それでも7〜8軒は古物屋がありそうだ。
ただ、午前中に開けている店はないようで、どこもまだ閉まっていた。
夕方また来よう、と待ち合わせ場所にそのまま向かうことにする。
ホテルから約束のカフェまでは3.6km、歩いて44分と出ていた。
てくてく歩いていけば、身体も温まるはず!
コペンハーゲン大学のある角を曲がり、大きな病院を通過し、さらに直進して賑やかな一角を通り過ぎたところに、そのカフェ「At the Counter」はあった。
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工事の足場が組まれている状態でも、よさそうだな〜と思ったから、何もない状態だったら、すごくよさそうだ!と思ったに違いない。
そしてお店に入ったら、ほぼ満席なのに店内全体の話し声は落ち着いていて、あっという間にその空間を好きになった。
奥のカウンターには、なんとも魅力的なパンがいた。
ベーコンを巻き込んだものと、薄くスライスしたジャガイモを巻き込んだもの。
生地はクロワッサン生地だろうか。
この後に、これまたマヤさんイチオシのパン屋さんに行く予定だったから、パンは控えようと思っていたのだけれど、これじゃあ仕方ない。抗えない。
ドリップコーヒーとジャガイモパンと、カルダモンロールにした。
シナモンロールは大好きだ。そして、カルダモンロールはもっと好きなのだ。
パリでは、カルダモンロールを売る店は1軒しか知らない。
コペンハーゲンではポピュラーなようだ。
ジャガイモパンは、「これ考えた人、天才!」と言いたくなるおいしさだった。
椅子に座ったまま小躍りした。
昨日の「Lille Bakery」もおいしかったし、パンを楽しみに訪れるべきは、パリではなくてコペンハーゲンだな、と思った。
Randersgade 45, kld. tv, 2100 København Ø
tel:+45-2973-3035
営)7時30分~16時(水~金) 9時~16時(土、日)
休)月、火
www.instagram.com/atthecountercph
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おしゃべりが弾んであっという間に2時間が経った。
そろそろ次に向かおうと腰をあげ、お店を後に。
通りの向かいにある公園の置物が遠目に気になっていたのだけど、近寄ってみたらフルーツだった。
そしてその脇には、運び込まれたっぽいもみの木が並んでいた。
次に向かったのは、「Juno the Bakery」。
外まで人が並んでいる。
そしてここでは噂に聞いた、子どもが乗ったままバギーは外で待機、の現場を見た。
クリスマスの時期にだけ作られるというサフランで香りを付けたパン。
ここのパンもまた、パリまで連れて帰りたい風貌だ。
カルダモンロールは見つけたら買って、食べ比べすることにした。
シードがたくさん付いたハードパンも買って、袋を受け取ると、温かい。
こんなホカホカのが食べられる機会なんてそうあることじゃない!と遠慮するマヤさんと半分ずつにして、サフラン風味のパンをお店の前で頬張ると……
今度は、思わず飛び跳ねてしまうおいしさだった。
このパンには驚いた。蒸し焼きしたような食感で、そしてサフランがとても合う。
マヤさんに教えてもらわなかったら買わなかったかもしれないから、一緒に来られて、本当に大感謝だ。
Århusgade 48, 2100 København Ø
tel:なし
営)7時30分~18時(水~土) 8時~15時(日)
休)月、火
www.instagram.com/juno_the_bakery
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パンを食べ歩きしつつ、古物屋街のほうへ散歩がてら戻ることにした。
マヤさんが気になっているワインバーがあるらしい。
大通りを歩いてもつまらないね、と大通りと平行に走っている横道に入ってみると、カラフルな家並みが続いていた。
どこも自転車は外に停められている。
ワインバー「Pompette」の近くまで行くと、すぐ隣に行ってみたいと思っていたコーヒーショップを発見。
後で寄ろう。
どこも店構えが魅力的だ。
フェンネルシードの盛られたブッラータのサラダとワインを取って、しばしまたおしゃべり。
サフラン入りのパンもそうだけれど、なじみのないおいしいスパイスの利かせ方に出合うと、口の中で味覚を司る何者かが、ピカーンと目を開いて喜んでいるような感じになる。
北欧は海での交易が盛んだったろうから、それでスパイスも食文化に浸透しているのかもしれないなぁ。
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用事のあるマヤさんと別れ、外が暗くなってきたのでお店が閉まらないうちに、古物屋さんへ行くことにした。
最初に気になったお店に入ると、ここが品揃え豊富だった。
フランスものの陶器もちらほら。ドイツ製も少なくない。かなり数のある中から、3枚だけ、小さめのスープ皿を買うことにした。
お皿を包んでもらっている時に、店主らしいマダムに、どこから来たのか聞かれたので、パリと答えると、フランス語で話しかけられた。ご主人がフランス人だったそうで、お嬢さんはいまもパリに住んでいるという。
そのちょっとした会話で気持ちが和んで、もう今日はこれで十分だな、という気になった。
ほかのお店も、覗くだけは覗いて、でももう心はときめかなくて、コーヒーを飲みに行こうと、さっきチェックしていた店「Andersen & Maillard」に向かった。
コーヒーと、この日最後に、ちょっと小さめのヴィエノワズリーを買ってしばし休憩し、また橋を渡って、ホテルに帰った。
Nørrebrogade 62, 2200 København N
tel:+45-4267-2100
営)7時〜19時
無休
www.instagram.com/andersenmaillard
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川村明子の連載「パリ街歩き、おいしい寄り道」
photos et texte : AKIKO KAWAMURA