いくつ知ってる? 世界のB級ご当地グルメ10選。
Travel 2021.11.09
文/ディラン・テュラス(オンライン旅行ガイドAtlasObscura.com運営者)、セシリー・ウォン(小説家)
photo: BHOFACK2/iStock
魚の頭が突き出したパイ、真ん中をくりぬいてカレーを詰め込んだ食パン、トルティーヤに巻いたカメムシ......。現地で親しまれる風変わりな料理たち。
コロナ禍がひと段落してきたとはいえ、海外旅行の全面再開にはまだ少し時間がかかりそうだ。でも、だからこそ「次の旅行」に思いを馳せるのも楽しいかもしれない。ここでは都会の各国料理のレストランでは出合えない、一風変わったご当地料理を新著『ガストロ・オブスキュラ:食の冒険ガイド』より紹介しよう。
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01. ジェロー・サラダ
ミネソタ州(アメリカ)
photo: BHOFACK2/iStock
アメリカのハートランドと呼ばれる中西部ミネソタ州。この地の名物料理「ジェロー・サラダ」は、粉末ゼラチンを溶かして好みの具材と一緒にリング型に流し入れ、冷蔵庫で固めたもの。果物を入れてデザートにしていいし、コーンやチキンを入れてディナーの主役にしてもいい。華やかな一品が簡単かつ安価にできるとあって、主婦の間で人気の料理となり、故郷の味になっている。
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02. ランザ
ネブラスカ州(アメリカ)
photo: BHOFACK2/iStock
ネブラスカ州のロシア系やドイツ系の移民の間で人気になった「ランザ」は、手のひらサイズの具だくさんパン。1949年に登場した専門店は、たちまち大人気となり、いまや85店舗以上を構えるチェーンに。地元では寒いスタジアムでアメフトの試合を見ながら、ほかほかのランザを頬張るのが乙な食べ方なのだとか。
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03. シナモン風味カメムシ
タスコ(メキシコ)
photo: EPANTHA/iStock
かつて銀山として栄えた街タスコ。地元の人々の間では、メキシコ版のお盆である「死者の日(11月1日)」の次の月曜日に、近隣原産のカメムシの一種フミレスを食べるのが習わしになっている。まだ脚をばたつかせている間に、ライムをたっぷり搾ってトルティーヤに巻いてかぶりつくのが正しい食べ方だというけれど、旅行者がトライするにはちょっとハードルが高いかも。
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04. ラッピー・パイ
ノバスコシア州(カナダ)
photo: ALLEKO/iStock
アカディア(フランス系カナダ人)の伝統料理「ラッピー・パイ」を作るためには、まず大量のジャガイモの皮をむき、すりおろし、少量ずつ水分を絞る。それを熱々のチキンブイヨンスープに浸して、キャセロール鍋に敷き、チキンの細切りをのせ、さらにジャガイモと、塩漬け豚肉とバターをかぶせて、オーブンで表面がカリッとするまで焼く。かなりの重労働だが、それがこの料理のポイント。ノバスコシア州でコミュニティが減っているアカディア人の集まる機会にもなっている。
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05. バニー・チャウ
南アフリカ
photo: MARENCARUSO/Getty Images
分厚く切った食パンの真ん中をくり抜き、カレーをたっぷり詰めた料理バニー・チャウの歴史は、南アフリカのアパルトヘイト政策時代にさかのぼる。黒人だけでなく、インド系もレストランを利用できなかったから、窓越しに提供できる「テイクアウト料理」として発達したのだ。当時は安くおなかを満たすための料理だったが、いまはわざわざ食べに行く料理として愛されている。
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06. スターゲイジー・パイ
マウゼル(イギリス)
photo: Krista
イギリス南西部の漁村マウゼルでは、毎年12月23日は「トム・バーコックス・イブ」が祝われる。16世紀、クリスマス前だというのに嵐で漁に出られず、村人が餓死寸前だったとき、トム・バーコックという男が荒海に乗り出して魚を取ってきた伝説を祝福する日だ。パイ生地に魚の頭を突き立てて、魚たちが星空を見上げているようにしたスターゲイジー・パイは、この日の食卓に欠かせない一品だ。
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07. タンジア
マラケシュ(モロッコ)
photo: Mohamed IMZILEN-iStock
壺の名前でもあるタンジア料理は、料理を知らない独身男でもできるオトコの料理として知られる。肉屋で肉と香辛料を入れてもらって密封し、モロッコ版銭湯ハマムのスタッフに渡すと、風呂を温める釜の灰に入れておいてくれる。すると壺の中身がゆっくりと煮込まれて、半日後に引き取ったときには、肉はとろけるような柔らかさに。いまではマラケシュの名物料理として、レストランでも提供されている。
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08. オスマン帝国の宮廷料理
イスタンブール(トルコ)
photo:YORAY LIBERMAN/Getty Images
レストラン、アシターネの目玉は、オスマン帝国時代(1299~1922年)の宮廷料理。だが、その再現は容易ではなかった。当時は料理人がレシピを書き留めることは禁止されていたし、まれに残っている記録も古いトルコ語で書かれていた。店が研究者を雇って、祝宴の記録や宮殿の厨房の仕入れ記録、そして旅行記を基に再現した料理は、極上の体験を約束してくれるはずだ。
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09. チャップゴーメイ
ペナン州(マレーシア)
photo: ZAHIM MOHDーNURPHOTO/Getty Images
リゾート地としても知られるペナンでは、旧正月15日目に「チャップゴーメイ」というイベントが開かれる。独身女性が良き伴侶に巡り合えることを祈って、豊かさを意味するオレンジを水に投げ込むというものだ。実際に誰かに出会えるかどうかは、昔は文字どおり「神頼み」だったが、いまは女性たちがオレンジに自分の電話番号やソーシャルメディアのアカウントを書き込むようになったことから、誰かに(とりあえず)出会える確率はかなり上昇したらしい。
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10. スイカ運動会
チンチラ(オーストラリア)
photo:LIAM KIDSTONーNEWSPIX/Getty Images
「オーストラリアのスイカの首都」とも呼ばれる田舎町チンチラでは、2年に1度スイカ祭が開かれる。なかでも注目の種目はスイカ・スキー。出場者はスイカの皮のヘルメットと、スイカのブーツを履き、横一列になってロープにつかまる。その両端をボランティアが引っ張るのだが、つるつる滑る防水シートにスイカの障害物が置かれていて、バランスを維持するのは至難の業。笑いが絶えないイベントだ。