祭りや料理だけじゃない! 知られざる世界の無形文化遺産11
Travel 2022.02.20
文/メーガン・ガン
グローバル化が進む現代になっても、世界各地には地元で大切に受け継がれてきた多様で豊かな伝統文化がある。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「無形文化遺産」リストは、グローバル化が急速に進むなか、世界には多様な文化があること、またそれぞれの土地に伝わる慣習や知識、技術、芸術が現代世界にどのように息づいているかを教えてくれる。2021年にも数々の魅力的な無形文化遺産がリストに加わった。その一部を紹介しよう。
タイの伝統舞踊ノーラー。photo: MONTIRA AREEPONGTHUM/iStock
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01. アワフンの陶器づくり
ペルー
photo: MINISTRY OF CULTURE OF PERU
ペルー北部の先住民族アワフンはこの1000年間、動植物や地形、天体などに基づく精巧な幾何学デザインの陶器を作ることを通じて、自然界とつながってきた。とりわけ女性たちにとって、陶器作りは自己表現の手段でもある。年長の女性たちが若い世代に陶器作りの技術を教えることにより、民族の文化的価値観を伝えてきた。
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02. 聖体祭
パナマ
photo: MABELIN SANTOS/iStock
キリスト教のカトリック教会の伝統と、地元の文化的慣習、伝承が合わさった聖体祭のお祭り。バーレスクダンサー、劇団、ドラァグクイーン、聖職者が一緒になって祭りを盛り上げる。人々はカラフルな衣装と仮面で行進し、路上で踊ったり、互いの家を訪ねたりする。子供たちも自分の仮面を作ったり、踊りの教室に通ったりして、祭りを楽しむ。
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03. チェブジェン
セネガル
photo: ALLEKO/iStock
チェブジェンとは、セネガルの漁村で母親から娘へと伝えられてきた魚とコメと野菜の料理のこと。料理のレシピだけでなく、さまざまな文化的慣習も世代を超えて受け継がれてきた。例えば、食べるときは左手でボウルを持たなくてはならず、コメを1粒たりとも床に落としてはならないとされている。料理の中身は、その日のイベントをどのくらい大切だと思っているか、その日の客のことがどのくらい好きかによって変わる。
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04. トゥブリダ
モロッコ
photo:DAREM BOUCHENTOUFー500PX/GETTY IMAGES
モロッコの馬術パフォーマンス、トゥブリダでは、何世紀にもわたり口伝えで脈々と受け継がれてきた伝統にのっとり、騎兵と軍馬の集団が昔の戦いで実践されていた戦い方を再現する。騎兵はその時代の衣装と装身具を身に着け、軍馬も伝統的なデザインの馬勒(ばろく)と鞍(くら)で着飾って登場する。
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05. ナミュールの竹馬騎馬戦
ベルギー
photo: LAURE PILLE
ベルギー南部に位置する都市ナミュールでは、15世紀初頭にルーツを持つ竹馬騎馬戦が今日も町の文化を象徴するイベントとして続けられている。試合はチーム対抗で行われ、伝統的な衣装を着て竹馬に乗った参加者たちが戦う。相手チームの全員を竹馬から落とせば勝ちだ。長い歴史を通じて男性しか参加が許されていなかったが、2018年から女性にも門戸が開放された。
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06. トリュフ狩り
イタリア
photo: CREATIV STUDIO HEINEMANN/GETTY IMAGES
イタリアの多くの村落では何世紀もの間、トリュフ狩りの技術が継承されてきた。トリュフ狩りには、高度な知識と技術が不可欠だ。まず、トリュフを見つけることが容易でない。これは、専門的な訓練を受けた犬の力を借りて行う。そして、土壌に関する深い知識を基に、トリュフが育つ環境を破壊しないように細心の注意を払って採取しなくてはならない。
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07. トルコのアラビア書道
トルコ
photo: MINISTRY OF CULTURE AND TOURISM
トルコには、「ハット」と呼ばれるアラビア書道の長い伝統がある。書家が伝統的な道具を使って、独特の書体でアラビア文字を描き上げる。これは情報伝達の手段であり、視覚芸術でもある。もともとはイスラム教の聖典コーランなどを書き写すために用いられていた。今日では、宗教的な文書やモスク(イスラム礼拝所)、公衆浴場などで見ることができる。
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08. バフシ
ウズベキスタン
photo: BORISBLIK/iStock
熟練の弁士が伝統的な弦楽器を片手に、地元に伝わる民話や伝説に基づく古い叙事詩を語り聞かせる語りの芸、バフシは、ウズベキスタンの大人にも子供にも愛されているパフォーマンスアートだ。取り上げられる物語のテーマは、愛と友情、郷土愛、絆など。弁士たちは、長大な叙事詩を全て完全に暗記し、何も見ずにそらんじなくてはならない。
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09. ドゥルガー・プージャの祭り
インド
photo: Rupak De Chowdhuri-REUTERS
ドゥルガー・プージャは、ヒンドゥー教の女神ドゥルガーを供養する10日間のお祭りだ。祭りの数カ月前から、人々はガンジス川の粘土を集めてドゥルガーの像を作り始める。そして、初日に女神像に目が描き入れられて、祭りが始まる。期間中は、職人が作品を展示したり、伝統的な太鼓の演奏が行われたりする。祭りの最後の日、粘土の女神像が川に沈められる。こうして、ドゥルガーが川に帰っていくのだ。
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10. ノーラー
タイ
photo: MONTIRA AREEPONGTHUM/iStock
タイ南部で500年以上の歴史を持つ舞踊。踊り子はテンポの速い音楽に合わせてアクロバチックな踊りを披露し、ブッダにまつわる物語や地元の伝承を踊りで表現する。カラフルで手の込んだ衣装に、見る者は息をのまずにいられない。
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11. カロリン諸島の航海術とカヌー作り
ミクロネシア連邦
photo: ERIC METZGAR
ミクロネシア連邦のカロリン諸島の人々は歴史を通じて、地元の木材で頑丈なカヌーを作り、海図や機器を用いず、卓越した航海術を駆使して長距離航海を行ってきたことで知られる。高度な航海技術により、この土地の人々は太平洋のさまざまな島に移り住んできた。環境の悪化などにより、近年はその伝統も廃れつつある。ユネスコはこれを「緊急に保護する必要のある無形文化遺産」と位置付けた。
text: Meghan Gunn