芸術作品に包まれて眠る、夢のような体験を 東京近郊! モダンアートを間近で味わえる話題の白井屋ホテル(群馬)
Travel 2022.09.15
エッシャーが描く“だまし絵”のように、エルリッヒの光のパイプと階段が交差する。この美しい異空間で食事やお茶を楽しむことができる。
何度でも滞在したくなるアートホテル。
金沢21世紀美術館の『スイミング・プール』や森美術館での個展 も記憶に新しいレアンドロ・エルリッヒ、ローレンス・ウィナーに リアム・ギリック、プロダクトデザイナーのジャスパー・モリソンに建築家のミケーレ・デ・ルッキ、そして日本からは杉本博司、 宮島達男、塩田千春、武田鉄平……。その参加アーティストの名前を見ると、ここがホテルであることを忘れてしまう。群馬県前橋市の地で約300年前に創業し、2008年に廃業した白井屋旅館。その歴史ある老舗旅館が再生したのは2020年12月のこと。藤本壮介が設計を手がけ、国内外で活躍する人気アーティ ストたちが作品を提供するアートホテルへと生まれ変わった。まずローレンス・ウィナーによるポップな看板がゲストをお出迎え。そしてフロントを通り抜け、共有スペースを少し歩くだけで、まるで美術館の中を散策しているような錯覚に陥る。4階まで届く広々とした吹き抜けには、エルリッヒが手がけた作品『ライティング・パイプス(Lighting Pipes)』の光が、建物の中を縫うように幻想的に広がる。全25室の客室にもアートが飾られており、中にはクリエイター自らが内装設計を手がけたというスペシャルルームもある。アートを堪能した後には、本格的なフィンランドサウナを楽しみ、ミシュラン2ツ星を獲得した東京・青山のフロリレージュのオーナーシェフ川手寛康が監修する料理に舌鼓。あっという間に時間が過ぎてしまい、1泊2日の滞在では足りないほど。すぐにまた訪れたくなる魅力が詰まっている。
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塩田千春のシルクスクリーンを飾った部屋。
アート作品は田中仁オーナー自らがセレクトしているとか。近年国内外で注目度が高まっている武田鉄平の『絵画のための絵画020』
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ローレンス・ウィナーのポップなタイポグラフィが目を引く外観。ホテルの清掃スタッフは、この作品をモチーフにした“つなぎ”を着用している。
フロリレージュ監修のメインダイニング。おっきりこみや鮎などを用いた“上州キュイジーヌ”を、地元出身のシェフ片山ひろが提供する。
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温かみのある杉材の床の空間の壁に張めぐされた宮島達男のネオン作品。
新設したグリーンタワーは、利根川の土手をイメージ。サウナルームが点在するほか、宮島達男の作品を展示した小屋もここにある。1階にはベーカリーやフルーツタルト専門店がある。
※『フィガロジャポン』2022年9月号より抜粋
photography: Yuka Uesawa