My Okinawa 黒島結菜、沖縄が教えてくれたこと。

Travel 2022.12.02

17歳で上京するまで沖縄の地で育った俳優・黒島結菜が、あらためて故郷を訪れた。ルーツを見つめる中で感じた、沖縄に対する想いと、いまの自分を築くものとは?

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ジャケット¥198,000、ドレス¥148,500、ブーツ¥151,800/以上ヌメロ ヴェントゥーノ(イザ)

「空港に着いた瞬間の匂いとか肌感とか……沖縄に来るとやっぱり安心するし、落ち着きますね」と黒島結菜は話し始めた。本島南部の糸満市で生まれ育ち、家族も親戚も沖縄に暮らす人がほとんど。

「東京ではいつも“時間”を意識していますが、沖縄に来るとあまり意識しないでいられるし、時間がゆっくり流れているような気がするんです」と話す顔も、リラックスして見える。地元での過ごし方はとても自然だ。

「公園で日向ぼっこしたり、犬(保護犬のシャディとコハダ)と海辺を散歩したり。海を見ると落ち着きますね。特に北部や離島の海は本当にきれいなので」

今回黒島が訪れたのは、今帰仁(なきじん)村にある赤墓ビーチ。那覇から車で北に約2時間と、中心地から離れているので人も少なく、泳いだり、のんびり過ごすには最適な場所だ。

「北に行けば行くほど、草木も海の色も、色濃くなっていく気がします」と、赤墓ビーチに立った瞬間、笑みがこぼれる。

「私にとって、海は“見るもの”で、入ったとしても足だけつけたり。でも今日は久々に入りたくなりました。プカプカ浮かんでるだけで最高に気持ちよかったです。きれいな海は癒やされますね」

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[ 今帰仁村 ]赤墓ビーチ|Akabaka Beach 沖縄県国頭郡今帰仁村諸志583
ドレス¥280,500/ステラ マッカートニー(ステラ マッカートニー カスタマーサービス)

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シンプルだからこそ難しい、沖縄料理の奥深さ。

黒島にとって故郷を感じさせるエッセンスは、豊かな自然だけではない。

「強い日差しを受けて育った濃い味の島野菜が好きです。自分の育った場所のものを食べると、自然のパワーがそのまま自分のエネルギーになる気がして」

同時に「いちばん日常を感じるのは沖縄そばですね!」と、黒島家お気に入りの店を教えてもらった。

「確か母から聞いて。おいしかったので、近くでロケがあった時にもまた来ちゃいました」と、本島南部の沖縄そば専門店、屋宜家へ。1952年に建てられたかーらやー(瓦家)の母屋を含めた歴史的な価値が認められ、2009年には登録有形文化財に。雰囲気のある店内では、ゆし豆腐やソーキをのせたシンプルなそばのほか、アーサ(アオサ)を練り込んだオリジナルの麺も人気だ。

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[ 八重瀬町 ]屋宜家|Yagiya 沖縄県島尻郡八重瀬町字大頓1172
tel:098-998-2774 営)11:00~15:15L.O. 休)火 ※祝日の場合は営業
www.ne.jp/asahi/to/yagiya

「沖縄そばとひと口に言っても、種類がいろいろあるんですよ。祖父母が石垣に住んでいるので、八重山そばをよく送ってもらうんですが、麺が細めで断面が丸いんです。出汁は、父が作ってくれます。高校時代は、学校に来るお弁当屋さんが“100円そば”というのを売っていて、おやつ感覚で食べていました」

黒島が主役を務めたNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」でも、沖縄そばは重要なメニューだった。ドラマの中では料理人の役を演じた黒島。

「そばもですが、沖縄料理ってシンプルで、だからこそ難しいんです。役作りでいろいろ学ばせていただきましたが、素材を生かす料理なので、材料を入れる順番など見えないところが重要で。普通の油でなくラードを使ったり。ドラマの披露宴のシーンでは、沖縄で育った私でも知らない宮廷料理が出てきたり、あらためて沖縄の食文化の深さを知りました」

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ドラマを通し、また外から沖縄を見つめることで新しい発見もあったようだ。

自身の出身地・沖縄を舞台に、家族を題材にしたドラマの主演を務めたことについて「運命を感じました」と真っすぐに語る黒島。いちばんに喜んでくれたのは家族だと言う。糸満にいる家族は「マイペースで、いつもべったりというわけではないけど仲がいいです。子どもの頃はよく、近所にある嘉手志川に水遊びに行きました」と思い出を話してくれた。嘉手志“川”という名称だが、南山城(グスク)跡の近くにある湧き水で、いまは住民の生活用水や農業用水として活用されている。夏は浮き輪を持った子どもたちで賑わう水遊び場だ。ここ数年でルールが変わって禁止になったものの、かつては釣りを楽しむご近所さんも多かったという。

「家族で毎年行っていて、ザリガニとか、グッピーを釣ったこともあるんですよ! この間、犬を連れて久々に嘉手志川に行ったら『こんなに小さかったっけ!?』と驚きました。でも水のきれいさは昔と変わらないですね」

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[ 糸満市 ]嘉手志川|Kadeshi Spring 沖縄県糸満市大里320

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島での暮らしは、自然との表裏一体。

17歳まで過ごした地元・糸満に加え、彼女には大切な場所がもうひとつある。それが石垣島だ。

「祖父母がいるのでよく遊びに行きます。仕事を早期退職して、畑をやっているんです。パイナップルとかサトウキビを栽培したり、ヤギも飼っています。祖父母からは本当に学ぶことが多くて。沖縄が厳しかった時代を知っているから、一日中働いていて、休んでいる姿を見たことがない。だけど同時に、とっても幸せそう。お金のためじゃなくて、好きなものを作って、好きなものを食べて……とってもシンプルな暮らしだからかな」

祖父母をはじめ、沖縄の人たちから学ぶものがたくさんある。

黒島自身も、島で畑作業をする生活に憧れている。

「祖父は生きること、自然のことなど、いろんなことを知ってるんです。『この貝で魚が釣れるよ』とか、戦後の暮らしの中で得た知識を教えてくれます。イノシシから畑を守るために祖父が狩猟免許を取ったので、仕掛けたワナの見回りについて行ったんです。私が行った時はワナにかかってなかったんですが、その後、写真を見せてくれて。イノシシも生きるか死ぬかの瀬戸際で必死だし、人間も危険。最後は解体して食べるんですが、まさに命と命のぶつかり合いですよね。祖父の話を聞くと、むしろ人間のほうが自然に生かされているんだなと感じます。そういった意味では、離島の暮らしは、自然との距離がより近い気がします」

自分の祖父母に限らず「沖縄の人には、逞しさを感じる」と黒島。

「さまざまな文化を受け入れてきた歴史がありますが、受け入れるだけじゃなく、ちゃんと自分たちのものにしています。アメリカ統治下でも、外国の人と上手に付き合ってきた人が多いと聞きます。その人たちの努力があるから、いまの沖縄、そしていまの文化があるんだなと」

そう先代への尊敬の気持ちを述べた。南国ならではのゆるやかな雰囲気と、そこに暮らす大らかな島んちゅたち。「沖縄にいる時の自分がいちばん“素”というか……自然なんですよね」と話す黒島結菜。いつでも帰ってこられる場所がある彼女だからこそ、都会での暮らしや仕事も、また頑張れるのかもしれない。

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ベスト¥90,200、スカート¥202,400、シューズ¥101,200/以上マルニ(マルニ ジャパン クライアントサービス) イヤーカフ¥28,600/オール ブルース(エドストローム オフィス)

Yuina Kuroshima
1997年生まれ、沖縄県糸満市出身。映画『カツベン!』(2019年)、『明け方の若者たち』(21年)など、映画、ドラマ等で活躍。22年、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」では料理人を目指し、沖縄から上京するヒロインを好演した。TBS金曜ドラマ「クロサギ」に出演中。
●問い合わせ先:
イザ 0120-135-015(フリーダイヤル)
ステラ マッカートニー カスタマーサービス tel:03-4579-6139
マルニ ジャパン クライアントサービス tel:0800-080-4502
エドストローム オフィス tel:03-6427-5901

*「フィガロジャポン」2022年12月号より抜粋

●掲載施設の開館・営業時間、閉館・定休日、価格、料理、商品などは、取材時から変更になる可能性があります。
●施設によって、別途サービス料や宿泊税、入湯税などがかかる場合があります。
●取材・撮影時はコロナ対策に十分配慮し、少人数で行っております。また、写真でマスクを外している場合がありますが、通常スタッフはマスク着用のうえ感染対策を行っております。

photography: Sodai Yokoyama styling: Nobuko Ito hair & makeup: Momiji Saito (eek)

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