アメリカの観光ガイドが「推奨しない」旅行先とは?
Travel 2024.02.23
アメリカの旅行ガイド会社のフォダーズは、NO LIST 2024、すなわち旅行先として避けたほうがいいと同社が考える場所のリストを発表した。
旅行ガイド会社が旅行を控えるように呼びかけるなんて矛盾しているように思えるが、事実は事実。アメリカの観光ガイド専門出版社のフォーダーズ社は2023年11月、NO LIST 2024、すなわち旅行先として避けるべき場所のリストを発表した。このリストは、旅行者一人ひとりに旅の仕方を再考してもらい、オーバーツーリズムや水の過剰消費、はたまたゴミ問題に悩む世界各地の文化的歴史的遺産を守りたいという意図で作成された。どんな場所が載っているのか紹介しよう。
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マスツーリズム
2023年7月、ユネスコはヴェネツィアを「危機遺産」指定を勧告した(訳註:その後同勧告は回避された)。ヴェネツィアがマスツーリズムの弊害に遭っているというのがその理由だ。観光客が押し寄せて「沈没」しかねないからこそ、NO LIST 2024に載ることとなった。「どんな交通手段も建造物や芸術作品、そして全般的な環境に影響を及ぼし、どれもがある程度のダメージを受けている。建物の基礎は様々な要因によって傷むが、とりわけモーターボートの往来によって引き起こされる波の弊害が大きい」と語るのはガイ・エリオット、『危機に瀕するヴェネツィア基金』のディレクターだ。同基金はこの街の遺産を保護することを目的としたチャリティ団体である。
ギリシャのアテネも同様の状況にある。今回のNO LISTに載った理由は、オーバーツーリズムと適切な公的対策の不在。この2つの要因がアクロポリスにダメージを与え、地域社会の伝統文化に影響を与えている。同様の問題は地球の反対側、日本の富士山にも存在する。日本の最高峰である富士山では巡礼に訪れる観光客が群がり、山を汚染するだけでなく、身を危険にさらしている。「観光客は、富士山の登山が危険でリスクのある行動だということを十分に認識しておらず、山頂に負荷をかける行為をしながら自らの生命を危険にさらしている」とフォーダーズはリスト入りの理由を説明した。
過剰消費
落書き、ゴミ、自然破壊等々。カリフォルニア州のサン・ガブリエルマウンテン国定公園の惨状だ。2014年にオバマ大統領によって保護地域に指定され、原則的に守られている。しかし、このオアシスは大量の観光客、監視体制の欠如、生態系に対する意識の欠如によって、危機に瀕している。
アメリカ大陸南部のチリでは、アタカマ砂漠が古着の捨て場として過剰に行き渡ったファストファッションの犠牲になっている。チリは南米最大の古着輸入国で、「主にアメリカ、ヨーロッパ、アジアから年間6万トンもの不要な衣類」を受け入れている。
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水質悪化
過剰消費の犠牲になったもうひとつの資源は、人間にとって不可欠な要素である水だ。インドのガンジス川の水質悪化は、周辺地域からだけでなく、豪華クルーズ船のせいでもある。かつて繁殖していたイルカが脅かされるほどだ。一方、北米では、世界最大の淡水湖であるスペリオル湖が被害を受けている。汚染が進むと藻類や望ましくない種の繁殖を招き、近隣の地域社会にダイレクトに影響を及ぼす。
最後にフォーダーズは、タイ湾に浮かぶのどかな風景の島、サムイ島の現状を憂える。ここ1年近く、地元の人々は飲料水不足に悩まされている。その原因は、埋蔵量の70%を消費する観光客に他ならない。そうと知ったらここを旅行先にするのは勇気がいる。さて、今年、あなたはどこに出かける?
text : Alexandra Marchand (madame.lefigaro.fr)