白い馬に乗り、フランス・カマルグの伝統と暮らしを味わう宿。

Travel 2024.09.10

フランスの生活に根付く"暮らしの美学"、アール・ドゥ・ヴィーヴル。自然や文化と調和しながら、その精神を体感できる宿、レ・バン・ガルディアンが南フランスのカマルグに誕生した。

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水辺に白い壁と葦葺き屋根のキャバーヌ・ドゥ・ガルディアンが軒を連ねる。

白い馬で湿地を駆ける、フランス流カウボーイの生活。

フランス南部、アルルからさらに南へ車で約40分。周囲に稲田が現れたかと思うと、やがて風景はタマリクス(御柳)とオリーブの木に縁取られ、沼地が入り混じる葦の原へと姿を変える。カマルグは、アルルで分岐するローヌ川と地中海に挟まれたデルタ地帯。稲作と製塩が行われ、湿地帯にはピンクフラミンゴを筆頭に、大小の野鳥が生息する。この地方特有の白い馬を操りながら雄牛を育てるフランス風カウボーイ"ガルディアン"の文化が息づく場所だ。5月に扉を開けたレ・バン・ガルディアンは、そんなカマルグの伝統と暮らしをいまに伝え、体感させる宿だ。

1970年代に作られた宿を洗練のアドレスに変えた仕掛け人は、パリで伝説のナイトクラブ&ホテル、レ・バンを復活させたジャン=マルク・マロワ。既存の建物と構造を踏襲しつつ、内装や料理、植栽、サービスの哲学を一変し、カマルグの自然と文化にフィットするホテルに生まれ変わらせた。

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牛を育てるガルディアンの相棒、20頭ほどの馬が宿泊客を出迎える。敷地内の円形闘技場で馬術イベントを行うこともある。

国道から敷地内に足を踏み入れると空気が一変する。カマルグ地方自然公園の中に位置する4ヘクタールには、プールとスパ、円形劇場、レストラン、そしてキャバーヌ・ドゥ・ガルディアンと呼ばれる葦葺き屋根の小屋が並び、厩舎の脇には白い馬たちの姿が見える。葦に縁取られた自然の水の流れをそのまま残し、水辺にはサギやクイナなどの鳥が遊び、ツバメが飛び交う。オリーブやタマリクス、カサマツの木々と名もない自然の草花たちが彩る庭は、背景に広がるカマルグの自然の湿地帯の風景に溶け込んでいる。

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ガルディアンの伝統的なキャバーヌは、北側を丸い壁にしてミストラルの強風を和らげるのが特徴。
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プールの向こうには自然公園が広がっている。

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客室の大部分を占めるのは、48棟のキャバーヌ・ドゥ・ガルディアン。葦葺き屋根の頂点に十字架を頂く伝統のキャバーヌは、ミストラル(冷たく乾燥した北風)を和らげる曲線を描く壁と、太陽をいっぱいに受ける真っ白な南向きの壁を持つ。中に入れば、ベッドにはチュールの蚊帳が掛けられ、一点ずつ買い集めたアンティークに80年代のデザイン家具をプラスした内装が心地いい。レストランでは、パリのレ・バンで腕を振るうシェフのセンスで、地元の食材にこだわり、伝統料理に目配せしたレシピが舌を楽しませる。風にそよぐ葦のサラサラという音に耳を傾け、バラ色に染まる夕焼けに舞うツバメを眺め、さまざまな小鳥の声に目を覚ます滞在は、知らぬ間に日常の緊張を解きほぐしていく。

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真っ白な蚊帳が吊るされたベッド。ヘッドボードの上には錨、ハート、十字架を組み合わせたガルディアン十字が飾られて。
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キャバーヌの調度は一棟ごとに異なる。家族で泊まれる4人用の棟も。
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ホテルの敷地内のレストラン Le Pont des Bannes(ル・ポン・デ・バンヌ)では、パリのレ・バンで腕を振るうブリュノ・グロシが、近隣の食材にこだわったカマルグと地中海の料理を提案する。こちらにもプールがあり、屋外でバーベキューも可能。

湿地帯から海辺までを巡る乗馬プロムナードは、馬と暮らすガルディアンの文化に親しむまたとない機会になる。馬上で語られるカマルグの歴史、季節ごとにやってくる野鳥の物語。牛を傷つけることなく、主役として讃える独特の闘牛への情熱や、カマルグの馬の特性に耳を傾け、自然の風景を堪能する2時間は、滞在中にぜひ体験したいプログラムだ。仕事への信念を表す十字架、希望を示す錨、寛容を表すハート--3つの価値観を形にしたガルディアン十字のエスプリが、心も身体もリセットしてくれるに違いない。

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白馬に乗って湿地帯から海辺を駆けるアクティビティ、乗馬プロムナード(50ユーロ〜)はぜひ。
Les Bains Gardians
レ・バン・ガルディアン
route d'Arles 13460 Saintes-Maries-de-la-Mer
33-(0)4-90-97-88-88
全67室 全室シャワーのみ
キャバーヌ・ドゥ・ガルディアン220ユーロ~
朝食22ユーロ
https://www.lesbainsgardians.com/
google map

*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋

photography: Matthieu Salvaing  text: Masae Takata(Paris Office)

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