東京や京都もランクイン!? アメリカの旅行ガイドが選んだ「行くべきではない旅行先」15選。
Travel 2024.12.31
2024年、全世界の旅行者数は新型コロナ流行前とほぼ同じレベルに回復した。旅行熱は世界的に高まっているが、そんな中、米旅行ガイド出版社フォーダーズトラベルが「No List 2025」を発表した。これは考え直した方がいい旅行先のリストで、同社が毎年発表しているものだ。
No Listに名を連ねているのは、世界的に有名で人気の観光地ばかりだ。このリストの目的は、観光業によって、その土地や地域社会に持続不可能なほどの負荷がかかっている場所を可視化することにある。優れた観光地を次世代まで残すための第一歩として、「問題があることを認識することが解決の最初のステップだ」と同社は述べている。
今回リストアップされた観光地の多くは、オーバーツーリズムによる無数の課題と緊急の問題を抱えている。では、2025年に行くべきではない観光地を見てみよう。
バリ島(インドネシア)
日本でも人気の観光地バリ島には、年間530万人(2023年)もの観光客が訪れている。オーバーツーリズムはインフラに大きな負荷をかけ続けており、渋滞や物価の上昇だけでなく、ゴミ処理も大きな問題となっている。バリ島では年間160万トン(推定)の廃棄物が排出されているというが、そのうち適切に処理されているのは半分ほどだといい、環境への影響は重大だ。ゴミだらけになってしまったビーチもあり、地元政府は9月、バリ島の新規ホテル開発を一時停止すると発表している。
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バルセロナ(スペイン)
今夏、ヨーロッパ各地の観光地では地元住民による反観光業デモが行われた。原因は、観光客の急増による生活費や住宅費の高騰にある。デモでは観光客に水鉄砲が発射される一幕もあった。
マヨルカ島(スペイン)
マヨルカ島のビーチでも数千人規模のデモが行われ、地元住民らは「住む場所がなくなった」と観光業の制限を求めた。
カナリア諸島(スペイン)
観光業がGDPの35%を占める(2023年)カナリア諸島でも、大規模なデモが起こっている。デモの参加者らは「カナリア諸島はもう限界」などと書かれたプラカードを掲げ、地元政府は住宅の短期レンタルを制限するなどの規制をかける計画を発表している。
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ヴェネツィア(イタリア)
ヴェネツィアはすでにオーバーツーリズムの対策を始めているが、それでも狭い街路は観光客であふれており、街は住みにくい状態が続いている。昨年からは日帰り観光客から入場料を取っているが、そんな対策では意味がないと批判も起きている。
リスボン(ポルトガル)
リスボンでは住宅の60%が旅行者向けになっているといい、世界で3番目に暮らしにくい場所にも選ばれた。生活費や住宅費の高騰が進んでおり、2013年比でおよそ30%の人口が減少した。
サムイ島(タイ)
有名なリゾート地であるサムイ島は、バリ島と同じくオーバーツーリズムによる問題を抱えている。規制がない中で観光開発が次々に進められており、環境破壊も進んでいる。2025年にはこの島で撮影された人気ドラマシリーズ新作の公開が控えており、観光客の増加と問題のさらなる悪化が予想されている。
エベレスト
1953年の初登頂から70年以上経った現在、エベレストはお金さえあれば登山経験の乏しい観光客でも登れる山になっている。山岳ガイドによると「過去には雪を見たことのないお客さんもいた」という。エベレストのネパール側、サガルマータ国立公園には毎年5万8千人が訪れるといい、登山ルートでは時に渋滞が発生し、沿道の村にはカフェやホテルもできた。現在、エベレストにはおよそ30トンのゴミと膨大な量の人糞が放置されているという。
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アグリジェント(イタリア)
シチリア島南部のアグリジェントは古代ギリシア時代から続く古都で、多くの遺跡が残っていることでも知られる。しかし近年、この地域は干ばつに見舞われており、夏季の気温上昇も相まって慢性的な水不足に陥っている。水不足で休業する企業やホテルなども出ているが、地元政府の対策は不十分で、地元住民からの不満の声は大きい。2025年には大きなイベントを控えているといい、観光客の増加が水問題をさらに悪化させると不安視されている。
イギリス領ヴァージン諸島
ヴァージン諸島はクルーズ船による観光を重点に置いている。しかし、クルーズ船の観光客は既存の脆弱なインフラを圧迫するが、レンタカーやレストランなどで費やす金額は少ない傾向にあるという。政府は観光業に関する包括的な計画を持っていないと、住民らは批判している。
ケララ州(インド)
インド南部の海沿いにあるケララ州は美しいビーチで知られ、2023年には国内外から年間2千万人以上もの観光客が訪れている。しかし、観光客の急増は乱開発を招いており、環境破壊だけでなく、地滑りなどの災害も増えている。昨夏には豪雨による大規模な地滑りが起き、400人以上が命を落とした。
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京都(日本)
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国内報道でも頻繁に取り上げられているが、京都もオーバーツーリズムによる交通渋滞や住宅費の上昇といった問題を抱えている。マナーの悪い観光客によるルール違反も多く、地元住民の反感を買っている。
東京(日本)
東京もオーバーツーリズムには悩まされている。円安により外国人観光客は増えたが、ホテル代の急上昇などは地元住民にとって頭の痛い問題である。
オアハカ州(メキシコ)
オアハカ州は2020年以降、観光客が77%も増加し、観光業をあてにした外国人の移住も進んでいる。スペイン語に変わって英語が主要言語となり、住宅や作業場だった建物が次々に観光客向けのホテルやレストランに姿を変えた。生活費と住宅費の高騰に耐えかね、元からの住民は集団でこの地域から去っていった。
ノースコースト(スコットランド)
ノースコーストでは2015年以来、ノースコースト500というドライブルートが人気を集めており、交通渋滞や観光客による迷惑行為などが問題になっている。特に問題になっているのは観光客の多くが行っているキャンプで、ビーチなど適切でない場所でキャンプするだけでなく、グリルや食べ残しなどのゴミだけでなく人糞なども捨てられているという。
オーバーツーリズムの問題は、原因である観光客がいなくなってしまったら、その観光地自体が苦境に陥ってしまうことだ。観光客ができることは、皆と同じ時期に同じ場所に行かないこと、行くとしてもオフシーズンに行くこと、現地のルールや法律を守ることだろう。