香港の「オーシャンパーク(Ocean Park)」といえば、1977年の開園以来、多数の絶叫ライドを備えた遊園地でありながら、クラゲやエイ、サメなどが泳ぐ本格的な水族館やアジアの希少な動物を飼育する動物園の顔を持つ、地元で愛されている一大テーマパーク。

このオーシャンパークが、2024年夏にあっと驚く喜びに包まれた。オスとメスの双子の赤ちゃんパンダが誕生したのだ。2016年には飼育環境下で世界最高齢のパンダが38歳で天寿を全うするなど、
長年パンダの丁寧な飼育では定評があったオーシャンパークだが、出産は初めてだ。

母親のインイン(盈盈)は出産時に人間で言えば57歳にあたり、飼育下のパンダでは世界最高齢の初産なのだそう。そしていつもマイペースなパンダたちは妊娠期間も3~5カ月と個体差が大きく、外見からはまったく変化が分からない。飼育員がインインの食欲減退や活動減少、ホルモンレベルの変化に気付いて超音波検査を行い、彼女の妊娠を確信したのは、なんと出産4日前だったとか。
誕生時の体重は、メスが122g、オスが112gと、生育後には100kg近くなることを考えると、とても小さい。2頭の名前は、市民から一般公募され、6月末までに発表される予定。

無事生まれた双子たちの成長過程は動画や写真で市民に共有されていたが、2025年2月16日に、ついに約12kgに育った元気いっぱいな姿が初公開された。
双子たちと両親パンダに会えるのは、「ジャイアント・パンダ・アドベンチャー(Giant Panda Adventure)」館。木や岩を登り、いたずら心を炸裂させてじゃれ合う姉弟には、いまにも転がり落ちるのでは、と冷や冷やさせられたりもするが、母親のインインはまったく気にも留めずにひたすら大笹をむしゃむしゃ頬張るばかりの超放任主義。そんな姿がとてもユーモラスで、理屈なしにひたすら癒やされる。

毎日10時から16時半まで、一度に100人ずつがパンダを見ることができる。そして同じ館内にはレッサーパンダ、両生類としては世界最大という約2mのチャイニーズサラマンダーなど、パンダ以外の動物も飼育されている。

双子の誕生により、オーシャンパーク全体が、出産と育児に最高の環境を整えながらのお祭り気分に包まれている。園内の水族館に併設された中国料理レストラン「ネプチューンズ(Neptunes)」では、パンダをモチーフにした食事メニューを展開中なので、双子の可愛さを思い出しながら楽しみたい。


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まるで異次元体験! ピークトラム10分の旅
ピーク(山頂)といえば、かつて香港が英国領だった時代から愛されてきた大定番の観光地。香港島の海抜28mから396mまでの最大傾斜25.7度の急こう配を、10分弱で一気に駆け上がるケーブルカー、ピークトラムが初めて作られたのは1888年! それから4回のアップグレードを重ね、2022年には約160億円を費やしての現トラムが完成した。

リニューアルは車体だけでなく、香港島の金鐘にあるトラム乗車駅から始まっていて、エンターテインメント要素が大幅に加えられている。実は野生のイノシシからヤマアラシまで、多種多様な野生動物が生息するピーク周辺。その豊かな自然をCG映像で紹介したり過去から現在にわたるトラム技術の進歩を説明したりするコーナーを眺めながら、プラットホームへ移動しよう。観光客で常に大変込み合うので、なるべくウェブサイトから事前予約をしておくのがおすすめだ。

以前のトラムと比べて格段に大きく、景色が眺めやすくなった窓からは、香港ならではの眺めを満喫できる。超高層マンションやオフィスビルの間をぐんぐんと登りながら、ダイナミックなビクトリアハーバーが姿を現し......椅子にしっかり座っていないと最後部に落ちてしまいそうな迫力にあっと驚くばかり。

わずか10分弱の乗車時間でトラムは終点のピーク駅に到着する。駅上には多数の土産店やレストランのほか、香港スターに韓流アイドル、草間彌生まで幅広いスターに会える「香港マダム・タッソー蝋人形館(Madame Tussauds Hong Kong)」などの人気アトラクションもある。ピーク駅があるピーク・タワー屋上は、海抜428mにある「スカイ・テラス428(Sky Terrace 428)」という巨大な有料展望台になっており、まさに頂上から見下ろすように香港のさまざまな姿を堪能できる。


これ以外にも風情ある無料展望台や、ショッピングセンター、気持ちのいい空気を感じるテラス席のあるレストランなど、楽しく過ごせる施設が揃っている。

これぞ香港という絶景と歴史ある観光地ならではの華やぎを味わえるピークは、何度訪ねても飽きることがない。初めての香港でもリピーターでも、心に残る体験になるはず!

取材協力:香港政府観光局
text: Miyako Kai

ジャーナリスト、編集者、コーディネーター。東京で女性誌編集者として勤務後、ヨーロッパ、東京、そして香港で18年を過ごす。オープンで親切な人が多く、歩くだけで元気が出る、新旧東西が融合した香港が大好きに。雑誌、ウェブサイトなどで香港の情報を発信中のほか、個人ブログhk-tokidoki.comも好評。大人のための私的香港ガイドとなる書籍『週末香港大人手帖』(講談社刊)が発売中。2024年に帰国。