新しいジュエリーブランドが次々生まれるパリ。
例えばコーラリーの場合・・・。
Travel 2012.01.18
大村真理子の今週のPARIS
ジュエリーブランドをスタートする若いパリジェンヌが増えている。革素材をいち早く取り入れ好調なスタートをきったコーラリー・ドゥ・セインヌ。1984年生まれでまだ27歳という彼女は、どんな風にこの道を選んだのだろう。
デビュー以来順調にブランドを成長させているコーラリー。家系には芸術関係者が多いそうだ。 photo : Mariko Omura
――もともとジュエリーデザイナー志望だったのですか?
「エスモードで学んだのは、ファッションデザインの方面へと進みたかったからなんです。3年学び、卒業後エルメスに入社しました。ジャンポール・ゴルチエがクリエイティブ・ディレクターの時代で、レディスのスタジオで2年半働きました。手描きのクロッキーを技術的な作業用にコンピューターで 製作するのが私の担当。
ある日、自分で作ったネックレスを着けて出社したところ、プレタのスタジオで働いている人たちから、それいいわ、私にも作って!と・・・。こうして始まったんです。このとき彼女たちに、アクセサリーのブランドを始めるといいわ、上手くゆくわよ、って励まされました。もともと手で何かを作ることが好きで、16、17歳頃から革のバッグなども作っていたんです」
――それはどんなネックレスでしたか?
「真鍮のチェーンにさまざまなサイズのパールを付けたアシンメトリックなネックレスでした。彼女たち、そして母の友達などにと、かなりの数を作りました。エルメスを辞めてから、 英語を完璧にしたかったので1年ほど英国で暮らしました。その間、エルメスのブティックで販売の仕事をしたのですが、自分が製作に関わったシーズンの服を売ることになって、これは楽しい体験でしたね。その間にブランドを始める意思を固め、2008年9月にパリに戻って、翌年の1月にいよいよ・・・。エルメスのようなすばらしいメゾンで仕事をできたのは幸せなことですが、自分で何かをクリエイトしたいという欲があったし、また自分でつけたいアクセサリーが市場になかったということもあって、ブランドをスタートしたんです。
16区の自宅兼アトリエ。ジュエリーを額にかけて展示している。 photos : Mariko Omura
――どのように販売ルートを開拓したのですか?
「最初はサロンに参加する費用がなかったので、作ったアクセサリーを持って、自分であちこちのブティックを回りました。今はもう使っていないけれど、当時はパールを使ったジュエリー、革を使ったジュエリーです。この当時は、革を使ったアクセリーが今ほど市場にありませんでした。始めてまもなくボンポワンからオーダーが入ったんですよ。ウエスタンやカウボーイがテーマで、羽根や革を使って作りました。その後、若いクリエイターを対象にしたジュエリーのコンクールに応募したんです。
これに選ばれて、『グラッツィア』やさまざまな雑誌で取り上げられることになり、またブロガーたちも私の仕事を取り上げてくれたんです。そして大変ラッキーなことに、2011年の1月にサロンThe Boxが無料でセールスのためのスタンドを提供してくれて・・・。このおかげで海外の販売網が確立できました」
革素材のデザインには、馬具からのインスピレーションも感じられる。左から、「Bracelet harnais」49ユーロ、「bracelet Torsade」3連59ユーロ、bracelet torsade 4tours4連55ユーロ(すべてeshop の価格) photos : Nicolas Willmann
――メタルを編むテクニックは、女性のアクセサリーでは珍しいですね。
「これはセーラーズ・ノットにインスパイアされたものです。もやい結びとか、船乗りたちのロープ結びです。カリック、リベックの変形も・・・。これは今では私の仕事の特徴のひとつとなっていますね。 職人が私のデッサンに沿って真鍮のチューブを結んだものを、この16区のアトリエで私が革と組み合わせて仕上げています。3つ編みタイプも人気がありますね。テクニックはどこかで学んだというのではなく、ひとりでいろいろと試行錯誤して・・・」
メタルのセーラーズ・ノットと革を組み合わせたペンダント87ユーロ photo : Nicolas Willmann
――将来は貴石を使うことも考えていますか?
「私はラフでシンプルな素材、時を経たような様相を持つ素材が好きなんです。パールを使わなくなったのも、あまり素材から感じられるものがなくなったからです。貴石は繊細できれいな素材とは思いますが、私の世界とは異なるので・・・。今後も革を使ってゆきます。これまではカーフだけでしたが、キッドなどソフトなタイプの革もつかってみたいですね。そうした革に別の素材をミックスしてゆこうと考えています」
鈍い輝きのメタル素材なので、ボリュームがあるデザインだが着けやすい。左から、ブレスレット64ユーロ、イヤリング39ユーロ photos : Nicolas Willmann
――どのようにデザインするのですか。
「デッサンをしま すが、アトリエのトルソーの上でチェーンをかけてバランスを決めて、というように、服をデザインしていた時のよう に仕事を進める部分が多いですね。私にとってアクセサリーはファッションの仕上げとして大切なアイテム。どんなファッションに合うかというと・・・そうね、例えば今日私が着ているのはba&sh というブランドのものなのだけど、このブランドは私のジュエリーと合うといえますね。
プレタのデザインと同じように、トルソーを活用してコーラリーは仕事を進める。 photo : Mariko Omura
――どのような春夏コレクションですか。
「ジョゼフィーヌという葉のモチーフのシリーズがあります。これは何か葉を使って作りたい、ということから出発しました。映画、展覧会、いろいろなことからインスパイアされて、アイデアがわくと、いつも持ち歩いている小さい手帳にすぐに書き付けてます。私がデザインするのはブレスレットとネックレスがメインなんです。私が指輪を着けないせいでしょうね。2011年春夏から好評のヘアアクセサリーも作り続けます。価格は50から120ユーロですから、クオリティとの関係でいうと、とてもリーズナブルだといえますね。上質で美しく、でも手の届かないということのないように気をつけています」
葉のモチーフのネックレス99ユーロ、ヘアアクセサリー68ユーロ。カタログ撮影には友達がモデルとして協力し、コーラリーの世界観を表現。 photos : Nicolas Willmann
――将来どのようにブランドを発展させたいと思っていますか。
「まだまだ先のことだけど、自分のブランドが順調に回るようになったら、プレタブランドのショー用ジュエリーをデザインすることに興味があるわ。すごく大ぶりのものとか。またバッグのデザインにも、私、心惹かれているんです。もしジュエリー以外に何かするとしたら、バッグやベルトといった革を使うものになるでしょうね。革という素材がとても好きなんです。感触だけでなく、香りも含めて」
1月21日から24日まで、ポルト・ドゥ・ヴェルサイユで開催されるサロンPremière Classe で彼女は次のシーズンのコレクションを世界から集まるバイヤーたちに展示販売する(Hall 4 Stand G33)。 2009年の秋冬コレクションでデビューしてから、5シーズン目。どんな新作が見られるか楽しみだ。Coralie de Seynes
Franck et Fils
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営)10時~19時(月~金) 10時~20時(土)
休)日
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