『ルイ・ヴィトン―マーク・ジェイコブス』展。
装飾芸術美術館で、春から秋までリュクスの旅を。

Travel 2012.04.12

icon_paris.jpg 大村真理子の今週のPARIS

前回のパリコレ最終日3月7日、ルーブル宮の中庭に建てたテントの中にオリエント・エクスプレスさながらの豪華列車が登場! ジャーナリスト、バイヤー、カメラマン、セレブ・・・ルイ・ヴィトンのショーに集まった人々の誰もが、この大がかりな仕掛けにワォと驚き、歓声をあげた。麗しく着飾ったモデルたちがひとりずつ下車するたび、ポーターが現れる。彼らが託されたという設定の旅行鞄、バッグは、合計100点以上はあっただろうか。

古きよき時代ののどかで優雅な汽車の旅。ルイ・ヴィトン158年の歴史の原点がここにある。19世紀後半の第二帝政期において旅行鞄に革新をもたらしたルイ・ヴィトン、それから1世紀半近くを隔て、メゾンに新たに設けられたプレタポルテでクリエイティビティを発揮し、15年を迎えたマーク・ジェイコブス。このふたりのヴィジョネアぶりを2フロア構成でそれぞれに辿れる展覧会が、パリの装飾芸術美術館で開催中だ。

120411paris_01.jpgエントランスで来場者を迎える創立者ルイ・ヴィトンと、1997年よりアーティスティック・ディレクターを務めるマーク・ジェイコブス。 ©LOUIS VUITTON

120411paris_02.jpgキュレータ-のパメラ・ゴルビンが編集した『LOUIS VUITTON - MARC JACOBS』リミテッドエディション。ルイ・ヴィトン ストアで販売中。 ©LOUIS VUITTON

ルイ・ヴィトンのトランク製造の歴史を辿る中で、今回はモードとの関係に重点がおかれているのが興味深い。彼が最初の店を構えたのは1854年のこと。旅行者用トランクの荷造用木箱製造兼荷造職人というのが、当時の彼の肩書きだった。トランクをつくるだけではなく、その中に物を納めるのも仕事だったのだ。彼が店を構えたのはラペ通りから、そう遠くない場所である。オートクチュールのメゾンというと現在はモンテーニュ通りをイメージするが、シャルル・フレデリック・ワースをはじめ、ラペ通りがクチュールメゾン・ストリートという時代。仕事も完璧、店も近所のルイ・ヴィトンはクチュリエたち、クチュリエの顧客女性に愛され頼られ、実にモードと密接な存在だったのだ。

120411paris_03.jpg最初に訪れるルイ・ヴィトンのフロアは、メゾンが創立された19世紀後半にタイムスリップしたような気持ちになる。 ©LOUIS VUITTON

会場ではルイ・ヴィトンのアーカイヴ・トランクはもちろんだが、第二帝政期の女性の下着やドレスをマネキンに着せて展示している。かさばるクリノリン・ペチコートを見ると、これをいかに型くずれすることなく納められるトランクが当時必要とされていたかが明解である。また、大人のワードローブをミニチュアにした人形のワードローブを多数展示することで、トランクが納めるべき物の量にも思いを馳せることができる。

120411paris_04.jpg上:19世紀後半の人形のワードローブ。革の指なし手袋をはじめ、小物類の充実ぶりは見応えあり。 下:下着、街着、晴れ着・・・こうした衣類がルイ・ヴィトンのトランクに納められたのだ。 ©LOUIS VUITTON

ルイ・ヴィトンのフロアが終わり、階段を上がるとマーク・ジェイコブスのフロアである。15年にわたるプレタポルテ・コレクションの展示を堪能するのは、会場の中程にて。来場者が最初に眼にするのは、彼を惹きつける映画、人物などがモザイク状に散りばめられた壁の連続である。マークの心と頭の中にトリップ!というわけだ。マライア・キャリーのビデオクリップ、『暗殺の森』のドミニク・サンダ、化粧をほどこされるミック・ジャガー、ゴージャスな宝石をつけたエリザベス・テイラー、キルスティン・ダンスト扮するマリー・アントワネット・・・そしてサンローラン、シャネル、川久保玲なども。

120411paris_05.jpg上のマーク・ジェイコブスのフロア。暗い会場なので強い照明を施したウィンドーの展示が床にも写りこみ、賑やかに展開する構成だ。この15年間のクリエイションの軌跡を辿れる。 ©LOUIS VUITTON

この15年の間、プレタポルテのクリエイションだけでなく、現代アーティストとのコラボレーションという、ルイ・ヴィトンの長い歴史において画期的なこともマーク・ジェイコブスは行った。メゾンにとって神聖かつ冒すべからざるものだったはずのモノグラムを、スティーヴン・スプラウス、村上隆というアーティストの手に託したのだ。その結果、モノグラム・グラフィティバッグ、モノグラム・チェリーバッグなどが誕生したのは誰の記憶にも新しいだろう。 マルセル・デュシャンがモナリザにひげを描き加えたこと、セルジュ・ゲンズブールがルイ・ヴィトンから贈られらたトランクを真っ黒に塗ったのを見て、リスペクトしつつ、反逆的な行為をモノグラムにもできる、と思いついたとマークは明かしている。

120411paris_06.jpgコラボレーションのバッグは、それぞれに展示ウインドーがある。それとは別にプレタポルテ・コレクションでデザインされたバッグも勢揃い。チョコレート・ボックスのような展示方法がチャーミングだ。 ©LOUIS VUITTON

会場ではケイト・モスに捧げられたウインドーもある。また、村上隆がプロデューサー、原案を務めたアニメ『SUPERFLAT FIRST LOVE』も見ることができる。盛りだくさんの展覧会。会場を出る直前、左側の小さなウインドーを見逃さないように。白いシャツにスカート姿でクロコのバッグを持ったマーク(もちろんダイヤのピアスもしている!)の人形が、Bye Guysと挨拶。お勉強というより、遊びにゆく感覚で行くのがおすすめの展覧会だ。

120411paris_07.jpgオープニングとエンディングをトップモデルたちがナーススタイルで飾った2008年春夏コレクション。リチャード・プリンスとのコラボレーションによるバッグが発表された。 ©LOUIS VUITTON


『LOUIS VUITTON - MARC JACOBS』
開催中~9月16日
Musée des arts décoratifs
107, rue de Rivoli 75001 Paris
Tel. 01 44 55 57 50
開)11時~18時(火、水、金~日) 11時~21時(木)
閉)月曜
入場料9.50ユーロ
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