21時から始まる、大人のソウルナイト案内。

「韓国人は木曜日から夜は寝ません」

もちろん全員ではないけど、そのくらいの勢いで韓国の人々は週末にかけて全速力で呑み、語り、踊り、騒ぐ。夜中からサムギョプサルやホルモンを肴に、酒を酌み交わす姿だってまったく珍しくはない。屋台の数も多い。

約10年前、日本に韓国ブームが到来した当時。ホテルに隣接した大きなクラブやラウンジで遊ぶという若者主体の遊び方が注目されたが、いまはそれも落ち着き、大人も楽しめるような雰囲気になってきた。

深夜の買い物エリア、東大門にはザハ・ハディドによるデザインプラザが完成。中庭には、多国籍なおいしい屋台が集まる。そこからタクシーで7分の乙支路には、古いビルの中にワインバーやラウンジが出来始めていておもしろい。夜遊びの定番エリアといえる梨泰院には、カルチャーシーンを動かす人々が集まり、新しい刺激的な店がオープン。変化を遂げている。

ソウルのダイナミズムを感じたいなら、断然夜。この漲るエネルギーは東京では体験できない。

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EULJIRO｜カルチャー発信地、乙支路（ウルチロ）エリア。

照明やタイルの専門店や、チラシや新聞を印刷する小さな工場が連なるエリア。家賃が安いせいか、若い世代が古いビル内に続々と店をオープン。乙支路から徒歩圏内の鍾路エリアも含め、通なアドレスをそぞろ歩き。

21:00　ステイするホテルでジャズライブを堪能。
　｜メイカーズ・ホテル

泊まるなら、ブルックリンにあるような佇まいのホテル。ヨーロッパ各地から集めたヴィンテージ家具がフロントに集まる。この日は地下のラウンジで、ジャズユニットN/A Streetのライブ（20,000ウォン）を堪能。

21:35　生カキとマッコリで乾杯！
　｜ウォンジョノクドゥ

酢入りのコチュジャンにつけて。生ガキ「생굴」11,000ウォン

腹ごしらえにチヂミが名物の小さな店へ。周りが大ボリューム（40個位）のカキを注文していて、つられてオーダー。マッコリ（3,000ウォン）の容器を振ろうとすると「すぐに混ぜないで上澄みだけをまず呑んで」と隣のおじさんにアドバイスされ実践。スッキリした味わいを新発見。

マッコリの上澄みは、清らかな舌触り！

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22:12　カムジャタン屋に長蛇の列（次回は行ってみよう）。
　｜トンウォンジプ

聞けば30分待ち。「ココは本当においしい」と食通の現地コーディネーターが証言。

22:20　ローカルが集うワインバーへ。
　｜シップネイル

印刷所が並ぶ静かな一角で発見。扉を開けると、映画『花様年華』でも流れるナット・キング・コールの「Quizas Quizas Quizas」がかかっていた。10人のサラリーマンが給料の10分の1ずつを出資し経営する店で、自らが店頭にも立つ。大人たちがリーズナブルにワインを楽しめるアジトだ。

グラスワインは赤白ともに各4,800ウォン

22:58　アップルシナモンティーで、カームダウン。
　｜ホテル・スソナ

マッコリやワインでほろ酔いになったところで、若手デザイナーが本業の傍ら営業するホテルのロビーのような空間へ。レトロな生地を再利用して作られた照明やミラーのアートなど、細部にもこだわりが。注文したのはアップルシナモンティー「Apple Cinnamon Tea」（6,000ウォン）。

コーヒー＆ティーのほかにスイーツも豊富に揃う。

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23:40　24時閉店だから駆け込み！　コムタンスープ or 夜景シャンパン！
　｜ヨンチュノク or ドファ

1980年代の赤レンガ造りの建物を旅館にリノベーションしたナグォンジャン・ホテルのルーフトップにある、周辺の韓屋が眺められるワインバー、ドファ。閉店間際に駆け込み、シャンパンで乾杯。空腹の場合は、70年間営業が続くコムタンの老舗、ヨンチュノクへ。1頭からひとつしか取れないテールが入ったコムタンをすすって、深夜てっぺんは温まる。ほどける肉も最高。

白菜キムチも絶品。テール入りコムタン「꼬리곰탕」18,000ウォン

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24:15　カルチャー系のローカルが集う穴場へ。
｜シンドシ

アーティストと写真家による最旬スポット。ビールやカクテルが楽しめるバーラウンジとして営業し、音楽イベントやワークショップを開催する。かつてイベントのポスターやチラシが貼り残されているのがカッコいい。この日は、ジェームス・ブラウンなど70sファンクに客は身を委ねていた。

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25:10　真っ赤な空間で、クラシックカクテルを味わう。
｜ディ・エッジ

「この赤いネオンは一体」と潜入したビルで、バーを発見。パリで暮らしていたオーナーによる店で「クラシックなものを味わってほしい」と、王道のカクテルのみを提供。帰りに、友人が出すジン「The Quiet Leaf」（16,000ウォン）を購入。

ドイツ在住の韓国人が作るスケーターのジン

25:52　100軒集合！　鍾路3街駅の屋台へ。
｜鍾路3街駅屋台街

鍾路3街駅、3番出口を出た通りは、週末になると屋台だらけ。基本的に韓国料理で、生ダコやおでん、激辛メニューなど個性豊か。この日は有名マッコリメーカーの御曹司が隣に。

鶏のなんこつ炒め（12,000ウォン）をつまみに、威勢よく焼酎チョウムチョロム（3,000ウォン）でコンべ（乾杯）。カードは使えないので注意。

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26:30　千鳥足でもケンチャナヨ。屋台エリアから徒歩30秒で、ホテル着。

屋台からステイしているメイカーズ・ホテル（上記）は目と鼻の先。安心、安全にゴール。

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ITAEWON｜音楽に浸る、大人の梨泰院ナイト。

学生は弘大、リッチ層は江南、外国人は梨泰院――。ソウルの三大夜遊びエリアのひとつが、六本木的なムードを残しつつブラッシュアップ。ギャラリーやこなれた中箱のクラブなどが出来始め、新しい表情を見せている。

21:00　夜景とクラフトビールでスタート。
｜ソブスタンス

ひとまずカフェでカームダウン。ピンクに染まったフロアはポップなアクリルのアートやモダンな北欧家具が配置され、客は写真撮影に励む。南山の上に立つNタワーが見える屋上で、パッケージがキャッチーな韓国のクラフトビールをゴクリ。DJイベントの開催もあるそう。

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22:02　気鋭作家のエキシビションを堪能。
｜シティ・カメラ

アナログブームのソウルに新しいカルチャーアドレスが誕生。ここでは、1980〜90年代のフィルムカメラ、写真集やジンを販売する。ショップの隣はギャラリー。イム・ヨンウンの展示が素晴らしく、作品集『Plastic Love'』（上、38,000ウォン）を購入！

22:25　レコードコレクターのアナログ空間へ。
｜ウムレコード

シティ・カメラの目の前に位置するカフェへ入ると、店内に響くのは山下達郎の「スパークル」。日本のシティポップからコンテンポラリーロックまでたくさんのアナログレコードが集まり、好きな音楽をかけられる。1階では気軽に立ち飲みができ、夜遊びの1軒目としてもおすすめ。

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23:00　ジューシーなオギョブサルで、一杯！
｜ウサダンコギ

シティ・カメラに行く前に満席だったので入口のボードに携帯番号を記入。ようやく席が空き、入店。済州島でのびのびと育った豚のオギョプサル（5枚肉）は、ジュワッと肉汁がにじみ、歯ごたえも抜群。強面のオーナーがひとりで切り盛りしているため、お酒はセルフサービス。

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23:41　真夜中のヴィンテージハント。
｜サムチルジョムイ

店名の37.2°Cは、もちろん映画『ベティ・ブルー』から。ノルディック柄ニット（35,000ウォン〜）、かぎ針編みドレス（40,000ウォン〜）、ムートンのコート（150,000ウォン〜）など、アメリカンヴィンテージが中心の古着屋で買い物。夜中の研ぎ澄まされた集中力ゆえか、25,000ウォンのピアスなど、ビジューアクセサリー選びは5分で完結。

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24:11　ジャズ&ハウスで、しっとりと。
｜ピスティル

大箱が集まる中心にありながら、ここはシックなムード。クラシックなハウスやモダンジャズ、ダブがかかり、23時台まではしっとり、24時を越えると徐々に人が集まり、盛り上がりを見せる。カウンターでジントニック（8,000ウォン）を呑みながら、店員と拙い韓国語でおしゃべり。気兼ねなく入れる優しい小箱だ。

坂口健太郎&星野源似の店長、ソ・スンウォン。「24時前はエントランスフリー、24時以降は10,000ウォンです」

24:55　見知らぬ人と卓球&クラフトビール。
｜ベルリン・ピンポン

1階の奥には卓球台があり、そこにいる客がピンポンピンポンとほろ酔い加減で卓球を始めるというユニークなシステム。泡が消えにくいクラフトビールが豊富で、注文したビール「On Tap Beer Weiss」（下：7,900ウォン）は芳醇でフルーティな味わい。

8人くらいで順番に球を打ちながら回っていく。

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25:27　おしゃれな、ボウリング場を発見（本日は通過）。
｜オソム・ラウンジ・ボウル

24時間営業のボウリングバーが人気。若者のみならず大人も2軒目、3軒目として活用しているのだとか。本日は時間がなくスキップ。

25:36　ソウル、ブルーは熱い色――的な、ムードの新ラウンジへ。
｜ソープ

ブルーとピンクのミステリアスなライトが印象的な、中箱のクラブに、ハイセンスはコリアンが集う。フロアが完全禁煙だったり、ライトの色調は個性的でも落ち着いたムードで、大人が長く滞在できるのがポイント。テクノやフューチャーポップなど、洗練された音楽のセレクションで、ゆっくりチルアウトしたい。エントランスフィーは20,000ウォン、ワンドリンク込み。

人気カクテル、モヒート「Mojito」12,000ウォン

「Boys」がヒット中、UKの新日シンガー、チャーリーXCXも来店。ほか、BeenzinoやDeanなどの姿もキャッチ。

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深夜2時。メイン通りと裏通りをつなぐ階段沿いにも店が。

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26:16　勇気を出して、イントゥ・ザ・ドープな箱。
｜パウストゥ

エントランスで10,000ウォンを払いマンションの1室ような扉を開けると、ダークな空間が広がる。フロアでは重低音のテクノが響き、小箱ながらかなり玄人向け。「ストレンジャー・シングス」を彷彿とさせる、連続する赤く切りこむような照明で、若干覚醒。

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27:00　珍しいから食べてしまおう、夜中の白トッポッキタイム。
｜ヌネジップ

白トッポキ「하얀 떡볶이」（7,000ウォン）を頼むにはもう1品オーダー。

通常、赤トウガラシやコチュジャンの赤いトッポキがメジャーだが、ここでは青トウガラシで辛さを加えた白トッポキがある。シイタケ、 玉ネギ、直径1.5cmのトック（餅）が絶妙な甘さ、辛さで絡み合う。

27:40　タクシーで10分。スタイリッシュなホテルで、ぐっすり。
｜エルセブン・ホテル明洞

※『フィガロジャポン』2018年2月号より抜粋