モロッコとパリに、イヴ・サンローランのミュージアム。
Paris 2017.09.22
9月8日、ピエール・ベルジェが亡くなったという悲報がモード界を駆け抜けた。イヴ・サンローランとクチュール・メゾンを1961年に共同設立した彼については、ジャリル・レスペール監督の映画『イヴ・サンローラン』でその存在を知ったという人もいることだろう。 2008年に亡くなるまで精神的にもビジネス面でもサンローランを支え、没後も偉大なるクチュリエのクリエーションをマルソー大通りのかつてのクチュール・メゾンの建物内で護り続けた彼。仕事の集大成は、パリとモロッコのマラケシュの2つのイヴ・サンローラン美術館の創設だった。その夢の実現を見ることなしに、彼はこの世を去ってしまった。


モロッコのピエール・ベルジェ(右)とイヴ・サンローラン(©D.R.)。映画ではベルジェ役をコメディ・フランセーズのギヨーム・ガリエンヌが演じた。2人が16区のスポンティーニ通りでスタートしたクチュール・メゾンは、1974年にマルソー大通り5番地に移動。その建物がパリの美術館となる。写真は1982年に撮影されたもの。©Sacha
パリの美術館は10月3日に開館する。16区のマルソー大通り5番地、15年前までがイヴ・サンローランのクチュール・メゾンで、その後はイヴ サン ローラン ピエール ベルジェ財団の本拠地となっていた建物が美術館として、一般に開かれるのだ。財団が所蔵するイヴ・サンローランの遺産は服が5,000点、小物が15,000点、そして数え切れないほどのデッサン……と、さまざまな展覧会を可能にする。展示品はクチュール・ピース、アクセサリー、写真、クロッキーなど、さまざまだ。かつてのクチュール・サロンのみならずサンローランのデザインスタジオも見学できるそうだから、来場者はオートクチュール・コレクションが生まれる現場に立ち会っているような気分が味わえるだろう。


モンドリアンへのオマージュのワンピースは1965年の秋冬コレクション。1976年秋冬コレクションのテーマは「オペラとロシアン・バレエ」。さまざまな芸術がイヴ・サンローランにインスピレーションを与えていた。共に©Fondation Pierre Bergé - Yves Saint Laurent, Paris/ Alexandre Guirkinger
クリエーション・スタジオで作業をするイヴ・サンローラン。1986年。©D.R.
1962年春夏のコレクションのクロッキー、布などをまとめたボード。©Fondation Pierre Bergé - Yves Saint Laurent, Paris
オープニングから来年9月までは、回顧展である。そして初の企画展『イヴ・サンローランが夢見たアジア』が来年10月から2019年の1月まで開催される。その後、2月から9月が再び回顧展となり、ついで10月から1月までが新たな企画展、その後また回顧展に戻り……というリズムで展開していく。
5, avenue Marceau
75116 Paris
tel:01 44 31 64 00
開)11:00〜18:00、(金 〜21:00)
休)月曜、1月1日、5月1日、12月25日
料金:10ユーロ
https://museeyslparis.com/
マラケシュの美術館の開館は、10月19日に予定されている。イヴ・サンローランが恋に落ちた土地、マラケシュ。「激しい色の調和、途轍もないミックス、新しい物を生み出したい熱望といった大胆さをマラケシュから得ていた」とサンローランが語っているように、彼のクチュール人生においてパリと同じ重要性を持つ街である。ベルジェがこの地にも美術館を作ることにしたのは、ごく自然なことなのだ。
ピエール・ベルジェが撮影したモロッコのイヴ・サンローラン。©Pierre Bergé
美術館ができるのは、1980年にベルジェとサンローランが購入したマジョレル庭園のすぐ近く。この庭園は1920年代にフランス人画家ジャック・マジョレルが造園したもので、現在はマラケシュの一大観光名所となっている。美術館は4,000平米と広く、デザインを任されたのはAmiのブティック、NY のバルマンのブティックなどを手がけているStudio KO。彼らにとって初の美術館となる。周囲の景観に溶け込む建物で、外壁のレンガはレース模様を描くようだ。美術館内には、カフェや図書室、オーディトリアムも用意されている。
マラケシュのサンローラン美術館の外観。Fondation Jardin Majorette©Nicolas Mathéus
150席を設けたオーディトリアム。Fondation Jardin Majorette©Nicolas Mathéus
400平米が常設展のためのスペース。黒、マスキュリン・フェミニン、ガーデンといったサンローランが得意とするテーマで構成される。なお、展示される服はバリエーションを見せつつ、服の保存という観点からローテーションで変わっていく。また企画展も120平米のスペースで開催する。第一弾は『ジャック・マジョレルのモロッコ』。フォワイエはサンローランが情熱を傾けたことのひとつであるステージや映画のコスチュームためのスペースとなっている。


1989年春夏クチュール・コレクションでは、愛するマジョレル庭園のブーゲンビリアが咲き誇るドレスを発表した(©Guy Marineau)。こうした作品も含めたサンローランの遺産の常設展の会場構成はクリストフ・マルタンが担当(©Christophe Martin Architectes)
2週間を隔てて2つの美術館をオープンさせるとは実に大胆な計画であるが、これはベルジェが2004年から構想していたもの。サンローランの才能を1958年の出会い以来信じていた彼が、なさずにはいられなかったプロジェクト。彼の意思は財団の副総裁であり、またベルジェと今春結婚した造園家のマディソン・コックスによって引き継がれることになるそうだ。
Rue Yves Saint Laurent
Marrakech
開)10:00〜18:00
休)水
料金:100DH
www.museeyslmarrakech.com
réalisation:MARIKO OMURA