オペラ座で何が起きているのか......話題のバレエ『Play』。
Paris 2017.12.22
最終公演日は12月31日。どんな終わり方をするのだろうか……と、ちょっと興味津々となるのは、現在オペラ・ガルニエで公演されている『Play』である。スウェーデン人の振付け家アレクサンダー・エクマンが創作した二幕物のバレエで、ガルニエ宮の舞台、オーケストラ・ピット、観客席のスペースを存分に活用しての創作だ。テーマはさまざまな“遊び”で、現代作品らしくダンスだけでなく複数のジャンルのアートが盛り込まれ、観客を驚かせる仕掛けにあふれている。
雨のごとく降り注ぐ緑のボールは、6万個とか……。
今年正式入団したばかりのカドリーユのシモン・ル・ボルニュ(右)が、マリオン・バルボー相手に大活躍。
出演ダンサーは36名。オペラ座の階級にこだわらない配役となっている。
クラシック・バレエのファンを満足させるパートもある! photos:Ann Ray/ Opéra national de Paris
あるバレエ・ジャーナリストは、『Play』は21世紀の『くるみ割り人形』であると語っている。ヴァージョンは異なれど、年末になると『くるみ割り人形』が世界中さまざまな都市で踊られる。この作品は、大人も子どもも楽しめ、お祭り気分に溢れる作品ゆえに芸術界の12月の風物詩なのだ。『Play』も同じような効果を観客に与えるポジティブな作品。観客も舞台装置に入り込んで36名のダンサーたちと共に遊びたい、という気にさせられる創作で、しかも毎回公演の締めは、ダンサーたちと観客席とのボールのやりとり。巨大な白いボールが舞台から観客席をめがけて投げられ、それが舞台に返されて、といったように、劇場中が一体となり、明るい雰囲気がいっぱい。『Play』の楽日である大晦日の公演では、この瞬間、どれほどダンサーがはしゃぎ、弾けることになるのだろう……。
カーテン・コールより。オーケストラ・ピットを埋め尽くす緑のボールのプールが圧巻。この作品の音楽はダンサーの後方に見える高台ステージで演奏される。
最後は出演ダンサーたちも楽しそうに、観客席とボールのやりとり!
映画や過去のバレエ作品を連想させる要素を盛り込んだ、この作品。36名のダンサーが配役されている。エトワール1名、プルミエの男女合計4名は要となる部分を踊るものの、作品全体の印象としてはダンサーの階級が入り乱れての舞台。第一幕がはしゃぎ回る子どもたちの遊び場だとすると、第二幕は雰囲気ががらりと変わって工場に。20分間の幕間もステージに残ったボールをオーケストラ・ピットに集める作業が行われ、これもひとつの余興といった感じに観客の目を楽しませている。純粋なクラシック・バレエを求める人には物足りないかもしれないが、この完成度の高い贅沢な娯楽作品を見逃すのは惜しいこと。エクマンを招き、『Play』をプログラムに入れたオーレリー・デュポン芸術監督自身もこの作品に賛辞を惜しまず。もしパリにいるなら、『Play 』で童心に返る年末の一夜を。
幕間、のんびりシャンパンを飲んでいる場合ではないかも……。
リハーサル中の、アレクサンダー・エクマン。photo:Ann Ray/ Opéra national de Paris
公演のポスター。
会場:Opéra Garnier
会期:~2017年12月31日
開演:12月22日19:30、12月23日20:00、12月24日14:30、12月27~31日19:30
チケット売り場入り口 : rue Scribeとrue Auberのコーナー
www.operadeparis.fr/en
réalisation:MARIKO OMURA