黒い肌、オリエントの女性と光。異国の美が生む芸術作品。 オルセー美術館の『黒人モデル ジェリコからマティスまで』展。

Paris 2019.05.27

オリエンタルを旅した後、次はアフリカへ。オルセー美術館で開催されているのは、フランス革命時から20世紀初頭のアートにおける黒い肌のモデルたちをテーマにした展覧会だ。パリの黒人たちは画家のモデルとして生計をたて、モダンアートの発展において礎の役割を果たした。『黒人モデル ジェリコからマティスまで』と題したこの展覧会がスポットを当てるのは、画家、彫刻家、写真家といった芸術家たちとそのモデルとの関係。展示作品は約300点と多数で、テーマは「新しい視線」「ジェリコと黒人の存在」「奴隷制に反対する芸術」「文学的異種交配」「アトリエにて」「オランピアを巡って」「舞台」「ブラック・パワー」「植民地帝国賛否」「パリの黒人文化」「ハーレムのマチス」「黒人のオランピアが好き」と展開する。パリの黒人文化と奴隷廃止時代(初回1794年、2回目1848年)、マネやドガやセザンヌなど新しい絵画の時代、そして、20世紀の最初のアヴァンギャルドの時代と3つに大別しての展示だ。

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展覧会のハイライトはオルセー美術館所蔵のエドゥアール・マネの作『オランピア』(1863年)。娼婦オランピアと黒人の使用人を描いた作品で、右の黒猫が加えられてから1865年のサロンに出品された。

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ポール・セザンヌ作『モダン・オランピア』(1873〜1874年)。

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右はラリー・リヴァース作『I Like Olympia in Black Face』(1970年)。

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映画『ショコラ 〜君がいて、僕がいる~』でオマール・シーが演じた黒人芸人ショコラは19世紀末に、バナナを腰にぶらさげて踊ったジョセフィン・ベーカーは1920年代アールデコの時代というように、黒い肌が表舞台で活躍を始めたのは1世紀ちょっと前のことである。展覧会で最初に展示されているのは、マリー・ギユミンヌ・ブノワが1800年に描いた作品で、『マドレーヌの肖像』と題されている。この年のサロンに彼女が出品したときのタイトルは『黒人女性の肖像』だったという。時が流れ、黒人モデルたちの位置にも変化があるのだ。芸術作品を介して 社会問題、人種問題への思考も促す展覧会なのだが、奴隷問題にさほど詳しくない場合、まず会場を一周してマネ、ジェリコ、セザンヌ、マティスなど巨匠たちの名作を含む黒い肌のモデルたちの美しさを堪能。その後逆戻りに、あるいは最初に戻って解説を読みながら作品鑑賞に時間をかけるのがわかりやすいだろう。

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マリー・ギユミンヌ・ブノワ作『マドレーヌの肖像』(1800年)。Paris Musée du Louvre , INV  2508©RMN-Grand Palais (Musée du Louvre)/Gérard Blot

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テオドール・ジェリコの『ジョゼフをモデルにした男性の習作、あるいは黒人ジョゼフ』(1818〜1819年頃)。Los Angeles, J. Paul Getty Museum, 85.PA.407 © Photo Courtesy The J. Paul Getty Museum, Los Angeles

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ジャン=バティスト・カルポー作『なぜ奴隷に生まれたのか?』。1869年のサロンには『黒人女性』というタイトルで出品された。

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フレデリック・バジール作『ボタンを持つ女性』(1870年)。©Courtesy National Gallery of Art, Washington DC, NGA Images

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19世紀、上流階級の家庭では乳が上質という理由で黒人女性の乳母がひっぱりだこだった。当時の日常を描いた絵画の中で黒人の乳母の姿がよく見かけられるのはそれゆえ。エドゥアール・マネ作『チュイルリー公園の子供達』(1861〜1862年頃)にも、右端に黒人女性の乳母が描かれている。

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黒人の姿が描かれたサーカスやレヴューのポスター。

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ジョゼフィン・ベーカーのコーナー。会場では彼女が踊る映像も流されている。

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マン・レイは黒い肌の女性を写真、絵画のモデルにした。

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アンリ・マティスのコーナーも充実。切り絵作品『クレオールのダンサー』(1950年)を始め、マルチニークの女性、マダガスカルの女性、ハイチの女性といった褐色の肌の女性6名の習作も展示されている。

「Le modèle noir de Géricault à Matisse」展
会期:開催中〜2019年7月21日
会場:Musée d’Orsay
1, rue de la Légion d’Honneur
75007 Paris
開)9時30分〜18時(木 〜21時45分)
休)月
料金:14ユーロ

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マルモッタン・モネ美術館の『画家たちのオリエント』展。

réalisation:MARIKO OMURA

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