【パリ夏の展覧会 3】背中から見るモードとブールデルの彫刻。

Paris 2019.08.11

夏のパリでモード展を見たい!という人は、ぜひパリ15区のブールデル美術館へ。改装工事中のガリエラ美術館の出張展である『Back Side / Dos à la mode』を11月17日まで開催中だ。

タイトルが示すように 、背中から服を見るというユニークな展覧会である。正面から見ることに慣れている服だが、今回は自分の目では見ること、触ることのできない背中という身体との関係で鑑賞するのだ。3月31日までブリュッセルの衣装とレース博物館で開催された『Back Side, fashion from behind』展とテーマは同じだが、パリでは約100点のガリエラ美術館所蔵の品だけで再構成されている。そして何よりも大きな違い、それはパリの展示会場がブールデル美術館ということだ。

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ポスターはマルティーヌ・シットボンの1997〜98年秋冬コレクションのドレス。フランス語のタイトル “ド・ア・ラ・モード” の響きは、欲望をそそる意味の “ロー・ア・ラ・ブーシュ” と似ていて口にしやすい。

ロダンのアシスタントで、ジャコメッティやマイヨールが師と仰いだ彫刻家アントワンヌ・ブールデル(1861〜1929)。彼の作品を常設する3つの部屋も展覧会のプレリュードとして使用されている。メイン会場内でも、背中向きの服の中に背中に特徴のあるブールデルの作品を見事に調和させ、両者の対話を試みる展示である。この会場構成の素晴らしさ、見応え十分だ。展示されている服を1点ずつ見るより先に、これに魅了されてしまうはず。

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ザ・ロウのイブニングドレス(2018年春夏)。

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当然ながら、服は背中向きで展示されている。つい前も見たくなってしまう……。右はカール・ラガーフェルドによるクロエ(1983〜84秋冬)、奥はウォルター・ヴァン・ベイレンドンクのWOWコレクション(2019〜20年秋冬)より。

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アレクサンダー・マックイーンによるジバンシイの2000年春夏クチュール・コレクションより、バラのコルセット。モデルの身体から直接型をとったそうだ。

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“コブのコレクション” と呼ばれる、コムデギャルソンの1997年春夏コレクションより。

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テーマはトレーン(引裾のドレス)、忘却(豪華な前身頃と対照的な背中)、重荷(リュックサック)、翼、拘束(人手を借りて着る)、ベアバック、背中のメッセージ。展示されているのは18世紀の宮廷着や20世紀初頭の拘禁服も混じるが、おもに20〜21世紀の有名、無名クリエイター&クチュリエによる作品だ。ボタンにせよファスナーにせよ背中留めの服は着るのに召使あるいはパートナーの手が必要……それゆえモード史において背中留めの男性の服は珍しい。展示もほぼ女性の服である。

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ブールデル自身の背中を友人が直接型をとったブロンズの彫刻が、メイン会場入り口に展示されている(1895年頃)。

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クリストバル・バレンシアガによるイブニングドレス(1961〜62年秋冬オートクチュール)とブールデル作『アダム』(1889年頃)。

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ブールデル作『ハンニバルの初勝利』(1885年)の左右に、ティエリー・ミュグレーとシャルル・ジェームスのドレス。テーマは翼だ。

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「拘束」のテーマで拘禁服とともに展示されているのは、ジャン・ポール・ゴルチエのコルセット(2003〜4年秋冬クチュールコレクション)。この展覧会ではジャン・ポール・ゴルチエによるクリエイションが多数点とりあげられている。ちなみに男性のベアバックの服を最初にデザインしたのも、彼だ。

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「ベアバック」のテーマは、モノクロとカラーの服に分けて展示。壁の鏡が効果的に服の前後ろを見せる。 

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男女背中比べ? カラフルな服と石膏の対照が美しい展示。

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クレイグ・グリーンによるメンズのシャツ、パンツ、ショルダー・ベルト(2017年春夏コレクション)。左はブールデルの義兄弟であるノーベル賞作家アナトール・フランスをモデルにした作品(1919年)。

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ゴヤの絵画『マヤ』にインスパイアされ、ブールデルは個人宅のために『夜明け』(1895年)を着衣と裸の2バージョンを制作した。華やかなドレスにマッチしている。

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メッセージのテーマの展示は、メンズの服が多く占めている。

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1960〜90年代にかけてジャンルー・シーフが撮り続けた女性の美しい背中のモノクロ写真も「背中への視線」というテーマで、10点展示されている。また、トリッシャ・ブラウンが踊るビデオ、さらに庭を見下ろせるテラスでは、8本の映画の背中を追った映像が印象的なシーンを紹介、と盛りだくさん。1階の通路には、巨大な彫刻を展示している庭に面して長椅子も用意されているので、この企画展、常設展を堪能した後でお昼寝(!)も。これってすごい贅沢では?

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美術館の粋な計らい!?

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裏手の庭では、「翼」のテーマにて石膏で展示されている『ハンニバルの初勝利』のブロンズ像を見ることができる。

Back Side / Dos à la mode展
会期:開催中〜2019年11月17日
会場:Musée Bourdelle
18, rue Antoine Bourdelle
75015 Paris
営)10時〜18時
料)10ユーロ
www.bourdelle.paris.fr

réalisation et photos:MARIKO OMURA

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