【意外を楽しむ展覧会 3】ミリタリーとフランスの贅沢な匠。
Paris 2019.11.05
会場がパリ軍事博物館といささか厳しい名前なので一歩ためらってしまうかもしれないが、現在開催中の『Les Canons de l’élégance(エレガンス砲弾)』展はフランスの優れたサヴォワール・フェールやファッションを鑑賞する楽しみが待っている。
ジャン=ポール・ゴルチエのクチュールドレスが、なぜ軍事博物館に??
16世紀から現在にいたるまでの200点以上の展示品には、戦争の持つ暴力的なイメージから想像のできない美しさ、ファンタジー、エレガンス、贅沢があふれている。戦争は軍の権力、権威を誇る場で、また国王、貴族も関わっていることもあるので軍服、武器、防具、装備品、徽章……などに金銀細工、刺繍、羽根細工など多岐にわたる分野のハイレベルな匠が発揮されたのだ。展示の90%を占めているのは、博物館の所蔵品だという。このユニークな展覧会のために、収蔵庫で眠り続けていた多くの品が出番を出番を得ることができたのだ。展示品の中でも見逃せないのは、復元されたルイ16世のダイヤモンドの剣。王がそれを手にしたのは一度だけだが、王家の宝のひとつである。
2200の宝石が嵌め込まれたルイ16世の剣。1789年の全国三部会の際に、王が用いた。© Paris, Musée de l'Armée, Dist. RMN-Grand Palais / Anne-Sylvaine Marre-Noël
さまざまな国の徽章や功労メダルなど小さなオブジェも展示。©Paris, Musée de l’Armée Anne-Sylvaine Marre-Noël
自分だけでなく愛馬も美しくゴージャスに飾り立てる! ©Paris, Musée de l’Armée Anne-Sylvaine Marre-Noël
キメラの世界の精巧な彫り物が見事な1560〜1570年頃の円盾。裏側は柔らかな布で覆われている。
1660年頃の火打ち式銃に施された象牙細工。© Paris, Musée de l'Armée, Dist. RMN-Grand Palais / Anne- Sylvaine Marre-Noël
鍋からフォークまで、6名のゲストを食事に招く必需品を収めた元帥のコッヘル・トランク。右はネイ元帥の従僕の制服。
1560〜1570年頃のヘルメット。© Paris, Musée de l'Armée, Dist. RMN-Grand Palais / Tony Querrec
鞍、ブーツ、弾薬入れなど皮革工房の仕事がまとめられた一室。
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宝飾芸術を堪能できる剣、銃も多数だが、モード関係者がアイデアを拝借したくなるような軍服やアクセサリー類も豊富に展示されている。この興味を逆手にとり、最後の部屋ではミリタリーにインスパイアされたモードも紹介! ミリタリールックというジャンルがファッションにあるように、ユニフォームやそれにまつわるオブジェは無名有名に関わらずクリエイターたちを刺激してやまないのだ。ここはパリ装飾美術館? と感じてしまうほど、思いもかけない企画展といえる。
1890年頃のColdstream Guards鼓手の衣服。© Paris, Musée de l'Armée, Dist. RMN-Grand Palais / Anne- Sylvaine Marre-Noël
ペタン元帥にエコー・ドゥ・ナンシー紙が贈呈したクリスタルの剣(1941年)。
ピンクダイヤモンド、サファイア、エメラルドなどの宝石があしらわれた銃。シェリフあるいはモロッコの皇帝と呼ばれていたモロッコの統治者ムーレー・スリマンに寄贈するために、ナポレオン1世が発注した。1804年。
たとえばゴールドと刺繍の使用が認められたのは伍長から元帥までというように、制服には軍隊における地位を一目瞭然に示すコードが存在した。©Paris, Musée de l’Armée Anne-Sylvaine Marre-Noël
国王の衛兵のヘルメット。© Paris, Musée de l'Armée, Dist. RMN-Grand Palais / Anne-Sylvaine Marre-Noël
フェザー&ファーと題したコーナーは、華やかなレヴューの舞台にも似ている。派手な帽子の装飾には部隊、役職を表す役割があったそうだ。©Paris, Musée de l’Armée Anne-Sylvaine Marre-Noël
ドリス ヴァン ノッテンのラッフルコート(2015年秋冬)、ラフ シモンズの2001年のコレクションRiot Riot Riotからのアンサンブルなどを展示。
この展覧会を記念して、エカイユ柄のトートバッグで知られるフォーレ・ル・パージュから軍服にインスパイアされたGlory , Honor, Victoryというユーモラスな3種のバッグが発表された。1717年の創業で、王侯貴族のための猟銃など武具製造で有名だったメゾンならでは!
左から、GloryとHonor。各1,450ユーロ(Fauré Le Page / 21, rue Cambon 75001 Paris)
期間:開催中〜2020/1/26
Musée de l’Armée
Hôtel national des Invalides, 129, rue de Grenelle 75007 Paris
開)10時〜18時(11/1からは~17時)
休)12/25、1/1
料金:12ユーロ
www.musee-armee.fr/au-programme/expositions/detail/les-canons-de-lelegance.html
réalisation:MARIKO OMURA