イメージの変容、100の顔を持つマリー・アントワネット 。

Paris 2019.12.06

マリー・アントワネットが最期の10週間を過ごしたラ・コンシェルジュリーで、『マリー・アントワネット、イメージの変容』と題した展覧会が開催されている。異国オーストリアから未来のフランス国王のもとに嫁いできた14歳のマリー・アントワネット。贅を尽くしたモードに包まれた華やかな姿、母として幸福感に満ち足りた表情、処刑台に向かう威厳ある姿勢……王妃マリー・アントワネットは存命中から1793年10月16日に亡くなった後も現在に至るまで、映画、小説、広告、ビデオゲームなどで描かれ続ける、表現者たちにとって素晴らしい題材なのだ。

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バラを持つマリー・アントワネット。よく知られた王妃のイメージが展覧会のポスターに使われている。©CMN

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ラ・コンシェルジュリーは世界遺産のひとつ。もともとは王宮で14世紀後半に王が住まいを移し、建物は牢獄として利用されるようになる。フランス革命時は、革命裁判所がここに設置され、犯罪者の拘留場となった。

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展示会場内。

彼女は歴史上の人物の中で最高のセレブリティ。彼女のイメージが空想の世界でこれほどあふれかえるのは、なぜだろうか。それを複数の視点で解き明かす展覧会である。大きく5つのテーマに分けられ、彼女が閉じ込められていた牢獄の鍵、彼女の身の回りの品などを展示する「ラ・コンシェルジュリー」からスタート。締めくくりは、20年ほど前から顕著となった傾向である「王妃のカムバック」がテーマで、メインはソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』(2006年)とその原作となったアントニア・フレーザーによる伝記『マリー・アントワネット:ザ・ジャーニー』(2001年)である。宮殿の古い慣習に染まらず、私生活を守り、革命の犠牲となったひとりの若い女性という新しい視点を紹介。このテーマでは、池田理代子の漫画『ベルサイユのばら』(1972年)についてもコーナーが設けられている。

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『コンシェルジュリーでの王妃』(A. Sceffer / 1839年)©Philippe Berthé / CMN

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夫ルイ16世の処刑後、喪服を着てすごしたマリー・アントワネット。

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マリー・アントワネットが断頭台に上がる際に履いていた靴。カン美術館所蔵。©Patricia Touzar

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ソフィア・コッポラ監督『マリー・アントワネット』の世界を衣装やセットデザインなどとともに展示。映画の抜粋も会場で流されている。

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『マリー・アントワネット』のチーフ・セット・デザイナーを務めたのはアンネ・シーベルで、その時のセットデザイン準備のディテールも紹介。

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左は映画でマリー・アントワネットを演じたキルスティン・ダンストが表紙の「US Vogue」誌2006年9月号。クリスチャン・ルブタンもリミテッドエディション“マリー・アントワネット”を2008年に発表した。

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ジョン・ガリアーノによるディオールのクチュールドレス。2005年春夏コレクションより。王妃はモード界を刺激し続ける。

展示作品の中には王妃の気に入りの女性画家エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランによる肖像画も含まれている。また髪、身体、斬首と3つに分けられたテーマ「王妃のフェティッシュ」で展示されているのは、存命中から現代までの作品。現代アーティストたちの興味もそそる存在なのである。会場には王妃を主人公にした32本の映画の抜粋が見られる小部屋も。イメージの中で蔑まれ、悪女扱いされ、アイドル化され、非イデオロギー化され……国により、時代により、表現者により変容する王妃のイメージを、彼女が人生の最期を過ごしたラ・コンシェルジュリーにて発見、再発見しよう。

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『バラを持つマリー・アントワネット』(エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン/ 1783年)。©Jean Feuillie / CMN

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ボテロ(左)もピエール&ジルも上の肖像画にインスパイアされた作品を制作。

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宮廷着の王妃はバービー人形にもなった。

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王妃の船をのせた大きなヘアスタイルから生まれた作品『Wig With Sips』(Asya Kozina & Dmitriy Kozin / 2016)。

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王妃のボディも現代アーティストをインスパイアするテーマである。

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血なまぐさい斬首のテーマがニット、陶器……素材さまざまに。

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『王家の血、マリー・アントワネット † 1793、2000年』(アーウィン・ オラフ)。©Erwin Olaf

『Marie-Antoinette, métamorphose d’une image』展
期間:開催中~1/6
会場:Conciergerie, 2, boulevard du Palais, 75001 Paris
開)9時30分〜18時(月、火、木~日)、9時30分~20時30分(水)
休)12/25(水)
料金:9ユーロ

réalisation:MARIKO OMURA

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