クリスチャン・ルブタンの30年を楽しく辿る展覧会。
Paris 2020.02.26
2月26日、いよいよ幕を開ける『Christian Louboutin : L'Exhibition[niste]』展。エキシビション(展覧会)とエキシビショニスト(自分の一部を他者に見せること)の2語の掛け言葉のタイトルから、彼のセンスが漂い、好奇心をかき立てる。彼の想像の世界とインスピレーション源をお見せします、というルブタン肝入りの展覧会である。これが現在、国立移民史博物館を擁する12区のポルト・ドレ宮で開催されることが、いかに彼にとって大切なことか。これから始めよう。

ポルト・ドレ宮の1階広場にて、クリスチャン・ルブタン。©Courtesy of Christian Louboutin

1931年に建築されたポルト・ドレ宮。外壁の見事なレリーフは一見に値する。建物内で長いこと人目にふれずにいた場所も、この展覧会に際して公開されるようだ。©Palais de la Porte Dorée, photo Pascal Lemaître
この建物は、1931年に開催されたパリ植民地博覧会の会場として、地下の熱帯水族館も含めて建てられたアールデコ建築である。場所はクリスチャン・ルブタン少年が生まれ育ったパリの東の外れ、12区。
「子ども時代、しょっちゅうこのミュージアムに来ていました。僕が靴をデザインするようになるきっかけは、入口に掲げられていたハイヒールのデッサンに大きくバツをしたパネル。10〜12歳頃のことで、これは何だと頭をひねったのですけど、このデッサンが僕の靴に対するオブセッションの始まりとなったのです。当時のハイヒールが1930年代の建築物のモザイクや木のはめ込み細工が施された床を傷めるということからだったのですね、この禁止は」

クリスチャン少年の目に飛び込んだヒール禁止のパネル。©Christian Louboutin
その後2区に引っ越した彼は、しばらくこのミュージアムから離れることになる。建物の素晴らしさに惹かれて、再び彼が通うようになったのはここ10年。記念建造物に指定されているが、修復が必要とされる傷みよう。その美しさに子ども時代から接し、インスピレーションを彼に与え続ける建物に特別な愛着をもつクリスチャンは2017年にメセナを名乗り出たのである。修復はファサードからスタートし、目下は内部のサロン、家具……いずれ図書室もと長期間にわたるプロジェクトに取り掛かっているそうだ。
幼いクリスチャンの目に焼きついたヒール禁止のパネルから始まる12章からなる展覧会は、約30年にわたるクリスチャン・ルブタンのクリエイションのインスピレーション源を見せる。テーマは、レッドソール以前のアーリー・イヤーズ、トレジャールーム、ヌード、アトリエ、サジェスチョン&プロジェクション、ブータン・シアター、バイオグラフィー、ポップ・コリドー、フェティッシュ、空想のミュージアム。テーマからも普通の展覧会とはひと味違う、なんだか楽しいものが見られそうと、ワクワクさせる。

サバの皮とニシンの尾を使ったヒールを、美術館の熱帯水族館で撮影。

ポップアートにインスパイアされたシューズ「Pensée」。レッドソールがこの靴をきっかけに誕生した。


最後の部屋、“空想のミュージアム”での展示作品より。左はクロヴィス・トルイユ『La Voyeuse』, collection priv F ©DR 右はイヴ・サンローラン × クロード・ラランヌ ©Thierry Ollivier
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この展覧会の実現のためクリスチャンは職人やアーティストたちと多くのコラボレーションを行った。たとえばブータン・シアターのためには、愛するブータン王国のサヴォワール・フェールを生かした木彫りの巨大な柱をオーダー。バイオグラフィーの部屋では、ヴェネツィア・ビエンナーレで見て気に入ったニュージーランドのアーティスト、リザ・ライハナに依頼したデジタルフレスコ画に圧倒されるはずだ。クリスチャンの人生の鍵となった人々、場所がめまぐるしく登場し……語りきれないほどの要素が盛り込まれた展覧会である。

“アーリー・イヤーズ”展示室のステンドグラスはLa Maison du Vitrailに依頼した。展覧会のキュレーターを務めるパリ装飾美術館のオリヴィエ・ギャベ(左)と。

2019年、ブータンでアルチザンと。©Macassar Productions

14歳の頃、学校の帰り道のクリスチャン・ルブタン。父親は高級家具師だった。©Christian Louboutin. BMP
ヌードの部屋では、9色のヌードコレクションを変化させた革の彫刻が英国のデザイナーデュオ、Whitaker & Malemに任された。 ヌードカラーのヒールが最初に生まれたのは2006年。17世紀初頭の絵画に触発された、脚が長く見える視覚効果をもつ肌色だ。展覧会開催の発表の際にヌードにまつわる裏話がクリスチャンによって語られた。素敵な話なので、以下に紹介しよう。
「毎シーズン、僕は新作を世界のバイヤーたちに見せます。で、アメリカから来たバイヤーに“ヌード”を見せたところ、彼女はため息をついたんですね。そして、イラついたと言いました。彼女は“モードの世界でヌードというとベージュのことだけど、ヌードは肌の色。誰もがベージュの肌をしているわけではない”と。それで、明るい色から濃い色まで肌に合わせてヌードを複数色にしたんです。最初は5色からで、これを英国の新聞が記事にし、アメリカでは複数の分野でさまざまな色のヌードが登場しました」

ベージュだけがヌードにあらず。5色から始まったヌード・コレクション。©Jean-Vincent Simonet
会期:2月26日〜2021年1月3日
Palais de la Porte Dorée
293, avenue Daumesnil 75012 Paris
開)10時~17時30分(火~金) 10時~17時(土、日)
休)月、5/1
料金:12ユーロ
www.palais-portedoree.fr/fr/christian-louboutin-l-exposition
réalisation:MARIKO OMURA



