パリをアップデート シャンプーは粉、歯磨きは錠剤で! パリで話題のサステナコスメ。
Paris 2021.03.03
パリ支局長の髙田昌枝が、いまのパリで気になるモノやコトをピックアップ! 今回は、環境に配慮しながらも使い心地やデザインにこだわった、ふたつのスタートアップブランドをフォーカスします。
ビオのレストランや食材店だけでなく、量り売りの店や容器のデポジット制もめずらしくなくなったパリ。身体にも環境にも優しいことは、パリジャンにとって当然の価値観になっている。食だけでなく美容の世界でも、ビオや自然由来の成分はもちろん、トレーサビリティ、容器や輸送が環境に与えるインパクトを減らす取り組みも進行中。2020年の後半にスタートアップしたふたつは、そんなパリジャンの気持ちを代表している。
Yodi
「シャンプーの成分は80%以上が水。水を排除すれば有効成分のクオリティを保ち、保存料が不要になる」と考えたエレーヌ・アザンコは、軽やかな粉末タイプのシャンプーと洗顔料を考案した。粉末ながら繊細な泡立ちで、使用感もスッキリ。構成成分はそれぞれ11種以内というシンプルな配合だ。製品の成分を分析して健康への影響を評価付けする人気アプリYukaでも、100点満点の最高評価。容器は無限にリサイクルできるアルミ製。プラスチック製の蓋は、返却専用封筒で送り返すとリサイクルされる仕組みで、こちらも気が利いている。
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右上から時計回りに:ヨディの製品は肌や頭皮の常在菌を守るプレバイオティクスを配合。シャンプーは2種。アルガンオイル配合のシャンプー40g(約28回分)20ユーロ、 洗顔料は3種。炭入りの洗顔料は、泡立ちはやや弱いが、脂性肌もすっきり洗い上げる。ビタミンCとハイビスカスフラワーの洗顔料は優しい泡立ち。各30g(約22回分)各20ユーロ
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Hélène Azancot
美容業界で30年のキャリアを積む。クラウドファンディングのUluleで2020年7月までに目標の4.6倍の資金を集め、ヨディを立ち上げる。
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900.care
いっぽう、色のきれいな容器が目を引く900.ケアは、「浴室にはなぜこんなにプラスチックゴミが?」と考えたエムリックとトマ、ふたりのパリジャンが立ち上げたもの。自宅で水を加えて作るシャワージェルとハンドソープ、口内で噛み砕く錠剤タイプの歯磨き粉。こちらもYukaで93点の高評価だ。起業に利用したクラウドファンディングでは、なんと目標の200倍の資金を調達。予想をはるかに超える予約注文に、大車輪で製品発送を開始したところだ。
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噛み砕いたら、水に濡らした歯ブラシで磨く。2種類のミント風味。248個入り24ユーロ、専用の詰め替え容器は4色展開で5ユーロ
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入浴剤から着想を得たタブレットは、2個にお湯を加えて一晩置くと240mlのシャワージェルに。ハチミツ、ユリ、アロエベラの3種。2個入り× 4箱24ユーロ、ボトル5ユーロ。デオドラントとハンドソープも完成予定。
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Aymeric & Thomas
ふたりの出会いはビジネススクール。それぞれ投資会社勤務、起業経験ののち、900.ケアを共同設立。2020年12月から製品の発送を開始、マレ地区に初のポップアップも。
軽量で輸送のCO2排出量も抑えられる“水なし”のプロダクトは、理にかなっている。ただ、これまでの固形や粉末のコスメには、使い心地やデザイン性に魅力が欠けたものが多かったのも事実。サステナビリティが常識になったいま、エコだから地味、ではなく、“エコだから楽しい”製品作りの時代が始まっている。
*「フィガロジャポン」2021年3月号より抜粋
●1ユーロ=¥128(2021年2月現在)
photos : OLIVIER BARDINA(OBJETS), réalisation:MASAE TAKATA