唇に花を。植物染料の口紅、ル・ルージュ・フランセ。

Paris 2021.06.27

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6月17日、屋外でのマスク着用義務から解放されたパリ。さあ、口紅の復活だ。世界で唯一の植物染料の口紅を2019年9月に発表した「Le Rouge Français(ル・ルージュ・フランセ)」が活躍する時代が来た。もっとも、このブランドはそのユニークな発想から、女性たちが口紅をあまり必要としていなかったマスク着用義務時代でもおおいにメディアを賑わせていた。味はともかく、極端にいえば食べられる口紅、食べても危険のない口紅……話題を呼ぶのも当然だろう。

赤はアカネの根、ヌードは栗の木の幹……

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左:ル・ルージュ・フランセ創業者、エロディー・カルパンティエ。 右:口紅の開発にあたり5つの特許をとったそうだ。この色はアカネの根茎からのピグメントを使用した010 Le Rouge Français。

創業者はバイオテクノロジー・エンジニアのエロディー・カルポンティエ。妊娠中に、いったいどれだけの量の口紅を女性は体内にとりこんでしまっているのだろうかと、妊婦としてごく自然に疑問を抱いたのがル・ルージュ・フランセの出発点だった。女性の身体の健康のため、彼女は植物染料の口紅というアイデアを思いついたのだ。それから約1年後、ポップアップを開催して3色のお披露目をし、いまでは16色。たったひとりでスタートし、その後、企業家の夫が参加し、さらに……と現在は7名のチームに成長した。

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左:全16色。透明容器入りで45ユーロ。このヴァイオレットはブラジルの植物スオウがピグメントの012 Le Rouge Braziline。  中:レフィルは赤い容器入りで各25ユーロ。インドのサフランと呼ばれるターメリックのピグメントの035 Le Nude Zaatar。 右:ボームの050 Le Baume Nordgrøn。唇を守るバームはベースに、そしてグロス代わりに口紅の上から塗る使い方も。

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滑らかで塗り心地よく、発色もきれいな口紅。赤、ヌード、ピンク、ブラウンの4グループあり。赤はたとえば010 Le Rouge Français(左)、ブラウンはたとえばハスのピグメントの020 Le Brun Hanahasu。

クレオパトラもナイルのモロコシ属の植物からの染料を愛用していたというし、日本でもその昔、ベニと言ったら紅花……エロディーによると、それが1940年代に化学にとって代わられてしまったそうだ。先祖代々の手法を現代に甦らせた革新的プロダクト、これがル・ルージュ・フランセである。染料の採取は花、根、幹など植物によって異なり、またダマスカスのバラ、ポリネシアのハイビスカス、コルシカの栗……というように、植物の原産地はさまざま。彼女は常に染料のとれる植物を世界各地で探し求めている。ビオでヴィーガンなル・ルージュ・フランセでは、食べ物には使用が禁止されているものの、化粧品においては通常着色力アップのために含まれる酸化チタンは使用していない。成分は唇の栄養と回復効果のあるシアバター、ホホバオイルなど、それに唇を保護するためのワックス成分も米、キャンデリラなど植物ワックスのみ。またエシカルな観点から、採掘に児童労働搾取の可能性があるマイカを拒否。彼女によると植物の中には、輝きのある染料が取れるものもあるそうだ。

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左:フラッグシップはオーダー靴のブランドChamberlanのブティック内の一角に。アーティストのシリル・コンゴがテーブルのグラフィティを手がけた。photo:Mariko Omura  右:上段に植物のデッサン、中段にピグメント、下段に口紅を配した展示。

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ヒマシ油から生まれる透明容器入り

口紅だけに革新は留まらず。口紅の透明容器はプラスチックのように見えるけれど、これはヒマの種をベースにした植物性素材で、ガラス容器同様にリサイクルが可能。この容器もパッケージングもフレンチ・エレガンスを大切にデザインされている。外箱の中から姿を表すのは成分説明など解説書を4本の雄しべに見立てた折り紙。そしてその中央に口紅が1本の雌しべのように、という作りだ。また、まるで皮革のように見える赤い容器もあるが、これはリンゴジュース製造の際に廃棄される運命だったリンゴの皮を活用した植物レザーというのが信じられない。

エロディーによると、ル・ルージュ・フランセの購入者は20%が男性だという。愛する女性への贈り物、ママとなる女性への贈り物に最適な美しい品。昨年のクリスマスシーズン、素晴らしい売り上げだったというのも納得できる。口紅はチャージ式で45ユーロで、レフィルは25ユーロ。時代が求めるリュクスを誰もが入手できる価格といっていいだろう。

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左:折り紙状のパッケージング。photo:Mariko Omura  右:りんごの皮の植物レザーのケースの口紅は55ユーロ。

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口紅からアイメイクアップへ

コラボレーションにも積極的なブランドで、香りのある口紅を望む女性のために、香水ブランドとコラボレーションで香りのある1色(アリザリンヌ)をクリエイトした。母の日にはミス・フランスと組んで母性にちなんだ品を組み合わせたボックスを販売。またフレンチ・エレガンスを代表する存在として、ブランドアンバサダーを務めるのはパリ・オペラ座のエトワール、アマンディーヌ・アルビッソン。今後オペラ座のブティックでもエクスクルーシブな品の販売があるらしい。

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ブランドのアンバサダーを務めるパリ・オペラ座バレエ団エトワールのアマンディーヌ・アルビッソン。photo:Patrick Bellair/ Le Rouge Français/ Association 4 Couleurs

成長を続けるブランドだ。口紅に続いて6月にチーク&リップを発表した。これは名前の通り、唇と頬はもちろん、さらにアイシャドウとしても使える。もうじき販売がスタートするのはアイコレクションで、マスカラ3色とアイライナー3色。9月はアイペンシル、10月は……と新作の発表予定が続く。植物革命。その“パイオニアからリーダーへ”と目標を掲げるパワフルなエロディー。彼女の目はいまアジアに向いていて、まずは香港から制覇だという。日本への上陸はいつだろう……。

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頬に唇にそしてまぶたにチーク&リップ。2色あり各29ユーロ。photo:(右)Mariko Omura

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アイコレクションIndigo Céleste(左)。マスカラ(中央)は黒、ナイトブルー、紫系の3色(各38ユーロ)。アイライン(右)も同様の3色。

Le Rouge Français
(フラッグショップ c/o Chamberlan)
5, rue Rouget de Lisle 75001 Paris
営)11時〜19時
休)日、月
www.lerougefrancais.com
Instagram:@lerougefrancais

editing: Mariko Omura

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