11区の星付きレストラン、キ・プリュム・ラ・リューヌ。
Paris 2021.08.22
メルシーやメゾン・プリソンなどがあるバスティーユやレピュブリック方面というと、カジュアルなイメージで手頃なビストロや、若いシェフのカフェレストランなどを目指してゆくというイメージでは? そんな気の張らない界隈で、ミシュランの1ツ星レストラン「Qui Plume la Lune(キ・プリュム・ラ・リューヌ)」が密かな人気を集めている。
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2つの異なるタイプの空間が通りに面し、裏の厨房で繋がっているという珍しい造りのレストラン。“月をむしるのは誰?”という不思議な意味を持つレストラン名は、創業者リボーが感銘を受けたクリスティーヌ・カリエール監督のポエティックな映画『Qui plume la lune』(1999年)からとったものだそうだ。photos:Young-Ah Kim
このレストランを10年前に開いたジッキー・リボーから数年前に引き継いだのはシェフのジャン・クリストフ・リゼ。それまで5区の「La Truffière」のシェフでここで1ツ星を得ていた彼は、キ・プリュム・ラ・リューヌに移ってからもジッキー時代からの1ツ星をキープしている。ここはアラカルトはなく、ランチは3種のメニュー、ディナーは4種のメニューが待つレストランで、その内容はオーダーしてのお楽しみ。というのも、シェフは味覚の冒険のサプライズをゲストに体験してほしいと願っていることもあり、また、素材に合わせて料理をするので、さあ、今日は何の料理やら……?というレストランなのだ。でも心配ご無用。火加減はいかなる素材でもパーフェクトだし、味覚と食感の組み合わせも素晴らしい計算がなされている。キ・プリュム・ラ・リューヌのテーブルについたら頭を空にして、料理がサービスされるのを待つ。これがいちばんの味わい方なのだ。
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左: シェフのジャン=クリストフ・リゼ。 右: ビーフのカルパッチョ。photos:Young-Ah Kim
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左はタラ科の魚とズッキーニ、右はラングースチーヌ、アーモンド、シャーベット。添え野菜をはじめ、お皿の上を賑わすすべてが繊細な味でメインの食材を引き立てている。シェフが使う耳慣れない素材、調味料にも注目したい。photos:Young-Ah Kim
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デザートにいたるまで、味わい深く美しい。photos:Young-Ah Kim
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おいしかったアレをもう一度!と願っても、素材ありきのシェフなので特にシグネチャー料理は存在しないそうだ。ちなみにお気に入り素材として、サンスの肉屋Jean Denauxから取り寄せるAOP(原産地保護呼称)取得のシャロレー成熟牛をシェフは挙げる。味わえる可能性が高いのは、バドゥーヴァン・ビネガーと蜂蜜で艶をつけたフォアグラ、黒トリュフ入りラット芋のピューレ……。なお、ひと皿ごとのポーションは控えめである。従って、ひと皿+デザートというランチメニュー「Théodore」(35ユーロ。祭日を除く火〜金曜のランチのみ)はシェフの世界を手頃な価格で知ることができるけれど、大いなる空腹にはちょっと足りないかもしれない。キ・プリューム・ラ・リューヌに行くと決めたら、ぜひ複数料理のメニューに挑戦を。2皿+デザートは「Iphigénie」(60ユーロ。祭日を除く火〜土曜)、4皿+複数デザートは「Angèle」(90ユーロ)、5皿+複数デザートは「Lucie」 (120ユーロ)。
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プレッツェル風丸パンとハーブバターが添えられた、ある日のアミューズ。photo:Mariko Omura
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お任せ料理は苦手なものが含まれていたらという不安があるかもしれない。ある日のランチ、左のフォアグラに対し、肉を食べない客にはカシス添えスペルト小麦のリゾットがサービスされた。photos:Mariko Omura
50, rue Amelot
75011 Paris
tel: 01 48 07 45 48
営)12:00~13:30、19:30~21:15
休)日、月
www.quiplumelalune
editing: Mariko Omura