パリ、装飾芸術の旅 新生カルナヴァレ-パリ歴史博物館、お宅拝見的歩き方も。

Paris 2021.08.24

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マレ地区のカルナヴァレ博物館。今回の改修を任されたのは建築家のフワンソワ・シャティヨン、ノルウェーの建築家集団スノヘッタ。photo:Cyrile Weiner

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建物の外壁は合計4000㎡。これも美しく蘇った。左の金色のモザイク前に設置されているのはルイ14世騎馬像。photos:Mariko Omura

パリの歴史を物語るマレ地区のカルナヴァレ博物館。4年の歳月をかけた大規模な改装工事と作品の修復が終わり、1866年誕生のパリ最古の博物館は大きく綺麗になって6月に再開した。館全体、明るく温かみのある空間に変身。約4000㎡の広さに拡大されて、来場者を迎えている。展示作品の10パーセントは、身長110cmの子どもの視線に合わせられているという新しい試みも見られる。

先史からいまにいたるまでのパリの長い歴史が、時代順に展開される。内部は最初から最後まで歩くと合計1.5kmあって、見どころもとても多い。自分でテーマを決めて行かないと、常設展だけで80室あり3,800点という展示数に気圧されて、何を見ているのかわからなくなってしまう可能性も。たとえば、パリの装飾芸術を中心に見て回る、というのはどうだろう。これにテーマを絞るとパリで装飾芸術が花咲いた18~19世紀がメインとなる。パリへの興味は人さまざま。カルナヴァレ博物館の楽しみ方もさまざま! なお、常設展は改装後も入場無料のままというのがうれしい。

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パリの6月、地下鉄駅の通路を飾ったのは“パリの暮らしが戻ってきた!”とカルナヴァレ博物館の再開を告げるポスター。

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看板室

博物館の展示の始まり、それは看板の歴史だ。これは以前改装前に来た時に見た!という人もいるだろうが、展示数も増えているし、その奥にモダンな階段もできたのでこのスペースを素通りしないように。パリの通りに番号がない時代の貴重な目印だった看板。ワイン屋、旅籠、パン屋、武器販売店……それぞれの店が自由に個性を発揮していた時代の街をそぞろ歩きする気分を味わえるように、と1914年にこの部屋が開設された時と同じ展示に戻されたそうだ。さらに改装工事に際して全館を空にする際、所蔵品のリストに記載されていない通り名の表示板が発見され、それもここにプラスされた。

この後、展示は先史、古代、中世・ルネッサンス、17世紀、18世紀、革命、19世紀、20世紀から現在という時代順となる。

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左: 博物館のイントロダクション的に看板の展示から。奥に館内に3つ設けられたモダンな階段のひとつが見える。 右: Adolphe-Léon WilletteによるモンマルトルのキャバレーLe Chat noirの看板。1881年頃。photos:(左)Antoine Mercusot(右)©︎musée Carnavalet - Histoire de Paris

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看板室の続き。ファーマシーの外観、眼鏡屋の看板……。photo:Mariko Omura

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18世紀、ユゼス館のボワズリー

金色に輝くボワズリー(木工細工)に囲まれるのは、18世紀前半のユゼス館のサロンの再現だ。かつては1階で展示されていたのが、今回2階に移動。これによって天井の高さ、窓の配置、壁の上部の装飾との関係など、すべてユゼス館の時代と同様にすることでボワズリーが展示できることになった。さらに4カ所に設けられた鏡によって、その美しさに来場者はより魅了される。館内の展示で、1000㎡と最も広いスペースを占めているのは18世紀。特権階級が贅沢な家具やオブジェを求めたため、高度な技を持つ職人たちが遺した傑作は数え切れないほど。館内では、このほかにもボワズリーの傑作の展示を見ることができる。

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モンマルトル通りに1768年に建築されたユゼス館からのボワズリー。photos :(上段)Antoine Mercusot、(下段)Mariko Omura

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18世紀、画家フランソワ・ブーシェとそのアトリエが手がけた個人宅の内装

フランソワ・ブーシェのお気に入りの彫版師のひとりであるジル・ドゥマルトー。彼はイル・ドゥ・ラ・シテの自宅のサロンの装飾を。1765年頃にブーシェに依頼した。ブーシェが作り上げたのは動物、花、植物たちが満たすファンタジーあふれる田園の光景。そこにはジャン・オノレ・ドゥ・フラゴナールやジャン・バティスト・ユエといった彼の弟子たちの仕事も見いだすこともできる。小さな部屋に家具を配し、見る者を18世紀の暮らしへと誘う。

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photos:Mariko Omura

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19世紀、ヴェンデル家の舞踏の間

天井の高さが5.33mという87㎡の空間を満たす、壮大でパワフルな装飾に驚かされる。1924〜25年、シュルドゥヴァル=ドゥマルシー館に暮らす実業家モーリス・ドゥ・ヴェンデルの依頼で舞踏室に壁画を制作したのは画家のホセ・マリア・セール。シャネルの女友達ミシア・セールの3番目の夫である。彼はロックフェラーセンターの壁画でも有名で、本人もかなり大柄だったらしいが作品も巨大なのだ。40年前、邸宅が売りに出された際にパリ市がこの装飾を購入し、カルナヴァレ博物館で展示していた。1920年代の装飾芸術を代表するテーマとテクニックで知られるこの装飾は、今回修復され、さらに9月には開館中に来場者の前で専門学校の最終年の生徒たちの手による修復の続きが行われる予定だ。

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1920年代の装飾芸術を代表するテーマとテクニックで知られる作品だ。photos:(上段)Pierre Antoine、(下段)Mariko Omura

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20世紀、アルフォンス・ミュシャによるアールヌーヴォーの宝石商フーケ

ロワイヤル通り6番地に20世紀初頭にあったジュエラーFouquet(フーケ)のブティック。アルフォンス・ミュシャがファサード、内装、什器にいたるまで彼の世界を満開させた空間だった。2代目のジョルジュ・フーケから1901年にミュシャに依頼されたのだが、1923年には解体されてしまった。カルナヴァレ博物館に1941年に寄贈され、1989年から展示されている。今回、新装カルナヴァレに再び美しく蘇った。

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210813-carnavalet-13.jpg外観も含め、アール・ヌーヴォーのブティックを訪れるタイムスリップの幸せをこの博物館で味わって。photos:Mariko Omura

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20世紀、マルセル・プルーストの寝室

カルナヴァレ博物館は作家マルセル・プルーストが所有していた家具やオブジェを多数点所蔵している。彼の寝室の再現は改装以前もあったけれど壁のくぼみを活用しただけの10㎡という小さなものだった。それが、いまや40㎡のスペース。彼が母を亡くした後、1906年から22年の間に暮らした3カ所の自宅からの再構築。彼が愛用していたベッドカバーの布の見本があり、ベッドカバーの色、カーテンの色の再現に役立ったそうだ。『失われた時を求めて』の多くをここで書いたという彼のベッド、さまざまなオブジェが展示され、彼の世界に浸ることができる。ポール・ナダールが撮影した彼にインスピレーションを与えた友達、近親者などが会場に映写され、お気に入りの音楽家のひとりレーナルド・アーン作曲の抜粋が流される演出も。

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photos:(上段)Pierre Antoine、(下段)Mariko Omura

Musée Carnavalet - Histoire de Paris
23, rue de Sévigné
75003 Paris
開)10:00〜18:00
休)月
料:無料(常設展)
www.carnavalet.paris.fr

editing: Mariko Omura

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