文化遺産の日、ピノー・コレクションとバレンシアガに惚れ惚れ!

Paris 2021.09.30

毎年、9月の第3週末に開催されるヨーロッパ文化遺産の日。日頃一般人には閉ざされている場所の扉が開かれ、無料で見学できるとあって、待ちわびる人が年々増えている。38回目の今年の開催は9月18~19日だった。ケリングはパリ7区、セーヴル通り40番地に移転以来、6年前からこのイベントに参加。ケリングの本社、そしてケリングに属するバレンシアガの本社が占めるのは旧ラエネック病院で、その建築は17世紀に遡る。不治の病に冒された人々を収容し、聴診器を発明したラエネック医師の名前に変わったのは19世紀のことだ。今回、旧病院の敷地内の礼拝堂に例年通りピノー・コレクション所蔵のアート作品が、そしてバレンシアガ本社内ではアーカイブピース50点が展示された。建築、アート、モードの3つを鑑賞する楽しみに、来場者たちは時間を忘れて大喜び。来年、パリ旅行を考えているなら、この時期を狙ってみるのもいいだろう。

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左: ルイ13世の時代に建てられた敷地内の礼拝堂では、毎回ピノー・コレクション所蔵のコンテンポラリーアートを展示。 右: 礼拝堂の窓を飾るステンドグラスが美しい。photos:(左)Eric Sander、(右)Mariko Omura

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歴史建造物に指定されているバレンシアガ本社内での展示。©️Eric Sander

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ラ・ブルス・ドゥ・コメルスでピノー・コレクションが所蔵するコンテンポラリーアートの作品が見られるようになったとはいえ、膨大な作品数の中の一部に過ぎない。このヨーロッパ文化遺産の日で毎回公開される点数は少ないが、そのセレクションは所蔵品のバラエティの豊かさ、充実ぶりを物語る。「Paysages(風景)」とテーマされた今回の展示は、礼拝堂の中央に巨大なPaul Rebeyrolle(ポール・レベイロール/1926年~)の『スペインの風景』(1978年)が。この455×515cmの巨大な作品は、昨年の文化遺産の日に際して礼拝堂に展示されて以来、その場をずっと占めていたそうだ。そして今年、彼より年若い2名のアーティストによる風景作品がその左右の空間に配置され、3名のアーティスト間の対話が繰り広げられた。

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ポール・レベイロール『Vegas del condado』(1977年)。前に立つとまるで水の飛沫を浴びそうな、キャンバスを埋める力強い自然。岩には土、植物の根などが用いられ立体的だ。©️Eric Sander

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2名のアーティストとはHélène Delprat(エレーヌ・デルプラ/1957年~)とWang Yancheng(ワン・ヤンチェン/1960年~)。彼らはレベイロール同様にスケールの大きな絵画を制作し、そして、彼らの風景画にも現実と空想の両方が描かれている。彼らの作品を時間をかけて眺めていたくなるのは、作品の大きさゆえというより、彼らの空想の世界をともに生きてみたくなるからだろう。デプラの作品は『What the Knight covered in ashces told on his return』(2015年)と『Where hydraulic and bizarre wonders are found』(2016年)。タイトルに導かれるまま、前者では灰まみれでした騎士が遭遇した出来事を探し、後者では水中の奇妙な生物を追いかけて……と。ヤンチェンの2作品はどちらも2016年に制作された『無題』で、サイズはどちらも3つの画布を繋げた190×570cm。グレーブルー、オークルイエローといった色が画布上に詩情豊かに揺れ、クロード・モネの睡蓮がさらに水面に映り込んだような印象を受ける。

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左: エレーヌ・デルプラ『What the knight  covered in ashes told on his return』(2015年) 右: 『Where hydraulic and bizarre wonders are found』(2016年)。映画、音楽、文学、哲学など作家が持つ知識、それらからのインスピレーションが見てとれる2作品だ。©️Eric Sander

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左: ワン・ヤンチェン『無題』(2016年) 右: ワン・ヤンチェン『無題』(2016年)。どちらも作品内、色彩と動き、ピグメントと光、流動性と密度がぶつかりあう。繋げられらた3つのキャンバスは、それぞれ彼の人生、思考、魂を表現。©️Eric Sander

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バレンシアガ本社では、クリストバル・バレンシアガが1938年から突然メゾンを畳む1968年までに発表した50点のプロトタイプが展示された。これらは彼による49回のクチュールコレクションからのセレクションだ。今年7月にアーティスティック・ディレクターのデムナ・ヴァザリアによってオートクチュールコレクションが発表されたことは記憶に新しいが、これが50回目ということになる。会場では壁一面のスクリーンで、このショーのビデオが流され創業者クリストバル、そしてデナムの並外れた創造性を、来場者は同時に発見する機会となった。ちなみに展示された50点はクリストバルの先鋭的な美意識を物語るもので、ボリュームや素材の使い方などデナムのクチュールコレクションにインスパイアを与えたピースである。

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左: クチュールメゾンをクリストバルが開いたのは1937年。この2点はその直後のコレクションから。 右: 1968年、プレタポルテが台頭。74歳のクリストバルはメゾンをクローズする。photos:Mariko Omura

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1940年代のクチュールピース。©️Eric Sander

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日頃見ることができない貴重なアーカイブピースがずらりと。©️Eric Sander

ヨーロッパ文化遺産の日の期間はたった2日。パリ市内で訪れることができる場所は複数あれど、とても回りきれない。歴史、モード、アートの3本柱で来場者を迎え入れるケリングを逃すのは惜しいので、ツアーの初日の最初にこれをプログラムしておこう。

editing: Mariko Omura

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