昔のサマリテーヌ・ドゥ・リュクス、いまはキンプトン・サントノレ・パリ。

Paris 2021.10.08

いま、パリ市内、2024年に開催予定のオリンピックに向けての建築ラッシュである。上空からドローンで撮影したら、建築現場のクレーンがいったい何機見られることやら……。1867年に世界万博がパリで開催されると決まった時、それに合わせて海外から集まる人々を迎えるべく、ナポレオン3世がホテルの建築を奨励。パリ・オペラ座周辺が開発されたという時の活気って、こんな感じだったのだろうかと思わせる。というのも、その結果1862年に生まれたル・グラン・オテル(現在のインターコンチネンタル・パリ・ル・グラン)の近くに、フランス初のキンプトン・ホテルズ&レストランがオープンしたせいだろう。

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キンプトン・サントノレ・パリのファサード。通りの向かい側に立って、愛でよう。なぜサントノレと名付けられたかというと、これはパティスリーの名前であり、また作家オノレ・ド・バルザックの名前でもあり、とてもフランス的だからだ。©️Jérome Galland

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キンプトン・サントノレ・パリができたのは、かつてサマリテーヌ・ドゥ・リュクスがあった建物だと聞かされると、そんなデパートがあったのか?と、驚くのだが……それでホテルのアールヌーボーの外観の謎が解けるというものだ。16年ぶりに再開し、いまパリで最も話題を集めるデパートであるセーヌ河に面したラ・サマリテーヌ。かつてここは、なんでも揃うデパートとして幅広い年齢層を集め、庶民的なイメージが強かったため、サマリテーヌ・ドゥ・リュクスの建築が1914年に始まり、1917年に開業したのである。サントノレ通りやオペラ座などにやってくる富裕層を対象に、名前の通り贅沢品を集めたデパートとして1970年代まで営業は続いたそうだ。ホテルの前に立って、花のモチーフのカラフルなセラミックで飾られたファサードを見上げてみよう。サマリテーヌ・ドゥ・リュクスもフランツ・ジュルダンが建築したのでセーヌ河のデパートとファサードの装飾が同じで、花をデフォルメしたモチーフのバルコニーともどもファサードは歴史建造物指定されている。デパートの閉店後、建物は銀行の管理業務事務所として使われていたが、その左右の建物も合わせて、キンプトン・サントノレ・パリのオープンに向けて工事がスタート。それから約9年後、8月23日にキンプトンホテル・サントノレ・パリがエレガント、クール、リュクスを謳い文句に開業したのだ。

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セーヌ河に面したラ・サマリテーヌのファサードと同様のアールヌーボーのファサード。歴史的建造物として指定されているので、取り壊されることがない。©️Jérome Galland

建物内、階段も歴史建造物指定されているため、そのまま残されている。高級デパート時代、この階段でクチュールのショーなども行われたのではないかと想像できる優美で壮大な階段だ。また当時のエレベーターは取り壊し可能だったのだが、クラシックな美しい姿はそのまま残されている。ホテルのゲスト用には新たにモダンなエレベーターが稼働していて、このクラシックなエレベーターは中にテーブルと椅子が配され、ホテルに入ってきた人々の目を楽しませる要素だ。

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左: 大階段。こちらも保存が保証されている。 右: デパート時代のエレベーターはミニサロンに変身。©️Jérome Galland

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客室は26のスイートを含め、合計149。最近開業のホテルの中ではかなり大型である。このホテルのオープンにあたって3名の建築家が関わっているが、客室とパブリックスペースを任されたのはシャルル・ザナだ。外観のアールヌーボーに対し、ホテル内に彼がもたらしたのはアールデコスタイル。個人宅を多く手がけている彼は、寛ぎ感のある快適な空間作りでは定評がある。客室は白がメインで、カーテンやランプシェードに彼は黒を効果的にミックス。これはフレンチエレガンスを象徴するガブリエル・シャネルへのオマージュだという。ゆったりとしたバスルームも白が基調で清潔感があふれる。わずかに色ガラスを用いて、モンドリアン風のグラフィックな扉がアクセントを添えている。

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キャプシーヌ大通りに面した部屋。窓枠のブルーが建物の歴史を物語る。室料は450ユーロ〜。©️Jérome Galland

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スイート(1,000ユーロ〜)にはキッチン付きもある。白い空間に黒のアクセント、コンテンポラリーアート……現代的な客室は外観のアールヌーボーからは想像できない。photos:(左)Mariko Omura、(右)Jérome Galland

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グラフィカルでモダンなバスルーム。アメニティは「Codage(コダージュ)」を使用。©️Jérome Galland

客室および通路などのパブリックスペースに、現代アート作品の額を多数掛け、ザナは自宅的雰囲気を作り上げた。これはラ・サマリテーヌを設立したコニャック・ジェイ一家がアートコレクターだったことにインスパイアされてのことで、アメリー・デュ・シャラールが経営するアートギャラリーのメゾン・ダールが扱うアーティストの中から、彼は作品をホテルのために厳選した。なおホテルの中2階には、ザ・ライブラリーと呼ばれるキンプトン・ホテルに共通のラウンジスペースが。ここでは17時からソーシャルアワーが始まり、ホテルのゲストたちはアペリティフを飲みながら交歓の時間を過ごす。

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宿泊していなくてもレストラン、スパ、プールへ

ホテル内、レストラン、ルーフトップのバー、地下のコダージュのスパとプールは宿泊客以外にも扉が開かれているのがうれしい。地上階のカリフォルニア料理のレストラン「Montecito(モンテシート)」はホテルのゲストが朝食をとるスペースでもあるので、早朝から営業。ヘルシー&グルマンな料理は早速パリっ子を魅了し、ランチタイムには続々と界隈の若いエリートたちがロビーを抜けて、レストランへと集まってくる。奥には広々としたテラス席が広がるレストランだ。奥に進む際は、リビングルームと呼ばれる和みの時間を過ごしたくなる地上階のレセプションフロアの魅力も味わいたい。

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コダージュのスパと同じく地下フロアにあるプールは、ホテルにしては珍しく時間利用(50ユーロ/1時間)ができる。photo:Mariko Omura

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パリでいちばんおいしいカリフォルニア料理と噂されるモンテシート。©️Thomas Deron

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肉食人もベジタリアンも満足させる健康的なカリフォルニア料理を。フィンガーフードも豊富に揃い、カジュアルなレストランだ。営業は日曜も含め、7時〜11時、12時〜14時30分、19時〜23時(金、土 19時~24時)。©️TheTravelbuds

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ルーフトップのバー「Sequoia(セコイア)」では、見晴らしのよさに驚かされる。エッフェル塔に迎えられ、ぐるりと周ると目の前にオペラ・ガルニエが。ノートルダムもサクレクール寺院も、とパリを360度で堪能できる。奥で目に飛び込んでくるのは、バジルをはじめとしたハーブ園の緑だ。ここは天気のよい日、17時からパリの空の下でタパス、ドリンクを楽しめる。ちょっと夢のようなひと時を求めて11階へ!

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ルーフトップのセコイア。営業は17時〜23時(水、木 17時〜24時 金、土 17時〜25時)。©️Jérome Galland

Kimpton St. Honoré Paris
27-29, boulevard des Capucines
75002 Paris
www.kimptonsthonoreparis.com
@kimptonsthonore

editing: Mariko Omura

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