ゲラン本店で、自然素材のコンテンポラリーアート展開催中。

Paris 2021.11.03

コンテンポラリーのアートフェア「FIAC(フィアック)」の開催に合わせ、毎年パリのシャンゼリゼ大通りにあるゲランの本店でもアート展が開催される。14回目の今年は『When Material becomes art by Guerlain』をタイトルに、世代も国籍もさまざまな21名のアーティストの作品を展示中だ。キュレーターは美術史家のキャロリーヌ・メッセンシー。フィアックは4日間で終了したが、こちらは11月14日まで展示が続けられる。これに限らずアート関連の展覧会はゲラン本店では定期的に開催されていて、たとえば4月には女性写真家展が行われた。

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シャンゼリゼ大通り68番地のゲラン本店。かつて創業者のゲラン一家が暮らしていた建物だ。photo:DR

ブティックの3フロアを使っての展示。まずは1階のブティックで歴史建造記念物指定されているスペースの中央に据えられたスペイン人アーティストNacho Carbonell(ナッチョ・カルボネル)のニットを素材にした『Table Cocoon 16(44/ 2016)』に迎えられる。アート展に際しては、日頃は一般公開されない貴賓室のサロン・ボワズリーも会場として開かれ、今回はこの一室に現代のあらゆる分野で欠かせない要素であるアップサイクリング的作品が集められた。中央のテーブルには、見る者に奇妙な不安を抱かせる『loup du 02/03/18(狼)』(2018年)が。これはLionel Sabatté(リヨネル・サバテ)の作品で、地下鉄シャトレ駅で集めた埃を素材に制作されている。灰、木の切り株、石炭といった一種の生体験の痕跡を持つ素材を彼はこの数年扱っているそうだ。貴賓室の壁を飾るのはアフリカ人アーティストCalixte Dakpogan(カリクシト・ダクポガン)がブリキなど廃材を集めて制作したマスクだ。そのひとつ隣りには、巨匠César(セザール)が殺虫剤の缶を圧縮した1970年の作品が。

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左: Nacho Carbonellの生きているような作品『Table Cocoon 16(44/2016)』。 右: 天井が鏡のスペースに展示されているのは、白蝶貝が輝くLee Bulの『Perdu XL』(2020年)。photos:Mariko Omura

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2階のボワズリーが美しい貴賓室。テーブルに埃が素材の狼の彫刻が置かれている。photo:Mariko Omura

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左: セザールの作品。César『Compression ,1970』 Courtesy Galerie GP & N Vallois, Paris. DR  右: 素材はプラスチック、アルミニウム、銅、ガラス。Calixte Dakpogan『Ly-Sakete』(2009年) Courtesy Galerie MAGNIN-A, Paris .photo Caliste Dakpogan

蜂に関わる素材を用いて制作した作品も展示されているのは、ゲランが企画するアート展ならではだろう。ひとつはTomas Libertiny(トマス・リベルティニィ)の『The Honeycomb Amphora』(2020年)。フォルムはメトロポロタン美術館所蔵のアンフォラから。6万匹の蜂が制作に関わっていて、これは“蜂によって作られた”彫刻ともいえる作品なのだ。もう1作はCéline Cléron(セリーヌ・クレロン) の『La Régente』(2006年)。この彫刻の素材は布の16世紀の円形ひだ襟、ハニーワックス、はちみつ……。ブティックの中での開催とは思えないほど、見どころたっぷりの展覧会である。

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左: Céline Cléron『La Régente』(2006年)。Collection Maison Guerlain , Paris。Courtesy Galerie Papillon, Paris 。 右: Tomas Libertinyの作品。photo:Mariko Omura

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地下はビデオアートの会場だ。左はLauren Moffatt『Compost VIII 2021 NIt asi te voluptis doluptibusu autatem quaspicit omni cum 』Courtesy Lauren Moffatt、右はSabrina Ratté 『Florescend ,2021』Video 4K Courtesy of Sabrina Ratté et Galerie Charlot

『Quand la matière devient l’art (When Material becomes Art)』展
Guerlain
68, avenue des Champs-Elysées
75008 Paris
営)11:00〜20:00(月~土) 12:00〜19:00(日)
無休

editing: Mariko Omura

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