レポシだからクリエイトできたメイプルソープ コレクション。
Paris 2021.11.18
写真家ロバート・メイプルソープ(1946~89年)。パリではいまの世代の多くが、芸術か猥褻か?と世間を騒がせた彼の写真によってではなく、パティ・スミスが彼との20年間を綴った自叙伝『ジャスト・キッズ』でその名前を記憶にとどめたという。
「Repossi(レポシ)」のクリエイティブディレクターのガイア・レポシがメイプルソープの写真を写真を敬愛し始めてから初めて彼の作品を購入したのは、10年前に遡る。ソフィア・コッポラがキュレーションした展覧会で、椰子の木を撮影した彼の『Puerto Rico, 1981』にひと目惚れしてのことだった。こうして関係が始まったメイプルソープ財団から、彼女に素敵なオファーが舞い込んだ。3年前のことだ。1965年から68年というメイプルソープがキャリアの初期にビーズやさまざまなオブジェを使って制作していたジュエリーを再解釈してほしい、と。
左: ロバート・メイプルソープがクリエイトしたジュエリーをつけた彼とジェイ・ジョンソン。1970年。 右: メイプルソープのジュエリーがドクターズ・バッグからこぼれ落ちるプロモーションイメージ。1970年。©️Valerie Santiago
自分、母、仲間たちのために彼はストリートで拾った廃材や既製品などを素材に、その豊かな才能と創造性を駆使してジュエリーを作っていたのである。亡くなった時、工具ボックスにそうしたジュエリーがぎっしりと詰められていたそうだ。幸運にもガイアは財団から、資料を含め150点以上のアーカイブピースにアクセスを得た。こうしてロバート・メイプルソープ財団とのコラボレーションによって生まれたのが、今年の5月、ニューヨークのドーヴァー・ストリート・マーケットで発表したハイジュエリーの「レポシ/ロバート・メイプルソープ コレクション」である。ガイアは「彼の天才的な美意識と、彼が組み立てた美しいアイテムへのオマージュです」と、このコレクションについて語っている。
ロバート・メイプルソープ財団におけるガイアの3年間のリサーチ。Mapplethorpe Works © Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission. ©️Jeremy Everett
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レポシのためのインスピレーションを写真のみならず、芸術全般そして建築に求めてメゾンのイメージの活性化に役立たせている彼女。『レポシ/ロバート・メイプルソープ コレクション』はメイプルソープと同じく伝統的なジュエリーの概念を打ち破り、独自の美学を追求するガイアの姿勢が込められた、8点のハイジュエリーのコレクションである。反復的スタッキングを始め、彼女の就任以降築き上げられたブランドが得意とする技術がこのコレクションにも見いだせる。コレクションのテーマは「Relic Claw(レリック クロー)」「Triptych Heart(トリプティク ハート)」「Americana Flag(アメリカーナ フラッグ)」「Chain (チェーン)」「Mechanic(メカニック)」そして「Jetty(ジェッティー)」の6つ。ジュエリーはフランスあるいはイタリアにおいて手作業で成形、組み立て、セッティング、研磨されている。ガイアがアートに抱くビジョンを支えるのは、レポシで継承されるノウハウと高度な技術。この両者の組み合わせにより、ヴァンドーム広場のほかのジュエリーと一線を画すクリエイションが誕生するのだ。なお、このコレクションのジュエリーには全て“REPOSSI/ROBERT MAPPLETHORPE”の刻印がなされている。
左: 財団が所有するメイプルソープのクリエイション。 © Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.©️Jeremy Everett 中: インスパイアされたガイアによるネックレスのクロッキー。©️repossi 右:「レポシ/ロバート・メイプルソープ コレクション」から、直径の異なる5種類のチェーンのネックレス。ホワイトゴールドに1026個のホワイトダイヤモンドと221個のグレーダイヤモンドがパヴェされている。
左: メイプルソープが撮影したリサ・ライオンの写真がインスピレーション源となった、イエローゴールドとブラックゴールドを組み合わせたアメリカーナ・フラッグ・リング。写真はLisa Lyon, 1982 © Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission. Flag dress by Jean-Charles de Castelbajac. 中: メカニック・リング。メイプルソープがネックレスに使用したハードウエアにオマージュを捧げる一点で、モーターをイメージしてヒンジによって動くデザインだ。 右: ジェッティーのトリプル・リング。シンプルなリングおよびシンプルなブレスレットもある。写真は“Flowers” Blue Rose, 1987 © Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.
左: トリプティク ハート。メイプルソープのコラージュと彼の作品に登場する「愛」がテーマだ。片面はレポシのハイジュエラー的仕事としてパヴェダイヤモンドが施され、もう片面はメイプルソープのラフな面を表現すべくプレーンなゴールドだ。写真 ©️Robert Mapplethorpe Foundation 中: レリック クロー。5種の異なる合金で構成されている。カニの爪はホワイトゴールド。 右: ピンクゴールドのリング「ジェッティ」。この名前は自由、逃避、放棄を象徴している。写真 Orchid, 1987 © Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.
この「レポシ/ ロバート・メイプルソープ コレクション」の次のカプセルコレクションもすでにクリエイトされ、9月末から10月頭にかけてのパリコレ期間中に発表された。来年の発表ということなので、まだ内容はマル秘。こちらも楽しみにしつつ、まずは11月18日から「レポシ/ロバート・メイプルソープ コレクション」を日本で唯一取り扱う伊勢丹へと!
editing: Mariko Omura