16区、住民が子ども時代から愛するPVH。新しい内装、新しい料理で。

Paris 2021.12.08

PVH（ペー・ヴェ・アッシュ）というのは、16区のヴィクトル・ユゴー通りにある「Petit Victor Hugo（プティ・ヴィクトル・ユゴー）」の略称だ。1960年代に生まれ、16区、そして郊外のヌイイーも含めてパリの西部の住民たちに長年愛されていたブラッスリーである。子ども時代に通った客が成長し、自分の子どもたちを連れて……家族的雰囲気も漂うけれど、どことなくシックで、ちょっぴりスノッブな、いかにも高級住宅地16区的な伝説の店だった。2年前に扉を閉ざした時は大勢を悲しませたけれど、今年10月、シーフード・ブラッスリーという21世紀バージョンに変身して再開した。

左: シーフード・ブラッスリー、プティ・ヴィクトル・ユゴー。　右: 海の幸の盛り合わせ。photos：Romain Ricard

かつての常連たちを安心させるのは、見慣れた昔のままの磨きのかかったイノックスのファサード。一歩中に入ると、新しい内装に迎えられる。手がけたのはローラ・ゴンザレス。パリ西部に位置するスペースの広いブルジョワシックな商業空間の仕事を、過去に多数こなしている室内装飾家だ。レストランに入っただけで楽しい気分になる、カラフルな70年代タッチが広がる空間。ヴァロリスの陶器、ラタンの椅子などが温かみを添えている。すっかり様変わりした内装だけど、創業者がこの店に作り上げたグラマラスでアーティな雰囲気が保たれているので昔を知る人にとっても居心地がよい。ソファ席でゆったりとした食事、向かい合わせでふたりだけのランチ……用途に合わせて、いろいろな席で異なる景色を楽しみたい店といえる。

地上階のさまざまなコーナー。左: ローラ・ゴンザレスは天井に鏡を多用し、錯覚の遊びを空間に生み出している。　中: カジュアルなベンチ席。　右: 壁画のデザインもローラ・ゴンザレスが手がけた。photos：Romain Ricard

女性バーテンダー、アデル・ファルドーが担当する1階のバー。2階には吹き抜けのバーを囲むように席が設けられている。photos：Romain Ricard

ローラ・ゴンザレスはたくさんの色を使って、70年代の華やかでアーティな雰囲気をクリエイトした。ランチメニューは、前菜+メイン、メイン+デザートが25ユーロ、前菜+メイン+デザートが29ユーロ。photos：Romain Ricard

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料理はシーフードのブラッスリー料理。カキ、エビ、貝などフレッシュな海の幸を盛り合わせたプラトーがメニューの最初に並んでいる。それに続く前菜、メインはシーフードファンには選びきれないほどのチョイスだ。なお前菜には卵料理が1点、メインには肉料理が3点あり、さらにトリュフのリゾットもあり、そちらもいささか気になってしまうかもしれない。シェフはバスク地方出身のサンドリンヌ・エステーヴ。彼女は近郊から取り寄せる野菜、新鮮な魚介類にこだわり、当然ながら季節の素材に合わせてメニューを変えてゆくそうだ。テーブルに届いた時はけっこうボリュームがあるように見える料理も、クオリティの高い素材と軽い味付けなのでおいしく最後までいただける。デザートはプロフィットロールやチーズケーキなど。新生PVHには昔の常連のみならず、パリ西部の住民のみならず、パリ市内いたるところから客が集まってくることになるだろう。