Hot from PARIS いまパリで起きているコト 大統領選で生まれた流行語?「脱構築した男」とは。

Paris 2021.12.14

2022年4月の大統領選を前に、フランスでは各党派の候補者選びが進行中。連日のように候補者の発言がメディアを賑わせている。なかでも、9月末にテレビ番組で放送されたサンドリーヌ・ルソーのひと言は意外な形で話題になった。自然も女性も、権力を持つ男たちに利用され、踏みにじられているとする"エコフェミニズム"の主張を展開するルソーは、「"脱構築"することは差別のある社会を変えるために不可欠のステップ」とし、「マクロン大統領は差別を脱構築していない」「私自身は脱構築した男性(Homme Déconstruit/オム・デコンストリュイ)と暮らしており、大変幸せ」と発言したのだ。

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©ZUMA Press/アフロ
大統領選候補だったサンドリーヌ・ルソー。候補選には敗れたが、脱構築という言葉を広めた意味では勝者?

突然現れたこの「脱構築した男」という言葉に、さっそくSNSが反応。Détruit(デトリュイ/破壊された)に語感が似ているせいもあってか、解体された男をイメージしたパロディ画像が次々に登場。さらに元男女平等相のマルレーヌ・シアパもこれに反応し、メディアでも取り上げられた。

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©AFP/アフロ
マルレーヌ・シアパは「脱構築した優しいフェミニスト男性vs.時代に逆行する邪悪なマッチョ、という単純な対立構造はいかがなものか」とルソーに反論。

それによると、ルソーのパートナーは、どうやら家事や子育てを分担する単なるフェミニスト的なよき理解者にはとどまらないらしい。脱構築とは、「家父長制的な社会の中で構築された男性性、性差別、社会的弱者が受ける暴力や圧力といった固定観念を解体し、組み直して新たな視点を持つこと」なのだ。というわけで、彼女の発言以来、フェミニストを自認する男たちは、おずおずと、あるいは胸を張って「僕は『脱構築した男』だよね?」とパートナーに問いかけている。

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発言の直後、ちょうどファッションウィークが始まった。モードではいち早く男女の境界線が消え始めているのは周知のとおり。2年ぶりにリアルショーが復活した2022年春夏コレクションでは、男女両方のモデルが登場して性別に境のないルックを見せたクリエイターや、共通テーマで男女のコレクションを同時提案するビッグメゾンが目についた。19世紀以来、社会に進出する女たちが男のアイテムを奪ってきたが、モード的に脱構築した男たちは、女のアイテムを身に纏う。年齢も性別も関係ない、好きなものを自由に着ようという考え方はもう当たり前。ストリートではまだ少ないけれど、レッドカーペットやランウェイでは誰も驚かない。モード同様、社会のほうも急速に脱構築が進むといいのだけれど。

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ツイッターのパロディアカウントに登場した、解体されたポテトヘッド。
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「息子よ、脱構築の男たれ」のコメントと解体された『スター・ウォーズ』のレゴ。
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週刊誌「L'OBS」も「脱構築した男か否か」を自問する男性のユーモラスな記事を掲載。

*「フィガロジャポン」2022年1月号より抜粋

text: Masae Takata (Paris Office)

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