ヴォーグ・パリ誌100年展、イラストが魅力だった時代。

Paris 2022.01.19

大改修を終えた16区のガリエラ美術館は『ガブリエル・シャネル、モードのマニフェスト』で、2020年秋に新章をスタートした。昨秋に開催が始まった企画展の第2弾は『ヴォーグ・パリ 1920-2020』である。仏版ヴォーグ誌の1世紀をヴィジュアルでたどる展覧会。その導入部は100年間に発行された雑誌から厳選された約1,000点の表紙のパノラマだ。おなじみのモデルの顔、著名フォトグラファーの写真も並んでいるけれど、1940年ごろまでのカバーを飾っていた多彩なイラストレーションに圧倒される。

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約1,000点の表紙のパノラマで時代の変遷が一目瞭然。photos:Mariko Omura

展覧会は10年あるいは20年区切りに時代を追っての展開だ。初期のパートでアールデコ期に活躍したGeorges Lepape(ジョルジュ・ルパップ/1887〜1971年)、ディオールの香水の広告でおなじみのRené Gruau(ルネ・グリュオー/1909〜2004年)といった著名イラストレーターだけでなく、Carl Erickson(カール・エリクソン/1891~1958年)  、Léopold “Alix” Zeilinger(1897〜1990年)、René Bouët-Willaumez(1900~79年)、Tom Keogh(1922〜80年)といったあまり日本では知られていないけれど素晴らしいイラストレーターたちの作品を発見できる。クローズアップされているのは、1935年から定期的にヴォーグ誌と仕事をしていたChristian Bérard(クリスチャン・ベラール/1902~49年)だ。1940年代の美意識、パリのエレガンスに結びつくイラストレーターとして、1954年まで編集長を務めたMichel de Brunhoff(ミッシェル・ドゥ・ブリュノフ)が最も押していたのが彼だった。クリスチャン・ディオールの大親友だったベラール。ディオールよりさらに短命で47歳の若さで亡くなってしまった。存命中、映画や1945年に第2次世界大戦中のオートクチュールのミニチュアを集めた「モードの劇場」の舞台装置を担当するなど幅広く活躍した。彼独特の作風のファンはいまも多く、たとえばパトゥの2022年アクト1&2の中にもベラールの仕事を意識したプリントがクリエイトされた。エントランスのカバーのパノラマでも彼の仕事が数点含まれているので、見つけてみよう。

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左:1938年10月号のためにクリスチャン・ベラールはドレス「Alix」を描いた。©Christian Bérard / Paris Musées, Palais Galliera 右:1938年11月号のためには、エルザ・ スキャパレリの1938-39年コレクション「コスミック』を。photo:Mariko Omura

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左:1939年12月号より。 右:パトゥの最新コレクションより、ベラール風のポエティックなプリント。

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左:上はLeopold “Alix” Zeilinger によるイラスト。 右:左の上下はTom Keogh。本国アメリカではウィンドウディスプレイや舞台装置を手がけていた。ヴォーグ・パリのイラストを手がけるのは大戦後だ。

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左はRené Bouët-Willaumezが1935年2月号のために描いたシュザンヌ・タルボットのスカーフと帽子。中は1935年10月号のための、メインボチャーのアンサンブル。右はEricという名で活動したCarl Ericksonが1932年3月号のために描いた帽子とスカーフ。

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1957年3月号のためにルネ・グリュオーが描いたランヴァン・カスティヨのドレス「Revillon」 ©Société Réné Gruau

雑誌の100年の歴史を彩ったディオール、イヴ・サンローラン、ジャン・コクトー、カトリーヌ・ドヌーヴ、ケイト・モス、ピーター・リンドバーグ、イネス&ヴィノードなど、さまざまな分野で雑誌に貢献した存在もクローズアップされた展覧会。地下で開催中の『Une Histoire de la Mode』(開催6月26日まで)展とあわせて、モードファンの目を楽しませている。

『Vogue Paris 1920-2020』
開催中~1月30日
Palais Galliera
10, avenue Pierre 1er de Serbie
75116 Paris
開)10:00~18:00(火、水、金~日) 10:00~21:00(木)
休)月
料:14ユーロ(『Une histoire de la mode』とセット券)

editing: Mariko Omura

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