プルーストのリアルなパリと、『失われた時を求めて』のパリ。

Paris 2022.02.27

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左:展覧会入り口。©️Pierre  Antoine 右: 21歳のプルーストを描いたジャック=エミリー・ブランシュによる『マルセル・プルーストの肖像』(1892)© RMN-Grand Palais (Musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski

カルナヴァレ歴史博物館で4月10日まで『Marcel Proust, un roman parisien』展が開催中だ。1871年生まれの作家マルセル・プルーストの生誕150周年、そして1922年に亡くなった彼の没後100周年を記念する展覧会である。会場の第1部は彼個人のリアルなパリについて。第2部は彼の著作『失われた時を求めて』のパリについてという構成だ。

パリに生まれパリに死したプルーストだが、この街における彼の活動範囲はモンソー公園からコンコルド広場、コンコルド広場からオートゥイユ、オートゥイユからブローニュの森、そしてエトワールと実に限られたものだった。その狭い半径内で彼は社交界、芸術界の人々との交際を紡いでいたのだ。プルーストの幼少期に始まり、彼が生きた時代の雰囲気をとらえた多くの絵画を展示。パリがいかにプルーストの美意識を育て上げたかが見えてくるのが第1部である。

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子ども時代の写真やポートレート。右はジャン・ベローが描いた『リセ・コンドルセの放課後』(1903年)。プルーストが1880年代に通った高校だ。photo:Mariko Omura

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右に21歳のプルーストを描いたジャック=エミリー・ブランシュによる『マルセル・プルーストの肖像』(1892)、左は22歳の時にプルーストが出会った詩人でダンディーの代表であるロベール・ドゥ・モンテスキュー。プルーストは彼を“美の教授”と名付けた。小説では男色家のシャルリュス男爵のモデルに。

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プルーストのパリ地図。photo:Pierre Antoine

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母のポートレート、毛皮のコート、家具などを配置してプルーストの寝室を再現。©️Pierre Antoine

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第1部と第2部の境はプルーストの寝室の再現の展示だ。来場者はここで作家のプライベートな世界へと入りこむことになる。作品の構想が生まれる場所でもあり、この部屋から展覧会の第2部へと。そこからは彼の大長編『失われた時を求めて』に登場する、フィクションのパリへと来場者は導かれる。登場人物のひとりスワンが移動するブルジョワや貴族たちのパリがあり、ゲルマント公爵夫人、アルベルチーヌのパリがあり……。この長編小説の映画化を試みた際にルキノ・ヴィスコンティ監督が依頼したプルーストが愛した場所のロケハン写真の展示もあれば、フランスで1999年にラウル・ルイスがプルーストの小説をベースに制作した『Le Temps retrouvé』の抜粋映像も。プルーストのファン、小説のファンが展覧会場には少なくないけれど、オースマン時代やベル・エポックのパリ愛好家の興味もひく展覧会である。

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マルセル・プルーストの自筆原稿『失われた時を求めて - スワン家のほうへ』©️Paris, Bibliothèque nationale de France, département des Manuscrits

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ブローニュの森へとパリの社交界は広がり、森の中のプレ・カトランでのソワレを描いたアンリ・ジェルベクス作『Une soirée au Pré-Catelan』(1909年)を中心に。©️Pierre Antoine

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左:1912年頃のマリアーノ・フォルチュニーによるビロードのドレス“Eleonora”は、小説でゲルマンと公爵夫人のモデルとなったパリ芸術サロンの主グレフュール伯爵夫人が所蔵していた。小説の中で主人公がアルベルチーヌに着せるのは、このドレスから着想を得ている。 右:キース・ヴァン・ドンゲンの挿絵が見られるガリマール社出版の『失われた時を求めて』。photos:Mariko Omura

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小説に登場する旧トロカデロ宮殿(1878〜1919)の模型。photo:Mariko Omura

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左: 映画『Le temps retrouvé』より。 右: Claude Schwartzが撮影したフォーブル・サンジェルマン。photos:Mariko Omura

『Marcel Proust, Un roman parisien』展
開催中~4月10日
Musée Carnavalet - Histoire de Paris
23, rue de Sevigné
75004 Paris
開)10:00~18:00
休)月
www.carnavalet.paris.fr

editing: Mariko Omura

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