パリコレAW22-23、モード界の新味、珍味 よりパワフルに！ パリコレでブランドデビューしたシェルタースーツ。

友人の父親が路上で凍死。 ここからオランダ人デザイナー、バス・ティマーのシェルタースーツの物語が始まるのだ。衝撃を受けた彼は2014年に非営利団体の「Sheltersuit Foudation（シェルタースーツ財団）」を設立し、リサイクルのジャケットと耐水性素材の寝袋を組み合わせて暖かく保護力のあるシェルタースーツを作って路上生活者に配布し続けている。そんな彼を2020年に「TIMES」誌は次世代リーダーに選んだ。

左: バス・ティマー。3月4日、「シェルタースーツ」の初コレクション会場にて。©️Tony Docekal　右: Sheltersuit Foudationのシェルタースーツをおさめたバックパック。photo：Mariko Omura

バスの名前を知らなくても、クロエが2021年秋冬コレクションでコラボレーションを行ったことからシェルタースーツ財団の存在を意識した人もいるのではないだろうか。これはガブリエラ・ハーストがクリエイティブディレクターに就任して初のコレクションでのこと。それ以前、自分の名を冠したブランドでもサステイナブル、エシカルな面をアピールするコレクションを発表していた彼女。クロエの初コレクションでは、より環境負担を軽く、より社会的に意義のある、ということを追求した結果、シェルタースーツ財団とのコラボレーションを行い、ジャケットと寝袋を一体化したフルレンスグスのアウターをクリエイト。このコラボレーション・ピースの売り上げは、財団が路上生活者のためのシェルタースーツを製造する予算となるのだ。なお財団の工場では社会的参加を目的に雇用したシリアなどからの難民が働いていて、このコラボレーションのプロダクトもそこで作られたものだった。

シェルタースーツのスローガンは“People helping People”。パリコレ時期、パリ市内の何カ所かにポスターが貼られた。このメッセージはブランド「シェルタースーツ」のジャケットの背中にも。photos：（左）Mariko Omura、（右）Tony Docekal

シェルタースーツ財団の資金源を豊かにするべく、また“People helping People”運動をより大勢に知ってほしいと、3月4日、パレ・ド・トーキョーにて“社会的関心のラグジュアリー・ストリートウエア”のブランドとして、バス・ティマーは「Sheltersuit（シェルタースーツ）」のファーストコレクションを発表した。LVMHなど高級ブランドからの素材を用い作られたアップサイクリングのコレクションである。サポートをクロエが行っていて、その製造にはパリのメゾンのアトリエが持つノウハウも提供したそうだ。フリーランスデザイナーのLisa Konno、そして高級サステイナブルデニムのパイオニアであるRE/DONEのクリエイションをフィーチャー。財団が路上生活者たちに配布するシェルタースーツを収めたバックパックをインスタレーションした小さな会場で希望と自由をこめたクリエイションを発表後、感動を語るバスに暖かい拍手が送られたのは想像に難くないだろう。

ブランドとしてShertersuit（シェルタースーツ）が行った初のプレタポルテショーより。高級メゾンからの素材を用いたアップサイクリングコレクションだ。photos：©️Alex Pommier （上左、上中、中段）©️Tony Docekal（上右、下左、下右）